一般社団法人スクール・トゥ・ワークの設立を記念して、当団体の活動の目的と背景を知ってもらうために、当団体の代表理事の古屋さん、監事の小松さんと事務局スタッフで非大卒人材の奥間さんと、座談会形式で、「変わる?学校から仕事への第一歩」の連載をお送りしています。

前回 変わる学校から仕事への第一歩(第8回 ハローワークの役割)

就職活動における「地域格差

小松
第9回のテーマは「地域格差」です。古屋さんは岐阜県出身、奥間さんは沖縄県出身ですが、地域格差についてはどのようにお考えですか?

奥間
そうですね。地域格差の中でも僕が一番実感しているのは情報格差ですね。特に地方と都市部の間での差はかなり深刻だと思っていて、上京する前と今では、普通に生活しているだけでも情報量の差を感じています。そのため非大卒の就職活動においても大きな情報格差があると思っています。

小松
面白いですね。これだけメディアが発達して、インターネットの時代になっても、地域によって未だに情報格差があるのは意外です。

古屋
人はみな何かのコミュニティに所属していますよね。その中で情報を交換して自身の知識や経験を蓄積していくわけです。コミュニティが違えば、得られる知識や知識を得るきっかけも異なります。特に「きっかけとなるような出会いのちょっとした差」が、インターネットの時代になったことによってその後とてつもなく大きな差になることもあります。実はネットの発達によって、情報格差、知識格差は広がり易くなったといえるのではないでしょうか。人口が密集し経済活動も活発な都市部のコミュニティには、博物館や科学館、仕事体験を提供するようなイベント、面白い働き方をする大人、見た目も考え方も違う外国人などなどと触れあう可能性のある「子ども」も「大人」もいます。きっかけを生み出す情報の化学反応の比は地方とは比べものになりません。私も岐阜県出身ですが、振り返えると今のキャリアがあるのは、小学5年生で入った補習塾に、たまたまいた東京帰りの先生の一言がきっかけでした。この一言がなかったら間違いなくいまここにおりませんから、ちょっとしたきっかけが生み出すキャリア、そして、そのきっかけを生み出すコミュニティの重要性を痛感します。

小松
ちなみに、東京帰りの先生が古屋さんに言った一言って何ですか?

古屋
「君は才能があるから、もっとすごい塾にいったら、もっとモテるかもよ」みたいな感じで言われました(笑)。

小松
なんか軽いですね(笑)。話を戻すと、「たまたまいた」これは重要なワードですね。キャリアは「たまたま」で変わる。あと、おっしゃるとおりかもしれませんね。インターネットの登場によって、格差は広がっているかもしれません。
さて、いつもと同じように、非大卒人材のキャリアという観点に絞って、地域格差について教えてもらいましょう。古屋先生、お願いします(笑)!

古屋
85%の高校生が県内に就職している。これが意味するのは、ほとんどの高校生が「生まれた県の産業構造によって職業人生が左右されている」という事実です。さて、私の地元の岐阜県は、お隣愛知県に世界的な自動車企業があることもあって、製造業が強い地域です。しかし日本にはこうした根強い産業基盤を持たない地域もあります。企業の選択肢もぐっと狭まります。その選択肢の狭さが、生まれた場所によって決まってしまうのです。人生100年時代やSociety5.0の時代に、地域の格差をそのまま21世紀を生きる生徒に背負わせるような仕組み。本当にこのままで良いのでしょうか。

小松
85%が県内で就職は驚きですね。私は普段は経営コンサルタントをしていますが、やはりヒト・モノ・カネと同列で語られますが、ヒトは圧倒的に動かない(笑)。人は土地に縛られる。これが動かしがたい事実だと思います。
資料を見ると、九州の各県の県外の就職が高いようですが、これは福岡に行ってるんですかね?同じく、東北は仙台ですかね?

古屋
そうですね、エリア内移動ですね。キャリア教育研究家の橋本さんもおっしゃっていますが、九州・東北は福岡・仙台まで移動することは比較的多いようです。

小松
なぜ地域にみんな留まるのでしょうか?理由に関する調査などはあるのでしょうか?

古屋
高卒者に対するまとまった就職意向調査は行われていませんが、選択肢がそもそもないですので出ようがないということだと思います。ファイルに閉じられた10数枚の求人票から選ぶ、という世界ですので。

小松
たしかにそうですね。東京にいると日本の中心があたかも東京にあるように考えてしまいますが、本来あるべき姿は、地元かもしれません。もし若者たちの目の前に選択肢がたくさんあることが顕在化したら、地元から出ていくようになるのでしょうかね?

古屋
たしかに顕在化されれば地元から出る若者は増えると思います。目の前の選択肢が増えるということは、例えば、何もやりたいことがなくとりあえず就職していく人も、就職活動の中で聞いたこともなかった仕事を知ったり、興味を持つ機会が増えたりします。やはり都心にはたくさんの仕事が集まっているので自然と県外就職も増えるのではないかと思います。

小松
逆にもしかすると、案外、地元の良さも考え直すかもしれませんね。選択肢がちゃんとあって、それぞれがキャリアについて真剣に考えることは、地方と都市部について考えることにも繋がるかもしれません。
教育であったり行政であったりは、就職活動において地域間の移動が少ない点について、何か問題意識は持っているのでしょうか?

古屋
実は、なかなか悩ましい問題です。地方創生という政策キャンペーンがあります。これは東京一極集中状態から人材面でも脱却をはかろうということで、UターンやIターンを推進しています。その意味では地方からの人材移動の逆のような政策とも言えます。ただ、私は一度若者が情報も人も企業も多い都会に出ること、そしてその若者がノウハウやネットワークを地元に持ち帰ることこそが真の地方創生に繋がると思っています。欧州のサッカーチームに行った日本人選手が日本のチームに戻ってきてそのチームを盛り上げるように、です。

小松
確かに人材の流動性が高まることで、情報の偏在もなくなりますし、新しいコラボレーションも生まれます。最終的に都市部に出て就職するかどうかはどうあれ、少なくとも就職活動の選択肢に、地域を越えた選択肢も考えてもらいたいですね!

 

「変わる?学校から仕事への第一歩」連載シリーズ

第1回 はじめに
第2回 大卒人材と非大卒人材の分断 前編
第2回 大卒人材と非大卒人材の分断 後編
第3回 高校生の就職制度
第4回 高卒の就職率
第5回 「七・五・三」現象
第6回 離職した若者はどこへ行くのか
第7回 現在のキャリア教育
第8回 ハローワークの役割
第9回 地域格差
第10回 就職先企業の規模