2020年代の若者キャリアはどうなっていくのか。今回は、非大卒向けキャリア支援サービスの「サムライキャリア」などを運営する株式会社前人未到の牛島悟さんと対談します。

前回 2020’sの若者キャリア論 牛島悟(前人未到CEO) × 古屋星斗(スクール・トゥ・ワーク代表理事)②

古屋
若者の行動の変化についてお話を伺いましたが、次に高校生の一人一社制についてはどう考えていらっしゃいますか?実は今、文科省と厚労省で一人一社制の見直しが始まっていまして、今、見直されている理由として、毎年出ている国家全体の戦略というのがあるのですけれども、こちらに一人一社制は見直せと書かれているんですよ。この問題についてどうあるべきだと思いますか?

牛島:
私は一人一社制はないほうがいいと思います。理想だけを言うなら教師のリテラシーを上げないといけないと思います。生徒がどう思うかというと、やはり、一番身近な大人なので、「まともなことを言っている」と子どもは思うんですよ。

だから疑うことなく就職をするのですが、それがミスマッチに繋がっている原因になっている。学校教育のプログラムで東京に行ってインターンを行うなどの都市体験学習とか、そういうのを必修で行ったりすると子供たちも自らの進路を考えるようになって変化が出てくると思うんですけどね。

古屋
そうですね、実はそこがすごく問題点でして、地域に人を残さないといけないという議論がされている。地方の若者をどれだけ東京に行かせないかという議論です。

全国の割合でいうと首都圏の高校生は全体の30%弱を占めていて、それが大学になると40%、就職1年目、つまり新卒者になると首都圏では50%になると言われています。今の議論でいうと、いかにこの何十%の若者を地方に帰らせるかというのがあります。

あと、もう一つあるのが、いかに首都圏の大学に行かせないようにするかも議論されています。結構この声が政治的にも非常に大きいんですよね。

牛島:
地方創生の考えですよね。

古屋
そうですね。「移動」とは、全く逆の発想になっているので、僕は折衷案としてエリア内移動などを促すようなプログラムがあるといいと思っているのです。

いきなり東京ではなくて、地方の主要都市への移動。仙台や福岡なんかは比較的ITベンチャーなども多いのでいいかと思います。

牛島:
いきなり東京ではなくても、人材の流動化を図る形ですよね。あと私が非常に思うのが、高校の就職活動に民間が入れないのが良くないと思うんですよね。

当社は直接はしていませんが、やりとりがハローワークと学校の先生しかできないので、もし、そこの方々が悪い人だったら生徒に「お前ここに行け」と、強制感を持って発言することもできるわけじゃないですか。

それで、結果的に早期離職率などの数字を見ると失敗しているじゃないですか。サービスの民営化は歴史的に見ても質を大きく発展させているので、どういう形でもいいので入れるべきだと思うんですよね。硬い公的資格を新たに設けたりするなど、いくらでもやり方はあるので。

古屋
実はこの議論が確か2003年ごろ小泉政権下で行われているのですよね。規制改革の議論がされているときに、八代先生という有名な経済学の先生が言っていて、高校の卒業者の就職マーケットが50年くらい変わっていないと発言をされたんですよ。

そしたら、それを機にもっと民間の力を借りて発展させるべきではないかという声が民間団体から提言されまして、それに八代先生と小泉政権がそれに乗っかって、厚労省をかなり詰めたんですよ。

その時の厚労省の課長の回答が、「規制はしていません。法律上はOKです。」と言っているんですね。ですから、民間参入は実は大丈夫なんですよ。

ですが、結局ハローワークと学校の構造があるので、民間が入るのは難しいんですよね。厚労省も、構造を変えるとは言っていない。ですが結局、議論が「OKですよ、どうぞやってください」で終わってしまったんです。

最初の問題提起は、「このマーケットを変えなさい」という行政への問題提起だったのに、「どうぞやってください」が回答になっていて、問題がすり替えられているんですよね。

結果15年たった今も、80%以上の高校生が、ハローワークを経由して就職をしていますので、構造は全く変わっていません。ハードルが非常に高いので民間は誰も参入できずに終わってるんです。

ですが最近になって、御社やハッシャダイさん、ジンジブ(高校生向け求人サービス会社)さんなどの多くの会社が参入するようになってようやく変わるのかなと思っています。

牛島:
そうなんですね、実は当社は新卒を扱っていないんです。応募は結構あって、ニーズも高いんですが行っていない理由が3つあって、一つが親御さんの理解とかが難しく最後の後押しが構造上しづらいということ。

もう一つは企業側のネックがあって、企業側が法律違反だと思っていることが非常に多いんですよね。そして、もう一つは未成年というのが一番大きいです。

実は18歳、19歳ってほとんど求人がなくて20歳から一気に増えるんですよね。あとは、この子たちをどう扱っていくか、というのを企業側が分かっていないんですよね。

古屋
そうなんですね、未成年のところはもしかしたら民法改正がきっかけで変化があるかも知れませんね。ですが、ハッシャダイさんとかも新卒をやっていないですもんね。

牛島:
そうですね、でもやっぱりビジネスとして成り立たせると考えると難しい部分が多いですよね。やっぱり参入しない理由としては、ビジネスとして儲からないというのと、工数がめちゃくちゃかかるというのが最大の理由だと思います。

この工数がかかる部分は誰でもできるというわけではないのがポイントだと考えています。なぜなら、彼らは、まだ成熟していないので、言語化能力が発展途上な部分があるのでそこを支援してあげないといけない。

自分の考えていることとかを伝える能力がまだ発達途中で、自分の強みを引き出す能力がまだないので、この引き出すのを大人が手伝わないといけないんですよ。

そこは、ハイクラスの子たちとかは逆に何もしなくていいんですよ、求人を紹介するだけで勝手に進んでいくので。それをピンポイントでバシッと決めてあげればいいんですけど、僕らが相手にしているところは、過去の経験から自分が一番大事にしているもの今の時点で何なんだろうかっていう現在地点と将来の理想というのをすり合わせるところから入ります。

これは、教える側のレベルが高くないと無理なんですよね。僕らのところはそれがたまたまハイクラスではまったっていう感じですね。

 

 

株式会社前人未到
代表取締役社長 牛島悟
福岡出身、新卒で大手メーカーに入社。その後スタートアップ、メガベンチャーにてTOPセールス。AI系ベンチャー企業上場を牽引後、起業。

 

一般社団法人スクール・トゥ・ワーク
代表理事 古屋星斗
1986年岐阜県多治見市生まれ。大学・大学院では教育社会学を専攻、専門学校の学びを研究する。卒業後、経済産業省に入省し、社会人基礎力などの産業人材政策、アニメ・ゲームの海外展開、福島の復興、成長戦略の立案に従事。アニメ製作の現場から、仮設住宅まで駆け回る。現在は退官し、民間研究機関で次世代の若者のキャリアづくりを研究する。

 

2020’sの若者キャリア論シリーズ

2020’sの若者キャリア論 牛島悟(前人未到CEO) × 古屋星斗(スクール・トゥ・ワーク代表理事)①
2020’sの若者キャリア論 牛島悟(前人未到CEO) × 古屋星斗(スクール・トゥ・ワーク代表理事)②
2020’sの若者キャリア論 牛島悟(前人未到CEO) × 古屋星斗(スクール・トゥ・ワーク代表理事)③
2020’sの若者キャリア論 牛島悟(前人未到CEO) × 古屋星斗(スクール・トゥ・ワーク代表理事)④