世間では注目されてこなかった非大卒人材、特に高卒就職者のキャリアづくり。わたしたちSchool to Workでは、データをもとに各分野の有識者に意見を伺います。
今回は、経済産業省で若者の就職やキャリアに関する政策を企画・実行している産業人材政策室の米山侑志室長補佐に伺いました。

古屋(聞き手、当団体代表理事):本日はよろしくお願いいたします。私は高校生で就職する方たちは地元に残る比率が非常に高い、というのは高校生就職の大学生などの「就活」との大きな違いだと感じています。この点はいかがでしょうか。

米山氏(経済産業省 経済産業政策局 産業人材政策室 室長補佐、以下敬称略):私は出身が奈良県なのですが、大卒で地元に戻る率は劇的に下がっていますね。大学進学で都市部にいっても昔は結構帰ってきたそうですが、今は戻ってこないと聞いています。私は、それは職種の分断が原因だと思っています。田舎というのは、帰ってもやる仕事がないんですよね。例えば、もし自分が奈良に帰ろうと思っても、公務員か地銀か、あるいは雇用を多く生んでいる場所という意味でシャープの工場、といった狭い選択肢しかないんですよね。特に、都市部に進学した大卒の人からみた魅力的な選択肢は少ないと言わざるを得ない。大学に入る段階で、地元での就職という選択肢がすでに頭の外側にあるんですよね。この点が、高卒者と大卒者の進路選択において大きなポイントになっているように考えています。

古屋:また、業種別でも高校生の就職先は製造業が40%を占めるなど、大卒とは大きく異なります。

米山:要因の一つとして、進路選択の段階で既に、個人のバイアスがかかっているように感じます。業種別・職種別割合についてその差は、かなり家庭的、地域的、そして個人的な要素が絡み合っているのだろうと。
更に、より広い視点から考えてみましょう。日本の大企業の人事部は、大卒を採用する際に、キャリアをあまり明確にせずに「みんな平等に可能性がある」ということにして、いわゆる「ポテンシャル採用」を行うことが多い。この点が一部の大企業に人気が集中する要因となっています。「なんでもやります」「成長したい」という学生さんですね。
一方で、地元で、給料は高くないけど6時に帰れてワーク・ライフバランスが良いからその仕事を選んだ、という学生さんもいますね。自分は必ずしもそれを否定する必要はないと思っています。ひとつの「道」としてはあり。例えば高卒の工場勤務はまさに「近いし楽だし」というルートであるというだけだと思います。ただ、現状は後者が主に高卒の人で、前者が大卒、となっている。一方で、前者後者の好みというのは、本来は高卒でも大卒でも変わらず存在していてもおかしくない。実際には、そういう選択に対して、どの程度近しい人、先輩や親などが同じような選択をしているか、ということの影響があると思っています。

古屋:選択肢としては否定されるものではありませんよね。ただ高卒に関しては4割以上の学生が3年以内で離職し、その後非正規の仕事についていることもあり、人材を使い捨てしている企業があるな、という印象は拭えないです。私は日本の若手不足はまやかしで、若手人材の無駄遣いをしているだけとも思っています。もっと高卒人材も含め、若手を活かす育成システムをつくっていきたいと思っています。
ちなみに、奈良県では若い世代のUターンなどは増えていますか?

米山:まず、私の周りでは外に出る人が多いですね。小学校の同級生でも、学校で良い成績だった人たちは東京にきています。ただ、大阪にはあまりいっていないのは不思議ですね。
Uターンについては、大卒の人ですと、優秀な友人が奈良県庁にリターンしましたが、それ以外だと医師くらいでしょうか。男女別で見たら違うかもしれないですね。

古屋:高卒や大卒、という垣根は下がってきているのかもしれません。高卒でデータアナリストの仕事をしている20歳前半の人がいます。隣の席には東大の院卒者が座っているそうです。でも普通に同じ仕事ができている。若いことは価値で、企業の手で本気で早く育てれば、一人前の人材に育つと思うんです。
最後に、離職率の高さについてはどうお考えですか。

米山:ゼロになればいいのかというとそうでもないですよね。ライフステージによって、仕事へのスタンス等も変化することは当然あり得ると思いますし、ポジティブな離職というのも相当あると思います。他方で、あるべき水準っていくつなんだろうっていうのがわからないんです。企業によっても違いますし、適正かどうかってそれぞれなので、具体的に何パーセントですと言い切れない部分があり、難しい問題だと思います。これが学生の就職という問題の難しいポイントですよね。

古屋:私個人としては、理想は0%なんじゃないかと思ってます。入職マッチングの段階で、インターンシップなどを経て「企業ではなく仕事内容でマッチングできている状況」が一番の理想なのではないかと。もちろん「理想」ですが。

米山:そうなってくると、そもそも新卒初任給を同じにするなっていう話ですよね。そもそもスタート時点で、本来は学生ごとに能力が全然違ってきていますからね。
そして育成。どこも共通して「社内キャリコン」とかやってるんですが、どれだけ早くても40歳からしかやっていないんです。老後を含めた「セカンドキャリア」という意味合いが強い。しかし本当に必要なのは離職傾向から言うと若手なんです。若手がその入社した企業を軸にどういったキャリアを描くか、のサポートが必要になってきているのではないか、と考えています。

古屋:次世代の若手のキャリアをどうつくっていくのか、この社会全体が問われていますよね。お忙しいなか、ありがとうございました。

 

プロに聞く、次世代の高卒のキャリアづくり 連載シリーズ
第1回 プロに聞く、次世代の高卒のキャリアづくり(第1回 キャリア教育研究家 橋本賢二氏)前編
第2回 プロに聞く、次世代の高卒のキャリアづくり(第1回 キャリア教育研究家 橋本賢二氏)後編
第3回 プロに聞く、次世代の高卒のキャリアづくり(第2回 経済産業省 米山 侑志 氏)