執筆者 @schooltowork | 3月 29, 2022 | ニュース, 授業, 活動報告
この度、学生及び早活人材[1]に対するキャリア教育事業等を行う一般社団法人スクール・トゥ・ワーク(所在地:東京都千代田区、代表理事:古屋 星斗)は、2022年1月27日、埼玉県立川口工業高等学校(全日制)においてキャリア教育授業を実施いたしました。
学科ごとに分かれ3名の若手社会人講師による自己紹介講演が行われました。質疑応答のあと、生徒代表からのお礼・感想のメッセージを頂きました。
参加したすべての生徒さんからも感想を頂きました。その一部を抜粋します。
「少し面白おかしく話してくれて、ほかの人だと成功談ばかりなこともありますが、ちゃんと失敗談も話してくれて、『失敗してもいいんだ!』と思わせてくれました。」
「就職するうえで、右も左もわからない状態から仕事をはじめると思うので、講師の方の具体的な経験談がとても参考になりました。特に『失敗することが大事』だとはよく聞きますが、その失敗からどうリカバリーすべきなのかを学べたので良かったです」
「自分では考えられない発想がほんとにたくさんでてきた。今自分が同じ年代の人と学んでいることが違うことをプラスに考えて、行動していきたい。」
「自分を知るところから始まる、という話があって自分も難しいとは思うけど、自分を知る努力をしてみようと思った。人にすぐ質問してしまう癖があって、自分はよくないとも思ったけど、それで質問しないよりは100倍良いなと思いました。行動する、そのために日々できることを探したい。」
「いまの高校生活を大事にしていったほうが、今後の職業選びの幅も開けるので、今できることを全力で取り組んでいこうと思えました。」
「仕事はあくまでお金を稼ぐものだと思っていたけど、仕事は人生を楽しくする手段だというお話を聞いて、自分のもっている将来の職業の幅が大きく広がった気がしました。これからの人生をつまらないものにしないためにも、自分の持っているやりがいを一番に考えた職種を調べていきたい。」
「同じ工業高校を出て、同じような道を進んでいた人の話だったので、とてもわかりやすく、大人になってどんなことをすれば良いかすごく参考になりました。」
なお、185名に参加頂き、このうち181名から参加して「とても良かった」「良かった」と回答がありました(参加して良かった割合:97.8%)。
スクール・トゥ・ワークでは、今後も仕事やキャリアを考える授業の提供を通じて、高校生の進路決定をサポートしていきます。
[1] 非大卒人材とも言われ、主に中学校卒、高等学校卒、専門学校卒、高等専門学校卒、短期大学卒や大学中退などの人材のこと
執筆者 @schooltowork | 10月 14, 2021 | お知らせ, ニュース
一般社団法人スクール・トゥ・ワーク「早活人材」の商標登録取得!
