2020年代の若者キャリアはどうなっていくのか。今回は、高校新卒求人サイト「ジョブドラフト」を運営する株式会社ジンジブをグループ会社に持つ株式会社人と未来グループの佐々木満秀さんと対談します。

前回 2020’sの若者キャリア論(その3) 佐々木満秀(人と未来グループ 代表取締役)×古屋星斗(スクール・トゥ・ワーク 代表理事)

佐々木
学校に通っているうちは価値観を作るのは先生か親しかおらず、会社に入ってからは上司から会社の価値観を伝えていきます。客観的に人生観、職業観などを育てるための大学を作りたいんですが、古屋さんのような客観的な立場で、いろんな職業観を研究している方に、お話していただきたいです。固定観念や今までの社会の流れを単純に考えるだけじゃなくて、挑戦しないといけない社会になることは間違いありません。今の選択が成功か失敗か決まるのは今ではなく、最終的には自分の人生の終着点までに決まっていくものです。今は、「失敗の人生」と思わずに、大手企業、ブラック企業に入ることには否定しませんが、賢い方は賢いなりに挑戦をして、バカやからと諦めずに頑張っていって欲しいです。

勉強する機会をしっかり与えてあげて。僕もマネージャをやっていた時に、高卒である自分の知識差を痛感したことがありました。24歳で営業所長やってたんですが、今もバカなんですけど、その時はもっとバカだったんですよ。

自分で通信大学を申し込みました。経営者になりたかったので、「経営者になるために無知はあかんな」と。産能短期大学の経営学部という通信講座があって、100万くらいかかるんですが、日中は仕事、夜は勉強と続けました。マネジメント、心理学、営業、組織論、リーダーシップ、財務含めて、3年間くらい自分でやって、ようやく人並みになれたかなというのが27歳くらいでした。経営者と話ができるレベルになりました。

起業した時は、賢いとは思ってないですが人並みに経営のことはわかってるなと自信を持てたんです。あとは営業活動だけだったので。

困ったことはたくさんありましたけど、そういうことをもっとしたいなと思っています。

今、大学で目的もなく奨学金を半分くらい借りてきて、4年間で何を学んだかというのが残っておらず、大学時代の経験しか残っていなくてという方は、18歳くらいから昼間は稼ぎながら、勉強したい人は夜間で勉強してやっていくと、25歳くらいには家庭をもてる経済力がつきます。少子高齢化改善にも繋がります。自分一人でいたい人は生きていったらいいし、結婚したい人は、できるという自信が持てるようになってから、と。

そういうのができたらいいなというのが、日本の問題も含めて、全体的な僕の感覚なんです。

古屋
大学で学べることがないという問題意識が学校にもあります。専門職大学という来年からできる学校なので、2校しかないんですが、そのうちのひとつの専門職大学で、非常勤の客員講師をやることになっています。そこは大学なので昼間にやる学校ですが、非常に面白いことを言ってます。株式会社を大学の中に作って、学生に投資をする。起業したら単位をやるというしくみにすると言っています。イメージとしては、法人登記したら2単位、IPOしたら卒業という。おそらく文科省がノーと言うので無理なんですが(笑)、そういう思想なんです。

非常に面白いと思ったので客員の話を受けたんです。実務家教員を5割入れて、生徒数が学年200人で教員数300人と逆転してます。200人くらい実務家教員が入ってるので、実務を教えられる重厚な教育体制になっています。そういう大学がちらほら出てきつつあります。

しかし、そこはいわゆる4年制大学で、昼間に子どもが行く、稼いでいない人が行く大学なので、さらにもう一歩踏み込んで、18歳で挑戦的な進路を選んだ方々が、自分に足りないものを痛感したうえで通うような学校が、社会に必要だと思います。今は放送大学、産能大学さんしかないんですが。

若い高卒就職をした方で、大学には行きたくないが、大学院には行きたいという人がいます。なぜかと聞くと大学は遊ぶところだけど大学院は学ぶところだからと。

そういうコンセプトでそういう高卒の方が入れるような学校があったら、面白いんじゃないかなと。学位はいらなくて。

佐々木
僕が親やったら、それやったら行けと言います。

古屋
一言で言えば、現場で働いていていらっしゃる方の大学に対するイメージが悪すぎるんです。

佐々木
本気で勉強したいやつは、やらないといけないですが、今の大学入学のやり方で普通にいくというのは、賛成できません。

古屋
私も教育社会学を学ぶために大学院まで通っているので、自分のことを棚に上げて言っていますが(笑)。

佐々木
僕の考え方が良いか悪いかは別にして、結局は行動に起こさなければならないんです。百の理屈より一の行動です。結果を作らなければ世の中の悪になってしまいます。

これは経営者としても心掛けていることですが、会社の価値観や理想を掲げ、これで赤字を作り続けるのは悪だと思ってます。

今日意見を伺わせていただいて、良い味方というか同志のような感じがして嬉しいですが、本当に学校を作らなければならないと思っています。本当にこの社会を変えるようなしくみを、行動と習慣を作らないといけない。命懸けてもいいと思っています。

