一般社団法人スクール・トゥ・ワークの設立を記念して、当団体の活動の目的と背景を知ってもらうために、当団体の代表理事の古屋さん、監事の小松さんと事務局スタッフで非大卒人材の奥間さんと、座談会形式で、「変わる?学校から仕事への第一歩」の連載をお送りしています。

前回 変わる?学校から仕事への第一歩(第1回 はじめに) 

小松
第2回ですが、大卒人材と非大卒人材の分断がテーマです。

第1回で古屋さんからあったように、スクール・トゥ・ワークは、若者と若者の対話型授業を通じた非大卒人材を中心とした若い方々のキャリア観の醸成を目指しています。

なぜ私たちが非大卒人材にスポットを当てるのかという理由がこの分断にあるように思います。今回は、まずは古屋さんから、統計データと専門家の見地からご説明いただいて、次に実感や実態など感覚的な話を三人でしましょう。

非大卒人材の問題の一つ、高校生は就職活動において「子ども」か

古屋
最近は大学進学率がどんどん上昇しており、少子化といわれますが、実は大学卒業者数は増加し続けています。現在、毎年55万人程度が大学卒業者数ですが、これは2024年頃まで増え続けると考えられています。

しかし一方で、若手のおおよそ半分は大学卒や大学院卒ではない”非大卒人材”です。20代後半で言えば51%は非大卒であり、高卒が25%を占めています。最近は高等教育無償化が議論になっており、改憲の項目にも含まれるほどの社会的関心を集めています。

それと比べて、この「25%」への関心はその数字の大きさと比べて小さすぎるのではないかと思っていますね。

小松
小説や映画などで就職活動をテーマにした作品は多数あるように思いますが、非大卒人材の就職活動をテーマにした作品はないように思います。なぜこの「25%」が専門家の間ですらあまり注目されていないのでしょうか?歴史的な背景などあるのでしょうか?

古屋
そうですね。「何者」という小説がありますが、その小説では就職活動に直面して悩み、友人たち大人たちと関わりながら自分が”何者”なのか模索する大学生の姿が描かれています。

日本において就職活動は、それまで全く仕事について考えることのなかった若者が自分の職業的アイデンティティを考えるための大きな機会になっているのは間違いありません。

しかし、例えば高卒就職者においては、その機会が著しく限定されている状態にあります。高度経済成長期以前から続いている、現行の高校生就職のシステム(一人一社制、指定校制など)では、その選択の限定性から大学生の就活の重要な機能であるアイデンティティ確立は難しく、職業観やキャリア観が十分に養われない可能性がありますね。

小松
今の時代に高校生就職のシステムの一人一社制は信じられないですね。大卒ならば民間の人材会社のシステムなどを通じて50社、100社と就職試験の面接をする人がいますよ。なぜこのような制度が過去から維持されているのでしょうか?

古屋
やはり、高校生は「子ども」ということなのだと思います。18歳は未成年ですからね。成人である大学生と異なり、情報をしっかりと取捨選択できない「子ども」であるということですね。

大原則としては、企業の採用活動は自由のはずです。しかし「子ども」が対象のために、厚生労働省や文部科学省が作った求人票以外のフォーマットはNGであるなど、厳しい規制が敷かれています。

しかし、成人年齢も民法改正で18歳に引き下げられます。また、昨今の高校生と話をするとプレゼンがとてもうまかったり、大人顔負けの子もいますよね。今まさに、これまでのやり方を考え直す時なのではないでしょうか。

小松
大卒人材と非大卒人材の分断は、成年・未成年問題も大きそうですね。未成年の保護という大義名分のもとに、職業選択の自由が制限を受けていて、それが時代と乖離してきたというところでしょうか。

大卒と非大卒の特徴と分断

小松
続いて、大卒及び大学院卒人材と非大卒人材の分断の実感や実態について、お伺いしたいと思います。 奥間さんいかがでしょうか?

奥間
特に分断が感じられるのが学歴ごとに形成されているコミュニティーですね。 僕自身、東京へ出てくるまでは、自分の周りには大卒や大学院卒の人はいませんでした。

当時はそのことを何とも思ってはいませんでしたが、東京に出てきて、今の職に就いてからは、逆に非大卒の人はほとんどいないため疑問に思ったことがありました。

小松
そういった意味では、奥間さんは大卒人材と非大卒人材のコミュニティーを双方見たことがある人材なのだと思いますが、それぞれのコミュニティーの特徴はありますか?

奥間
そうですね。仕事に対する考え方は特徴的だと思います。非大卒の友人・知人と話をしていると、「仕事=労働」と、割り切って生きるためにやっている、という考えをしているように感じます。

一方で、大卒の人たちと話をしていると、仕事は自分のやりたいことや目標に対しての手段と考えている人が多いですね。もちろん、全員がそうではありませんが。やはり大卒の方のほうがキャリア教育などをしっかり受けてきたからかな、と思ったりします。

古屋
様々な違いがありますが、一番大きいのは、就職にあたっての情報量。これには格段の差がありますね。大卒がビジネスとして全国ひとつのマーケットになっていて、検索すれば誰でもどんな企業にでも簡単にアクセスできエントリーすることが可能です。

他方、高卒就職者はファイル一冊に入った紙の求人票を見て会社を選びます。このように、就職という局面でも情報量の格差は大きいですが、そもそもキャリアづくりに関する情報全体に差があるとも言えますね。

 

「変わる?学校から仕事への第一歩」連載シリーズ

第1回 はじめに
第2回 大卒人材と非大卒人材の分断 前編
    大卒人材と非大卒人材の分断 後編
第3回 高校生の就職制度
第4回 高卒の就職率
第5回 「七・五・三」現象
第6回 離職した若者はどこへ行くのか
第7回 現在のキャリア教育
第8回 ハローワークの役割
第9回 地域格差
第10回 就職先企業の規模
第11回 初任給の格差
第12回 スクール・トゥ・ワーク