この度、学生及び早活人材[1]に対するキャリア教育事業等を行う一般社団法人スクール・トゥ・ワーク(所在地:東京都千代田区、代表理事:古屋 星斗)は、「早活人材」(そうかつじんざい)にかかる商標登録を取得いたしましたので、お知らせいたします。
当団体では、2019年1月から3月まで、主に中学校卒、高等学校卒、専門学校卒、高等専門学校卒、短期大学卒や大学中退などの人材と定義される「非大卒人材」に代わる新名称を募集しておりましたが、同年7月に開催したイベント「ハッシャダイ × スクール・トゥ・ワーク~18歳の進路選択~」vol.1において、新名称を「早活人材」に決定いたしました。「早活人材」は、「早期就職活動人材」、「早期職業活動人材」や「早期活躍人材」の略称とも読み解け、また、若者の属性に依拠しておらず、「キャリアを早いタイミングで選択した人」という時間軸に重きを置いたもので、若者が主体的にキャリアを選択したといえる名称であると考えております。
なお、今般、当団体はこの「早活人材」にかかる商標登録を取得いたしましたが、他団体や企業の使用を制限するものでは一切ありません。今後も幅広く多くの方々に「早活人材」をご使用いただき、若者のキャリアにかかる諸問題を解決していきたいと考えております。
今後、当団体では、この新名称「早活人材」の周知を進めるとともに、より一層の「早活人材」の活躍をサポートしてまいります。
[1] 非大卒人材とも言われ、主に中学校卒、高等学校卒、専門学校卒、高等専門学校卒、短期大学卒や大学中退などの人材のこと
執筆者 @schooltowork | 5月 13, 2021 | ブログ, メッセージ
求められる実行計画
高校生の就職者は毎年20万人前後。大学卒は約45万人であり、高校卒の約20万人は決して少ない人数ではないことがわかる。企業の採用意欲も高く、2021年卒で2.08倍の求人倍率(厚生労働省調査)であり、これは大学卒の1.53倍と比較して高い(リクルートワークス研究所調査)。特に地方のものづくりの現場においては中核的な役割を果たしている。
このように「高校生の就職」は決して特殊な問題ではない。日本の多くの若者の問題である。言うまでもなく少子化が加速する今後の日本において、「高校生の就職」は若者が活躍する社会を作ろうとした際に避けては通れない論点である。
「高校生の就職」と言えば、生徒のキャリア形成や早期の離職・ミスマッチとの関係で問題点が指摘されている「1人1社制」が注目される[1]。しかし議論すべきポイントは「1人1社制」だけではない。学校でのキャリア教育から、就職活動、卒業後まで検討すべき論点は広範に存在する。しかし、こうした全体的な仕組みを急速に改革することは困難が多いと考えられることから、今回は新しい仕組みに移行していくための”ステップ”を提案する。
写真AC
「準備」×「就職プロセス」
具体的には高校生の就職について「4つの段階」を提案する。こう考える背景には、高校卒就職者のキャリア状況を分析した際に、「就職プロセス」とその「準備の環境」によってその後のキャリア形成が大きく異なることが明らかであるためである[2]。このため、まずは就職プロセスを大きく変更せずとも、就職活動の事前の準備を充実させることによって、卒後のキャリア形成に一定程度ポジティブな影響を与えられることを活用したステップを提案する。
もちろん、高校卒後の状況のデータから見た場合に、就職プロセスと事前の準備環境の双方の仕組みを改善することが望ましいと考えられる。ただ、施策を現実的に実施する上でステップは重要となる。このため、本稿の提案は、現状の仕組みから、まず「事前の準備環境」を整え、その後に「就職プロセス」を改善していくというフローとなる。
また、就職プロセスについても2つの段階を設けて現状の制度からの円滑な移行を想定する。
提案:4つの段階
こうした前提により提起するのは以下の4段階である。
①ショートタームの就職指導から、学校推薦・1人1社選考によって就職する仕組み
②ロングタームの就職準備から、学校推薦・1人1社選考によって就職する仕組み
③ロングタームの就職準備から、学校推薦・1人複数社選考によって就職する仕組み
④ロングタームの就職準備から、高校生の「希望応募」もしくはセーフティネットとしての学校推薦によって就職する仕組み