企業側は、企業弱者と言われるような中小企業はこれから採用で困るんじゃないか な。99.7%は中小企業ですので。

中小企業の中にも、もっと良い技術やサービスや商品を生み出す企業はいっぱいあるのですが、人材の問題が一番課題なんです。日本の民間企業でも人材支援をしている会社がありますが、それらの企業のターゲットは全部金持ち企業じゃないですか。

古屋
そうです、全部金持ちです。単価が高いので。

佐々木
僕は地方、中小企業などに高卒人材を本当に届けるのなら、馬鹿だけれど可能性があるやつらを、もっと地域や中小企業に送り出さないといけない。これが課題だったんです。

うちも20年培ってきた資産があるので。実はこう見えて僕の自慢は、「やるというものは絶対にやる」ことです。帝国データバンクってあるじゃないですか。あれで日本一の中小企業に絶対なるということだったんです。

一応日本一にはなったんです。7年前にスコアが75になり、純資産がたくさんあったんです。自己資本比率が85%までいき、無借金でずっとやってました。超優良企業だったんです。絶対に潰れないと言われました。

古屋
潰れようがないでしょうね。

佐々木
3年間売り上げ0円でも潰れないような感覚です。

そうなったのをどうしようかな、と考えたのが7年くらい前です。社会のためにもっとやりたいということをだいぶ本気で考え出して、社員のためも本当に考え出して、僕が100%オーナーの会社なので。

古屋
勝ち逃げですね。

佐々木
そう、勝ち逃げ。僕は中小企業で、二極化のどちらかというと負け組と言っていいのか分かりませんが、こちら側の人や企業や地域の支援ができるような人材ビジネスをやらなくてはいけないと思っていたところに高卒人材があったのです。

彼らが挑戦できたり、希望が持てたり、企業が人にもっとモテるビジネスになるためにはということで、この事業を始めました。これを成功させて学校をつくったり、そのための課題は収益性なので、それが今の悩みなんです。ビジョンの達成のためにはお金はやはりいるので。お金の重要性はやはり感じるじゃないですか。

古屋
そうですね、やはり持続可能にするためには。

佐々木
そうです。それがやはり民間企業の最も大きな課題なので。

古屋
マーケットを作らなくてはいけないという、フロントランナーの悩みですよね。本当に最初は儲からないという話は、この業界だけではなくて人材業界全体でよく聞きます。マーケットを作らないといけないですよね。

100億円のマーケットに飛び込んでシェアを20%取るという世界ではないじゃないですか。

佐々木
そうなんです。それがパイオニアの使命です。

古屋
私もマーケット拡大に少し貢献できるかと。

佐々木
本当によろしくお願いします。学校を作れた暁には、講師でぜひよろしくお願いします。

古屋
ぜひ貢献させていただきたいです。

佐々木
こういう方がいるのが、僕の救いなんです。

古屋
私もいろいろな方から言われますが、こういう領域に興味を持ったのはなぜかと来歴的に聞かれることがあります。自分自身でも、なぜなのか良くわからなくなっていますが(笑)、やはり翻ってみると、自分は岐阜県の片田舎の出身で、小学校の同級生たちと自分との生活環境の違い、今後に対しての話の合わなさとか、全然違ってしまっているんです。子どもの年齢が10歳違うとか。

子どもの頃はやはりそんなことは考えもしていませんでした。どこでこんなに違ってしまったのかと思ってます。

佐々木
僕もまさにそうです。家が貧乏で、大学どころか高校すら行くか行かないか議論されていたので、中卒で働くかどうかみたいな。

古屋
先ほどおっしゃったように、この問題を議論する人間は全員大卒なんですよね。1つの世界でしか過ごしてきていないような方々です。大学生のときに就活すらしていないかもしれません。こういう方と話をしていかないといけないなと。