高卒就職、「一人一社制」は必要か

高卒就職、「一人一社制」は必要か

(総動員体制下で制定された“労務調整令”。80年前に作られた斡旋体制が、2019年現在も高校生の進路選択を拘束している)

 

高校生就活の3つのルール

 

高校生の就職活動は、大学生の“就活”とは大きく異なることをご存じだろうか。合同説明会も、インターンシップ説明会も存在せず、「内定長者」やESを何社分も書く、といったものもない。

そして現代の就活で見ない大学生はいないであろう大規模な「就活ポータルサイト」も存在しない。
 
では日本の高校生はどのように就職活動をしているのだろうか。大学生の就活と比べると大小多数の違いがあるものの、高校生の就職活動を知るために押さえておくべきは、以下の3つの「ルール」の存在であろう。

第1のルールは、スケジュールに関するルールである。毎年7月1日に企業による学校への求人申し込みが始まり、7月下旬以降の夏休み期間に会社見学・職場見学を実施、9月5日に生徒の応募書類提出開始、9月16日に選考・内定解禁というスケジュールが政府等関係機関によって定められ厳密に運用されている。

第2のルールは、「一人一社制」である。9月5日の応募書類提出から一定の期間(10月1日までと決まっている)は、一人の生徒が一つの会社にしか応募することができない。2003年以降に緩和され10月1日以降は複数社応募が可能となっているが、それ以前は厳密に一人の生徒の複数社同時応募は不可能であった。

第3のルールは、「推薦指定校制」による求人事前選別の仕組みである。高校で生徒に紹介される求人については、会社がオープンに応募している求人が提示されるのではなく、高校に寄せられた求人から選ばれるという慣行である。

この3つのルールのうち、第3のルールである「推薦指定校制」はインターネットの浸透もありかなり緩んでいるという指摘もある(ただし、当方が最近高校卒業した者にヒアリングしたところ、就職指導室にあった紙のファイルの10数枚の求人票から選んだ、という話を複数人から聞くことができており、「推薦指定校制」に近い状態は現在でも残存しているものと考えられる)。

その中で、本稿ではいまだ多くの都道府県において厳密に運用されている、「一人一社制」について考えたい

 

一人一社制はなぜあるのか

 

一人一社制はどういった理由で存在するルールなのだろうか。文部科学省、厚生労働省の通知や各都道府県での申し合わせを見ると、「求人秩序の確立」、「適正な選考・推薦の実施」、「健全な学校教育」、「新規学校卒業者の適正な職業選択」といった理由が挙げられている

つまり、一定のルールに則って就職活動がなされることで、高校生の学習環境を保ちつつ適正な選択を促す、というのが規制の趣旨となっていると理解できる。

また、一人一社制がここまで一般化しているのは、高校とハローワークによる高校生への職業斡旋が一般的であるためであり、実に現代でも80%以上の高校生が高校・ハローワークの斡旋によって就職している。

その歴史的な経緯としては、第二次世界大戦中の総動員体制下において、学校が戦時動員により工場等に学徒を斡旋する機能を持ったことに起因すると考えられる。

具体的には1941年12月の労務調整令により、国民学校卒業者は国民職業指導所経由での就職のみに限定されることとなった。

この学校・国による斡旋体制の確立が、戦後の中学・高校における学校・ハローワークの「全員斡旋体制」に繋がっており、2019年現在も高校に残っているものと考えられる

歴史的な経緯は時として本質を歪ませる。「求人秩序の確立」、「適正な選考・推薦の実施」、「健全な学校教育」、「新規学校卒業者の適正な職業選択」といった趣旨を達成する制度としての在り方については議論の余地があるといえよう。

 

一人一社制は「弱いルール」

 

現代においても、多くの学校現場で厳密に運用されている一人一社制であるが、ルールとしては実は「弱い」。

高校生就職活動については、二段階の規制が行われている。一段階目は、文部科学省と厚生労働省が共同開催する「高等教育就職問題検討会議」決定の「通知」による規制である。