上記の4つについて現状は、卒業学年の1学期からの就職指導と学校・ハローワーク斡旋を組み合わせた、①が支配的である[3]。こうした現状認識を押さえつつ、それぞれについて詳しく見ていきたい。
段階① 現状の仕組み
ショートタームの就職指導から、学校推薦・1人1社選考によって就職
高校生の就職には、行政・経済団体・学校の関係者によって申し合わせられたルールが存在している。選考開始日などスケジュールから、求人票・提出書類の様式、選考方法など多岐にわたる。その中のひとつとして、選考開始から一定期間は同時に一社しか面接を受けることができないという「1人1社制」がある。この「1人1社制」という就職プロセスを規制するルールに加えて、7月に企業の求人票が出てくるタイミングに合わせて高校3年生の1学期から就職に備えた指導を行うという「ショートタームの就職指導」と合わせて現状の仕組みを構成している。実際に高校3年生まで進路が決まっていなかったとする高校卒就職者は57.2%[4]であり、就職指導が短期集中型となっている・ならざるを得ない状況を浮き彫りにする。
こうした仕組みは生徒を正規社員として就職させるという目標に際しては一定程度有効に機能していたと考えられる。また、学校推薦によって生徒が1社だけ受けられる選考先を学校が決定する方式は、生徒の勉学や部活動といった学校活動の努力を促す効果もあった。就職活動直前の数か月間にキャリアを考える機会を集中させることで、高校の授業計画や学校スケジュールにも乗りやすくなるほか、教職員の時間を有効に活用することができる。
特に、年間100万人前後の高校生が就職していった1980年代には一層有効だったかもしれない。進路指導部には地元の就職を知り尽くした進路指導主事を中核とする、複数の就職担当教員による重厚な体制が存在し、多数の就職希望の生徒たちを効率的に送り出すことができた。しかし、現在では「進路多様校」が増え、数名の就職希望者に対して「進学指導の傍らで就職指導をしている」学校も多い。特に総合型選抜やAO入試など推薦入試を中心に形態・時期が多様化しており、9月に開始される高校生の就職と推薦入試の時期が重複するという声もあった。こうした高校では十分な就職指導を行うことは難しい。結果として特に、進路多様校が多い普通科高校は専門高校と比較してミスマッチが大きくなっている[5]。なお、高校卒就職者を最も多く輩出しているのは普通科高校である(2019年卒で6万3841人)。
元々、1980年代から90年代にかけて現在よりも割合にして倍以上、数にして5倍以上という大量の高校生を短期間で企業にマッチングさせてきたこの①の仕組みは、当事者たちからの「もっとこうして欲しかった」といった消極的な振り返りに直面[6]するなど歴史的使命を終えつつある。
写真AC
段階② 「助走つき1人1社制」
ロングタームの就職準備から、学校推薦・1人1社選考によって就職
若者のキャリア形成の第一歩目を支える仕組みに変わっていくために、高校生の就職の仕組みの段階②のポイントは、現行の就職プロセスを維持しつつ「就職に向けた準備を長くする」ことである。現状では多くの高校生が卒業学年に進路を決定し、就職指導を受けている。多くの高校のスケジュールにおいても、数回ある卒業生講話等の機会を除いては本格的な就職活動・キャリア形成の支援が開始されるのは卒業学年に進級して以降であろう。
就職活動の段階で情報量が十分でなかった場合には、早期離職率が上昇しミスマッチが拡大するという結果もある[7]。企業の情報が「不十分だった」生徒では、初職の企業を「0点」と評価する割合は実に47.9%と半数近く、早期離職率も高いことがわかる。高校1・2年から中長期的に十分な情報を生徒に提供する仕組みを構築することで、初期のミスマッチの低減に繋げることが可能である。これが、就職活動の「助走」を長くするということだ。
高校卒就職者が高校時代に受講したキャリア教育に関わるプログラムは多様である[8]。キャリア教育として多種多様なプログラムが実施されているが、就職する高校生が多く実施しているのが、企業見学・職場見学で33.1%と3人に1人に経験があった。職業体験・インターンシップも27.8%、ほか社会人の話を聞く授業や卒業生の話を聞く授業も2割程度の経験者がいることがわかる。全体としては6割弱の生徒にいずれかのプログラムを受けた経験があった。ただし、プログラムを複数種受けたことがある生徒となるとぐっと少数派となり、2種類では全体の14.8%、3種類では8.2%、4種類では9.0%であった。こうした現在までの状況を踏まえて、まずはすでに行われていることが多いプログラムの組み合わせを継続的に実施するところから始めてはどうだろうか。
