「非大卒人材のトリセツ」の第2回は、「非大卒人材の可能性」について記載したいと思います。

前回 非大卒人材のトリセツ(第1回 はじめに)

初回に記載をさせてもらったとおり、私が経営する経営コンサルティング会社のスーツ社では、主に中学校卒、高等学校卒、専門学校卒、高等専門学校卒、短期大学卒や大学中退などの人材と定義される「非大卒人材」のうち高卒人材2名を経営コンサルタントとして採用しています。

高学歴が当たり前の経営コンサルティング業界において、なぜ当社が非大卒人材を採用しているかというと、決して非大卒人材の就職や若者キャリアの社会的課題の解決に貢献したいという高尚な理由からではなく、経営者として、彼らに可能性を感じているから採用しています。

私も、普段こそ自分もクライアント企業にアドバイスをする経営コンサルタントですが、自社においては経営者(中小企業のオヤジ)ですから、そこは冷静に、合理的に考えて意思決定をしています。

以下に、私の考える非大卒人材の可能性を2つ記載します。
1.若さ ~ 若者の4年間を有効活用できる ~

非大卒人材の可能性が「若さ」ならば、大卒就職者も十分に若いのではないかというご指摘を受けるかもしれません。大卒就職者よりも、さらに若いのが非大卒人材です。

高卒就職者の1年以内及び3年以内の離職率(出典:厚生労働省,“新規学卒者の離職状況”)によれば、高卒就職者については、3年以内で4割近い人が離職しています。そのため、18歳~21歳の若い非大卒人材が、毎年大量に求人マーケットに放出されていることになります。

「若さ」は、2で後述する「柔軟な対応力」も含め、大きな可能性です。

私も長年にわたり企業再生などの仕事をしてきていますが、スタッフが若いというだけで、明るく元気で、前向きで、「柔軟な対応力」があってと、社会や会社を動かす原動力になり得ると考えています。

高校卒業時点では、非大卒人材は大学受験の勉強をしていないためか、総じて、大卒就職者のほうが非大卒人材よりも、社会人として必要な基礎的なスキル(四則計算、読み・書きなどのコミュニケーション基礎力や一般教養など)が高いと思われます。しかし、大学卒業時点では、企業が非大卒人材に対して本気になって教育を施して、企業での実務経験を積ませ、座学でも勉強を促せば、私は非大卒人材も大卒就職者に負けないスキルが身につくと考えています。

非大卒人材を雇う経営者が考えるべき点は、大卒就職者が通う大学の4年間と比較して、非大卒人材が働く4年間のほうが、社会人としての付加価値をつけることができるかどうかではないかと思います。

例えば、当社の非大卒人材2名は、奥間さんが現在22歳、木村さんが19歳です。奥間さんは、上場準備の仕事をしたり、大手企業らで構成されるコンソーシアムの事務局をしたり貴重な経験を積んでいます。木村さんは、特に案件に恵まれ、資本業務提携や敵対的買収防衛の仕事をするなどしています。当社では、彼ら2名に対して、人生の幅を広げるため、座学での勉強も推奨しており、資格学校に通う授業料も負担しています。

彼らには、スーツ社では、お給料をもらいながら、経営の最前線をOJTで経験でき、座学も学ぶことができると伝えています。また、非大卒人材のコミュニティではなかなか触れることのない、偏差値上位の大学に通う大卒就職者の有するスキルや仕事に対するメンタリティの情報を伝えて、自発的にスキルアップを図らせるようにしています。

2.柔軟な対応力
「若さ」の中でも特筆すべきは「柔軟な対応力」だと考えています。

どうしても人間は自分の置かれている環境に影響を受けます。才能がありポテンシャルのある人材であっても、知らなければ、そもそも選択肢を選ぶことすらできず、世界へ羽ばたいて活躍することはできません。

前述のとおり、総じて、非大卒人材は、大卒就職者と比較して、社会人として必要な基礎的なスキルが低いと思われます。しかし、逆を言えば、知識不足、もっと極端な言い方をすれば無知だからこそ、スポンジのような「柔軟な対応力」があるのです。

昨今の私の理解ですが、非大卒人材の一部は、高校卒業時点で、少し視野が狭かったりのんびりしていたりしていただけの方もいるように思います。ちなみに当社の非大卒人材の奥間さんは沖縄出身で性格ものんびりしていますし、木村さんは高校球児で高校時代は野球ばかりしていたそうです。

非大卒人材であっても、環境を整備して、社会人として活躍するために必要な情報をしっかりと伝えれば、柔軟に対応して、立派に成長していくものです。

特に当社では、非大卒人材2名に対して、(それこそ、私からもたらされる情報も疑うぐらい)とにかく自分の頭で考えるように、視野を広く持つように、最前線で活躍している人の話を聞くようにと話をしています。

もしかすると非大卒人材に限らず、若者が無知だから、情報を恣意的にコントロールして、自社に適した人材を創りたいという経営者は多いかもしれません。しかし、それは本当の意味で社員の成長にはなりません。

面白いエピソードがあります。前述のとおり、当社の非大卒人材2名は、いきなり経営の最前線に放り込まれました。お正月休みに地元に帰って、家族や友人に、自分の仕事の近況について話をしたところ、「悪い会社に騙されているのではないか?」、「嘘をつくようになってしまったのではないか?」といぶかしがられたそうです。

環境が変われば人は変わるのです。特に若い非大卒人材は「柔軟な対応力」を有しています。

「非大卒人材のトリセツ」連載シリーズ

第1回 はじめに
第2回 非大卒人材の可能性
第3回 非大卒人材の育成方法 前編

 

 

小松 裕介
プロ経営者 株式会社スーツ 代表取締役
2013年3月に、新卒で入社したソーシャル・エコロジー・プロジェクト株式会社(現社名:伊豆シャボテンリゾート株式会社、JASDAQ上場企業)の代表取締役社長に就任。同社を7年ぶりの黒字化に導く。2014年12月に株式会社スーツ設立と同時に代表取締役に就任。2016年4月より、総務省地域力創造アドバイザー及び内閣官房地域活性化伝道師登録。
2018年9月に一般社団法人スクール・トゥ・ワーク設立と同時に監事に就任。