ここではスケジュールのほか、全国統一様式の応募書類、さらには求人票にはハローワークの確認印が必要である、といった細かいことまでが決定されている。この一段階目ですら、法律(国全体の規則)や政省令(政府が作る細かい規則)といったものではなく、あくまで法的根拠のない「通知」である。

しかし、スケジュールにしろ、全国一律の応募書類にしろ、80%以上の高校生がこのルールに従って就職活動を行っている事実を踏まえると、事実上の規制として強い効力があると言えよう。

二段階目は、各都道府県の高等学校就職問題検討会による「申し合わせ」である。「申し合わせ」において、「一人一社制」や面接の際の質問内容の制限などとった国の「通知」で決まっていないことが定められる。

こちらは国による事実上の規制ですらなく、各自治体によるものであり、法的根拠も全くない極めて弱いルールであるといえよう。

しかし、弱いルールである一方で、多くの高校生、そして採用する企業がこのルールに縛られており、事実上の規制として効力を発揮していることには変わりがない。

 

一人一社制はこれからの日本に必要か

 

論点ごとに検証してみよう。

  • 『未成年である高校生に対して、大学生と同様の就職活動をさせることは難しいのではないか』

このようなパターナリスティックな姿勢は年齢や学習期間の差異があるため一定程度必要であると考えるが、そのためにはむしろ「選択肢の選び方」や、「確認すべき点は何か」、など企業の選び方やキャリアづくりについて大学生より手厚く指導することを行うべきであろう。

そうしたプログラムなしに、行動する選択肢自体を一律で減らしてしまう規制は、職業選択の自由を過剰に侵してしまっている疑念をぬぐうことはできない

より軽易かつ効果的な方法で達成することができる論点であると考える。また、民法改正により成人年齢も18歳に引き下げられることも、この疑念を後押しする。

 

  • 『たくさんの企業との面接が行われると学校の勉強ができなくなるのではないか』

既に厳密なスケジュール規制が敷かれているため、学業期間については一定程度担保されていると言えよう。一人一社制をなくした場合には、9月16日の選考開始以降、数日から数週間に渡って選考が断続的に行われる可能性があるが、採用したい企業に対する「選考時間ルール」(学事日程に影響のない日程とすること、などとし、放課後時間などの実施をルール化する)により、こちらもより軽易な規制による効果的な方法で達成することが可能である。

もしくは選考開始日時を1か月前倒しし、夏季休暇期間とすることでも当該論点は解消する。なお、就職難の状況下においては多くの学生に無理なく就職の機会を与えるという点で、一人一社制は一定の合理性はあったものと考えられる。

しかし、現在のように採用需要が旺盛で学業を比較的圧迫することなく短期間で就職活動と進路決定が可能な状況においては、徒に生徒の選択権を限定するものとなっていると言わざるを得ない。

 

  • 『一人一社制は企業の効率的な採用に貢献している。もしなくせば企業の人材獲得が困難になる』

特に採用難に直面している地方・中小企業において、このポイントは大きな問題となっている。決まった学校から、決まった数の若者を確保できる高卒者採用の仕組みは企業側のメリットが大きい。

一人一社制は、「選考が、生徒あたり一社にしか許されない」、という仕組みとも言い換えることができ、企業の採用にとって非常に厄介な「内定辞退」を無くすことができるのである。

ただし、この仕組みによって入社した生徒は本当にその会社で仕事することに心から納得しているだろうか。高卒者の入社後3年後離職率は実に40%であり、これは大卒者の30%より10%も高い水準にある。

育ててもすぐ辞めてしまう、早期離職のこの10%の差が「選択していないこと」に起因する差であるとするならば、他の会社も見てそれでも自社に魅力を感じてくれた、という仕組みにすることが状況を改善するのではないだろうか。