具体的に、とある都道府県においてモデル事業として検討されている取組が参考となるだろう。対象校においては、学外の支援機関のサポートを通年で受ける形で、進路ガイダンスや業種別の説明会、企業で働く若手社会人との交流、自身のキャリア選択に関するアウトプットまでを高校2年生の一年間を通じて受けていく。希望者には長期休暇を活用して1~2週間程度のインターンシッププログラムも提供される。内容自体も生徒の関心や理解に合わせてローカライズされる。こうした取組によって事前準備を十分にして、高校3年生での就職活動を迎えようとしている。モデル事業は探求学習等の時間を用い、年間の授業スケジュールと抵触せず、また外部機関を活用するため無理なく実施することができる。
プログラム一つひとつには何ら新しいところはない。しかし高校2年生の通年をかけて実施することで、プログラムを組み合わせ、生徒に合わせてチューンアップしていくことができるようになる。こうした取組は就職活動のプロセスを見直すことなく、しかし確実に生徒の早期離職を減らし、その後のキャリア形成を支援できる大きな効果が期待できる仕組みである。
段階③ 「1人X社制」
ロングタームの就職準備から、学校推薦・1人複数社選考によって就職
段階③のポイントは、学校推薦による複数社選考によって就職する仕組みを構築することにある。
現状、秋田県、和歌山県と沖縄県を除く全ての都道府県において、就職活動の最初に生徒が応募できる企業数は1社に限定されている。しかし、就職活動において複数社比較する選考を実施した生徒には良い効果がもたらされていることが判明している。現在「いきいきと働いているか」について、複数社応募をした高校卒就職者の方が仕事に対してポジティブな状況となっていることがわかる。また、初職企業への評価点でも「0点」が15.3%まで低下(全体では24.1%)するなど、多面的に複数社応募が効果を挙げていることがわかる[9]。
ただし、高校生の就職活動に生徒の希望に応じた無制限の応募を全面的に導入することは困難である。大学生と比較すると就職活動が可能な期間はどうしても短くならざるをえないために、特定の企業に生徒の応募が集中した場合に、内定を全く得られなかった生徒が再度別の企業の選考に臨むための余剰期間が短いためである。
こうした困難性を踏まえつつも就職活動における複数比較の効能との両立を考え、漸進主義的な方向性として、「学校推薦による複数社選考」の仕組みを提案する。これは、学校が一人の生徒に対して同時に複数の推薦を出すものである。指定校求人[10]による企業の採用数は「学校が推薦できる生徒の枠」ではない。また、生徒の調査書を提出する際に「推薦の理由」を教員が記載するが、具体的にその企業でないといけない理由が記載されるケースは稀である。
例えば、こう考えてみよう。1名の採用枠に3名の生徒を推薦した場合には、2名の生徒が内定を得られないこととなるが、同時にこの3名の生徒をほかの1名の採用枠の2社に推薦した場合はどうだろうか。3つの企業で3名の指定校求人枠があり、そこに3名の生徒が応募をすることとなることから、結果的には3名全員が内定を獲得することができる。採用企業もこれまでは1名しか選考できずその生徒を採用する判断しか許されていなかったところ、この仕組みであれば自社にフィットするかどうかの観点で、「選考」を行うことができる。当然ながら、生徒の内定辞退等が発生することになるが、外部機関と伴走して生徒を支援すれば大きな問題になるとは考えづらい。企業側の採用にかかる時間は増加すると予想されるが、入社後早々に退職してしまうことと比べればその手間はいかほどだろうか。せいぜい面接の回数が増え、面接後に内定を出す生徒を検討する手間と、入社後に研修やOJTを実施し何度か給料を支払ったのちにその若手が退職してしまった場合の手間とは比べるまでもないだろう。
学校と企業の採用「実績」関係を媒介にした関係性は、指定校求人による学校推薦が残るためにこの仕組みでも一定程度維持できるし、他方で生徒の意思を尊重した企業選びも一定程度可能となる。「学校推薦による複数社選考」による就職プロセスと、ロングタームの就職準備を組み合わせた仕組みが段階③である。
