一般社団法人スクール・トゥ・ワークの設立を記念して、当団体の活動の目的と背景を知ってもらうために、当団体の代表理事の古屋さん、監事の小松さんと事務局スタッフで非大卒人材の奥間さんと、座談会形式で、「変わる?学校から仕事への第一歩」の連載をお送りしています。

前回 変わる?学校から仕事への第一歩 (第2回 大卒人材と非大卒人材の分断 後編)

高校生の就職制度

小松
第3回のテーマは高校生の就職制度です。前回、古屋さんから高校生の就職制度について一部説明がありましたが、「一人一社制」など、むしろ自由に選び放題過ぎて悩んでいる人すらいる大卒や大学院卒には信じられない制度かと思います。

古屋さん、まず現状の高校生の就職制度について教えてもらえませんか?

古屋
高卒就職者のルールは厳しい制度によって作られています。ルールは大きく2段階に分けられて作られています。せっかくなので詳しいお話をしますね。

第一段階は国によるルールです。毎年2月頃に文部科学省と厚生労働省が、「高等学校就職問題検討会議」というものを開催しています。ここで、求人票の統一様式や、統一スケジュールを決定します。

信じられないかもしれませんが、学校を通して企業が求人する場合、大学生でいうエントリーシートは全企業、国が指定するものを使う必要があるんです。

また、第二段階として都道府県ごとにまた「検討会議」があります。ここで、一人あたり何社まで受けられるか、などのルールが決められます。

一部の県を除いてほとんどの都道府県において、「一定期間までは一人一社までしか応募できない」という非常に生徒に厳しいルールが作られるのは都道府県の検討会議になります。

問題を難しくしているのは、こうした厳しいルールは法律で決まっているわけではない、ということです。単なる”申し合わせ”にすぎません。

このため、このルール以外で学校やハローワークを通さずに採用することも全く問題ないのですが、実態としては近年でも85%の生徒はこのルールに則って就職をしています。

こうした高卒就職者の就職システムは、いろいろな状況をもたらしているのですが・・・長くなりましたし、そのあたりはまた別の回でお話ししたいと思います(笑)。

小松
ありがとうございます。一人一社制などは法律ですらなく“申し合わせ”なんですね。しかも、実際には15%程度は、学校やハローワーク経由以外で就職している。なんかいろいろ適当ですね(苦笑)。ちなみに奥間さんや奥間さんの周囲の方には、この15%に該当する方はいましたか?

奥間
僕の周りでは、就職した方はみんな学校経由での就職でしたね。逆に15%もの方たちが学校やハローワーク以外で就職していることに驚いています(笑)。

小松
そうなんですね。専門家の古屋さんにお伺いしたいのですが、この高校生の就職問題ですが、一般の感覚では、だいぶ前時代的に感じますが、行政や学校の先生、採用する側の企業、人材会社はどのように考えているのでしょうか?問題意識は持っているのでしょうか?

古屋
実態が知られていないこともあり社会的な問題意識は大きくなってはいませんが、この部分に詳しい方であれば、さすがに前時代的だと思う方は多いと思います。

例えば、15年ほど前の政府の規制改革会議で、高校生の就職ルールが取り上げられたことはあります。その際に厚生労働省の担当課長は「高校生の就職市場に民間ビジネスが参入しても全く問題はない」と明言していますね。

また、ビジネスで高校生をマッチングしようという動きも少しずつ始まっています。学校の先生方も強く問題意識をお持ちの方がいらっしゃいますが、やはり目の前の生徒たちをブランクなく就職させるというミッションがありますから、その対応ということで今までのやり方を踏襲している状況です。

小松
いろいろ動きはあるものの、なかなか変わらないといったところでしょうか。高卒で就職した奥間さんは、この高校生の就職制度はどう思われますか?

奥間
僕の周りには、学校やハローワークといった限られた職種の中から就職した高卒の方もいます。また、大学や大学院を出て民間の人材会社などを利用し、多くの職種の中から就職した方もいます。

ただ、やはり進路に対する選択肢は多いにしたことはないと思っています。僕の出身校は、進学校ではなかったので、卒業後は就職する人が沢山いる環境でしたが、伝統的に作り上げられてきた当たり前の就活制度を前に、みんな就職に対してどこか悲観的になっていました。

やはり、僕も含め、“仕事はキツい労働”というイメージばかりが強くあったように感じます。この僕たちが当たり前だと思っていた前時代的な制度が取り払われることで、みんなが自分のキャリア形成に対して最善の進路選択ができるようになって欲しいですね。

 

「変わる?学校から仕事への第一歩」連載シリーズ

第1回 はじめに
第2回 大卒人材と非大卒人材の分断 前編
    大卒人材と非大卒人材の分断 後編
第3回 高校生の就職制度
第4回 高卒の就職率
第5回 「七・五・三」現象
第6回 離職した若者はどこへ行くのか
第7回 現在のキャリア教育
第8回 ハローワークの役割
第9回 地域格差
第10回 就職先企業の規模
第11回 初任給の格差
第12回 スクール・トゥ・ワーク