一般社団法人スクール・トゥ・ワークの設立を記念して、当団体の活動の目的と背景を知ってもらうために、当団体の代表理事の古屋さん、監事の小松さんと事務局スタッフで非大卒人材の奥間さんと、座談会形式で、「変わる?学校から仕事への第一歩」の連載をお送りしています。

前回 変わる学校から仕事への第一歩(第7回 現在のキャリア教育)

 

人や地域によって距離のある「ハローワーク」

小松
第8回のテーマは「ハローワークの役割」です。2人はハローワークには行かれたときありますか?
 
古屋
東京だと飯田橋や後楽園に行った際に「あ、ハロワだ」となりますが、実は東京のハローワークは入ったことがないですね。仕事柄、何年か前ですが、ヤングハローワークやジョブカフェを訪問したことは何度かあります。

失業給付などを得るためには行かなくてはなりませんが、転職市場も活況で、転職先が決まってから退職する人が多いですから、若い人には縁遠い感じはありますね。

奥間
僕はハローワークにはまだ一度も行ったことがありません。地元にいた時も、周りにいた友人が失業給付を得るために通っていたのを聞いていたので、なんとなく場所は把握している程度です。

実際に行ったことはありませんが、興味本位でハローワークが出している求人サイトを見たことが何度かありますね。
 
小松
なかなかお二人にはハローワークは馴染みの遠い存在ですかね(笑)。私は長年にわたり地方で企業再生をしていた経験があるので、ハローワークを通じた採用活動を沢山やった記憶があります。

東京の若手社員からすれば信じられないかもしれないですが、地方では、民間の人材サービスではなく、ハローワーク経由での転職活動がまだまだ当たり前なんですよね。

東京だとハローワークは失業給付の手続きに行くといったイメージでしょうか。古屋さん、ハローワークの役割と歴史を教えてもらっていいですか?
 
古屋
現代からは想像つきがたいですが、人身売買や奴隷など、人間の労働の斡旋には実は暗い歴史がありました。西欧においてこうした動きを無くしていくべく、労働者の斡旋を国家の独占事業にする動きが起こります。

日本では戦後、職業安定所=ハローワークとして制度化したのですね。ですから今でも労働者の斡旋ビジネスを行おうとする事業者は厚生労働省の許可が必要になっています。

ただ、厚生労働省は高校生向けの職業斡旋について、「民間事業者を排除するものではない」と2000年代の規制改革会議で発言していまして、これは事実のようです。

ですから、今いくつかの事業者は活動されていますね。ただ、割合としては圧倒的に学校・ハローワーク経由であるという状況はここ30年ほど変わっていません。

小松
先生ありがとうございます!そろそろ、この分野については、池上彰さんになれますね(笑)。 さて、みなさんで、改めて学校・ハローワーク経由の高校生の就業データを見てみましょう。

なんと85%が学校・ハローワーク経由となっています。昔はもっとこの数字が高かったということでしょうか?
 
古屋
いえ、実は昔からあまり変わっていないのです。2010年前後に一時的に下がった時期があるのですが、どうやら景気が悪くなって非正規職の就職が増えた時期のようですね。

ですから、正規の社員への就職ルートは昔から学校・ハローワーク経由ということですね。
 
小松
そこは意外ですね。インターネットの発展で徐々に100%から下がって、現在85%なのかと想定していました。高卒就職におけるハローワークの役割は、具体的にどのようなものでしたか?
 
奥間
高卒での就職活動は学校・ハローワークが当たり前でした。なんとなくですが、学校や国が絡んでいるところなので、安心して就職先を探せるのは学校・ハローワークだと思っていました。
 
小松
具体的には、ハローワークは何をしてくれるのですか?
 
奥間
僕自身が実際に高卒で学校やハローワーク経由で就職した訳ではないので詳しくはわかりません。僕も高校生だった当時を振り返ると、高卒就職におけるハローワークの役割は、唯一高卒者と企業を正規雇用という形で繋いでくれる手段でした。

唯一というのも、そう思い込んでいただけかもしれませんが(笑)。
 
小松
いつも正しいことを教えてくれる学校の先生が「ハローワーク一択」で話を進めてきたら、そりゃ唯一だと思いますよね(笑)。これだけネットが進化し民間の人材会社も増えてまいりました。ハローワークが時代に合わせて改革していることなど変化はあるのでしょうか?
 
古屋
ハローワーク自体は幾度の改革をふまえて機能が充実してきているのは確かです。例えばヤングハローワーク、マザーズハローワークなど、利用者のニーズを踏まえた取組がなされるようになっています。

もちろん、ハローワーク改革は常に議論があり、そもそも職業紹介を国が行っていること自体が変だと思う方も多くなってきているようです。

もちろん、国が行っていることについては歴史的経緯がありますが、このあたりの話は完全に今回のテーマから外れますので専門の方々にお任せしましょう。

その中でひとつだけ間違いなく言えるのは、高校生の就労という点においてハローワークの機能は半世紀前と全く変わっていないということです。インターンシップの斡旋や生徒さんのキャリアコンサルティングなどはもちろん行っておりません。

あえて言うのであれば、各県で登録制のインターネット求人検索サービス「高卒就職情報WEB提供サービス」を作ったことが唯一の変更点でしょうか。

なお、このサービスは携帯電話で見られないという衝撃のWEBサービスでもあります(笑)。
 
小松
今どきの高校生じゃパソコンはむしろ使わずスマホですからね。時代に取り残されていますね。ハローワークが高校就職において価値を出せていないこと、時代にフィットしていないことはこのようなメディアで情報発信をすることとして、私たちは直接、若者たちにキャリア教育を届けてまいりましょう(笑)。

 

「変わる?学校から仕事への第一歩」連載シリーズ

第1回 はじめに
第2回 大卒人材と非大卒人材の分断 前編
    大卒人材と非大卒人材の分断 後編
第3回 高校生の就職制度
第4回 高卒の就職率
第5回 「七・五・三」現象
第6回 離職した若者はどこへ行くのか
第7回 現在のキャリア教育
第8回 ハローワークの役割
第9回 地域格差
第10回 就職先企業の規模
第11回 初任給の格差
第12回 スクール・トゥ・ワーク