厚生労働省・文部科学省の高等学校就職問題検討会議が2020年に出した報告書「高等学校卒業者の就職慣行の在り方等について」でも、複数社に応募できる仕組みづくりも含めて各都道府県に検討するよう提言されており、複数の都道府県において複数社選考が検討されている状況にある。「1人X社制」と呼ばれるような方向の改革は今後続くだろう。ただし、段階②で提案した通り、ロングタームの就職準備と組み合わせる必要があることは忘れてはならない。
写真AC
段階④ 「希望応募制」
ロングタームの就職準備から、高校生の「希望応募」をセーフティネットとしての学校推薦が支える仕組み
初職のミスマッチを可能な限り無くし、その後も企業で長く活躍するための第一歩を支える仕組みとなるための理想像として、段階④を提案する。段階④のポイントは高校生の希望による応募制を基軸として学校推薦がセーフティネットとなり支える点にある。
段階②、段階③では解決できない大きな問題は、「学校推薦」が就職活動の根幹をなすことである。学校推薦の前提として当然に「校内選考」が存在し、生徒はどれだけキャリアパスを考え、そのために行きたい企業、働きたい職業を見定めたとしても、学校の成績や出欠席状況、部活での活動などから点数化される「校内選考」を通過しなければその企業に応募書類を出すことすらできない。当事者からの意見には、「校内選考制度を辞めて欲しかった。行きたい場所、受けたい場所があっても選考漏れすると受けられず将来のビジョンが崩れてしまう」(商業科卒、回答時38歳、女性)という意見があがっている[11]。高校生たちの主体的なキャリア形成と、どうバランスをとっていくのかは看過できないポイントである。
段階②、段階③を経て、十分な就職準備と複数社を比べて選ぶ就職活動が定着した後、実現が可能となる「希望応募制」は、生徒のキャリア形成上の希望により応募する企業を選ぶことを周りが支える仕組みを中核とし、また、希望する生徒には学校が推薦を与えてサポートする仕組みとなる。学校推薦の仕組みは、内定を得られない可能性がある生徒や、キャリア形成上志望度が高い企業の指定校求人があった場合に用いる[12]。主としてセーフティネットとしての機能である。
高校卒就職においては求人倍率が安定的に全体で1倍を大きく超えて推移していることからもわかるように、就職希望の生徒に対して求人数が大きく上回っている。このことから、セーフティネットとして就職先が一定の時期までに決まらなかった生徒に対しての学校推薦は機能する可能性が高い。特に、学校推薦で8割以上が就職先決定している現状を踏まえれば現状学校推薦で斡旋できる求人数は十二分に存在していることになる。もしこのセーフティネットとしての学校推薦が機能しないのであれば、そもそも求人数が就職希望の生徒に対して足りていないことを意味するため、段階①においても学校推薦が与えられる生徒数が限定され、公平性の観点から問題のある仕組みであることになる[13]。つまり、段階①が成立するのであれば段階④が可能である前提は整っている。
学校推薦をセーフティネットとしつつ、生徒のキャリア形成上の希望を実現するために、生徒が校内の事前選考なく応募するのが「希望応募制」である。ただし、段階③から段階④への移行にあたっては不可欠な新しい要素がいくつか存在する。
第一に、事前の準備から就職活動までを俯瞰したキャリアコンサルテーション機能である。十分な準備を活かした就職活動とするために、進路指導部に常駐する外部支援職員といった形態に留まらず、キャリア教育・就職支援全体を高校1・2年生から継続的にサポートする職員が必要となる。就職活動に関する業務のタスクアウトも含め、就職支援に係る業務の整理と外部人材の活用を本格的に検討しなくてはならない。
第二に、就職活動や準備において生徒が行う範囲と学校が行う範囲の整理が必要となる。例えば、進学においては全てのオープンキャンパスを高校教員が管理するわけではなく、模試にも同行しないし、また受験も後日結果の報告を聞くだけのことがほとんどである。願書等書類送付も生徒が各自で行うことが多い。同じ高校生の進路選択に関してこうしたことを考えると、就職指導では当たり前のように考えられている、生徒の就職活動・準備を教員の手元で管理し保護しなくてはならない、という考え方自体は本当に当たり前だろうか。外部の支援を借りながら、生徒ができることの範囲を広げていくことは可能ではないだろうか。なお、成人年齢の18歳への引き下げにより、高校卒業時点で必ず成人となっているため、全ての生徒は労働契約締結主体となる。
