一般社団法人スクール・トゥ・ワークの設立を記念して、当団体の活動の目的と背景を知ってもらうために、当団体の代表理事の古屋さん、監事の小松さんと事務局スタッフで非大卒人材の奥間さんと、座談会形式で、「変わる?学校から仕事への第一歩」の連載をお送りしています。

前回 変わる?学校から仕事への第一歩(第2回 大卒人材と非大卒人材の分断 前編)

大卒就職者と高卒就職者の分断

小松
大卒人材と高卒を中心とする非大卒人材という2つのコミュニティーの分断についてはいかがでしょうか?

古屋
分断は深刻です。どうしても人は自分と同じような人とつるみますね。大学に入れば同じ大学の友人と過ごす時間が増えますし、会社に入れば同僚と飲みにいったりします。

そんな中で、都市-地方、大卒-高卒といった互いに何を思うのかよく分わからない状態でコミュニティーの分断が進んでいます。見るテレビ、好きな芸能人からはじまり、キャリアにおいてどんな選択をする傾向があるのか、まで全く異なるといってよいでしょう。

また、ほとんどの人は、教育やキャリアを語る際に自分の体験をベースに語りますが、学校の先生、文科省から教育委員会などの行政官、そして政治家や学者まで、教育のあり方を決定するキーパーソンは全て大学卒です。

この意味は大学卒であることが悪い、ということではもちろんありません。問題は、人間はキャリアを語るうえで「自分の体験が極めて大きな比重をしめる」のにも関わらず、カリキュラムなどを作る人間の属性が非常に偏っていることなのです。

当事者である高卒就職者と深い対話をするなどして、少なくとも大学からの就活というルート以外について知らなければ、全体の50%にすぎない大卒による大卒のための教育・キャリア施策から脱け出すことは難しいと思います。

奥間
古屋さんがおっしゃっているとおりですが、都市部と地方、大卒と高卒でのコミュニティーの分断は明らかです。特に地方の多くの非大卒の方たちは、情報量が少なく、規制が多い中で就職活動をし、就職します。

それまでと同じ人間関係のまま、自然と県外や都市部など“外の世界”からの情報を遮断してしまっていることで、大卒で就職した方と比べ、キャリア設計において、様々な選択肢が見えにくい状態になっている方が多いなと感じます。

一方で、大卒の方のコミュニティーといえば、有名なところで慶應大学の三田会や一橋大学の如水会などの同窓会での規模の大きなコミュニティーがありますが自由な就職活動で社会へ出たOB、OGと関わる機会を多く得られており、非大卒においてもこのようなコミュニティーを創ることが必要だと感じています。

小松
情報量が少ないという点ですが、これだけネット社会になっても情報は制約されているという理解なのでしょうか?

古屋
大手就活サイトのようなサービスもなく、ネットではハローワークが運営している県別の求人サイトがあるだけですね。そのサイトすら一般には見られず、紙の求人票が基本という現状があります。

奥間さんのまわりの人たちはどのように情報を入手していましたか?

奥間
自分の周りでは、やはり学校の進路室にある求人票や情報サイトのみが情報源という感じでしたね。自分も含め、それが当たり前だと思っていました。

小松
ネット社会の盲点かもしれませんね。何でも検索できるのは検索エンジンとしての機能ですが、そもそも知っている概念、言葉でなければ検索できないわけですしね。情報格差が広がり、2つのコミュニティーの分断がより深刻化しているのかもしれません。

もっといえば、深刻化していることすら気づかないぐらい分断されているのかもしれませんね。

分断が解消されると、どうなる?

小松
逆に、この分断が解消されると、どのようなことが起こりうると思いますか?

奥間
得ている情報に大きな差があることに気づいていない高卒就職者の中には、能力は高くても知らないがために挑戦やより良い進路選択が出来ない、または、していない方がたくさんいると思っています。

このコミュニティーの分断が解消されることにより、学歴の関係ないコミュニティーが増え、自分とは違う価値観に触れる機会を創り出し、自分のキャリアを自分の意思で形成していける若者が増えると思います。

古屋
分断の解消は、18歳での進路選択を大きく変える可能性があります。特に高卒で就職して大卒や大学院卒と同じ仕事をしている人が出てきています。すると、大学へ行く意味ってなに?という話になります。

2つのコミュニティーが交わり、18歳で就職という選択した人がロールモデルになれば、間違いなく日本の若者のキャリアは多彩になると思います。

小松
凄い話になりますね。この問題が一つ解決するだけで、非大卒人材の活躍、「就職のための大学進学ではない勉学のための大学」へと大学の再定義ができそうです。大学進学には奨学金問題もありますからね。

奥間
そうですね。たしかに勉学のための大学進学をしている人はかなり少ないように感じます。 勉学のため大学進学した人、進学せずにいち早く社会へ出た人の両者ともに多様なキャリア選択の可能性があるべきだと思います。

小松
と、話が広がってまいりましたので、この話はここまでにしましょうか(笑)。 次回は、分断により、高卒で就職した人にしか分からない、「高卒の就職プロセスについて」です!お楽しみに。

 

「変わる?学校から仕事への第一歩」連載シリーズ

第1回 はじめに
第2回 大卒人材と非大卒人材の分断 前編
    大卒人材と非大卒人材の分断 後編
第3回 高校生の就職制度
第4回 高卒の就職率
第5回 「七・五・三」現象
第6回 離職した若者はどこへ行くのか
第7回 現在のキャリア教育
第8回 ハローワークの役割
第9回 地域格差
第10回 就職先企業の規模
第11回 初任給の格差
第12回 スクール・トゥ・ワーク