第三に、地域によって求人数に偏りがあるため、「希望応募」が難しい地域が出てくる可能性があり、応募機会を平準化する仕組みが必要となる。地元の求人を中核としながらも、求人を広く検索できる仕組みが必要となる。ハローワークのデータベース(「高卒就職情報WEB提供サービス」)への生徒からのアクセスを容易にする[14]ほか、外形的な文字情報のみとなっている企業情報を充実したり、また、データベースを開放し民間企業による活用を促すなどの方策が必要となるだろう。
就職活動を大切なスタート地点に
いまだ多くの若者が経験している「高校生の就職」の問題を放置したままで、若者が本当に活躍する社会はつくることはできない。本稿では、その具体的な解決の道筋を4つの段階に分けて提案した。
若者が本格的に減少していく日本社会だからこそ、多くの大人が若者一人ひとりに目をかけ手をかけることができる。そんな当たり前の発想が実行に移されたとき、「高校生の就職」は学校生活最後のイベントではなく、長い職業生活の大切で忘れられないスタート地点となるだろう。
写真AC
執筆: 古屋 星斗 Shoto Furuya
一般社団法人スクール・トゥ・ワーク代表理事
[1] 以下の記事等が存在する。
日経新聞,2021年3月20日,「高校就活「1人1社」の弊害」,2021年4月29日閲覧
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO70174580Z10C21A3EA1000/
ダイヤモンドオンライン,2019年9月5日,「高校生就活の知られざる闇ルール、1人1社制・内定辞退できない…」,2021年4月29日閲覧
https://diamond.jp/articles/-/213850
[2] リクルートワークス研究所,2021,「高校生の就職とキャリア」P.15
[3] 例えば、文部科学省,学校基本調査によれば学校・ハローワークの斡旋率は8割を超えており、かつ就職活動で「1社だけ選考」だった者は少なくとも6割前後存在している(リクルートワークス研究所,2021,「高校生の就職とキャリア」)。
[4] リクルートワークス研究所,2020,高校卒就職当事者に関する定量調査より筆者作成
[5] リクルートワークス研究所,2021,「高校生の就職とキャリア」P.16
[6] リクルートワークス研究所,2021,「『高校卒就職当事者に関する定量調査』における、就職活動でもっと学校にしてほしかったことに関する自由記述回答の一覧」を参照。無回答等を除く、1419名分の当事者の意見を掲載している
[7] リクルートワークス研究所,2021,「高校生の就職とキャリア」P.12
[8] 以下のキャリア教育受講率に係るデータはすべて、リクルートワークス研究所,2020, 「高校卒就職当事者に関する定量調査」より筆者作成
[9] 詳細については、追加分析レポート「高校就職での複数応募はキャリアにどのような影響を与えるのか」を参照
https://www.works-i.com/project/koukousotsu/viewpoint/detail005.html
[10] 高校生の採用に特有の制度で、採用企業が指定した高校にのみ求人票を開示する
[11] リクルートワークス研究所,2021,「『高校卒就職当事者に関する定量調査』における、就職活動でもっと学校にしてほしかったことに関する自由記述回答の一覧」 他にも非常に多様な当事者の声が掲載されている
[12] このため、推薦の可否は生徒のキャリア形成との親和性や職業体験参加時の状況、社員との交流時の状況など事前の準備期間における内容が勘案すべき項目となり、現在のような成績・出欠席による評価のみとはならない
[13] 事実として、リーマンショック直後に高校・ハローワークの斡旋率は通常8割前後のところ6割台まで急激に低下し、景気後退局面における段階①の仕組みの脆弱性が露呈する結果となっている
[14] 現状は生徒個々人にIDとパスワードは付与されておらず、教員に付与されている