また、会社側も現在より多くの生徒と会うことができ、自身の目で自社にフィットする学生を探すことができよう。むしろマッチングの場の貧しさが問題であり、一人一社制によって当該論点が解決するものではない

 

求められる、行政による主体的な「新たなルールづくり」

 

本稿では簡単に、一人一社制を取り巻く状況と課題を整理してきた。触れているとおり、一人一社制は「弱いルール」であり、行政として「規制しているつもりはない」と言える性質のものであるし、現時点で民間企業が高校生の採用市場でビジネスを行うことは全面的に自由である。

しかし、「規制していないからやれることがない」ことはない。高校生の就職・初期キャリアづくりには極めて大きな問題が多数存在しているのである(早期離職の多さ、就職業種の産業構造から乖離した偏重など)。

少なくとも80%以上の高校生とその採用をしている多数の企業が、事実として「ルール」に基づいて就職活動をしている現実を直視したうえで、より行政には積極的な役回りが期待されているといえよう。

国際的にも高い水準にある高校生の就職率を維持しつつ、よりフィットした就職先を選ぶことのできる仕組みについて、日本全体で人手不足が極めて深刻化している今、まさに議論する時が来たのではないだろうか。

 

書き手:古屋星斗
一般社団法人スクール・トゥ・ワーク 代表理事
1986年岐阜県多治見市生まれ。大学・大学院では教育社会学を専攻、専門学校の学びを研究する。卒業後、経済産業省に入省し、社会人基礎力などの産業人材政策、アニメ・ゲームの海外展開、福島の復興、成長戦略の立案に従事。アニメ製作の現場から、仮設住宅まで駆け回る。現在は退官し、民間研究機関で次世代の若者のキャリアづくりを研究する。

変わる?学校から仕事への第一歩(第12回 スクール・トゥ・ワーク)

一般社団法人スクール・トゥ・ワークの設立を記念して、当団体の活動の目的と背景を知ってもらうために、当団体の代表理事の古屋さん、監事の小松さんと事務局スタッフで非大卒人材の奥間さんと、座談会形式で、「変わる?学校から仕事への第一歩」の連載をお送りしています。

前回 変わる?学校から仕事への第一歩(第11回 初任給の格差)

 小松
全12回にわたり「変わる?学校から仕事への第一歩」をお送りしてきましたが、読者の皆さんはお楽しみいただけたでしょうか?

最終回ですので、緩い座談会をさらに緩くして、お届けしましょうか(笑)。まずはお二人に座談会の感想をお伺いしましょうか?
 
奥間
僕は非大卒人材の当事者として座談会に参加させてもらいましたが、普段なかなか振り返ることがなかった学生時代や上京したてのときを振り返ることでき、また、専門家である古屋さんの意見や実際のデータを使って色んな角度から非大卒の課題を考えることができとても充実したものになったと思います。
 
古屋
非大卒、中でも高卒就職の分野について、これだけまとまった議論を、当事者を交えて行ったことは間違いなく日本史上初でしょう。教育の分野は、たとえ就職活動のような外部との関わりのある話であっても、当事者不在になりやすい傾向があります。その一点でとても楽しくお話させていただきました。ありがとうございました!
 
小松
そうですね。私もとても楽しかったです。お二人のお話もそれぞれ面白かったのですが、何と言っても、日常生活では見えていない話が満載だったように思います。
 

大卒と非大卒というコミュニティの「分断」

小松
アメリカがトランプ大統領になってから「分断」という言葉がやたら使われるようになった気がしますが、日本社会においても、大卒と非大卒には「分断」があるように思いますね。今回の座談会でいろいろなことをテーマに話をしてきましたが、この大卒と非大卒の「分断」という点は、お二人はどのように感じていますか?
 
古屋
この前、英国在住の友人と話をした際に、「EU離脱について、”こいつは何派”なんだ、と会話で探り合う雰囲気がある」と聞きました。隣人、同僚、友人知人。何派だから、という理由で会話ができなくなってしまうというのが最も恐れるべき「分断」です。

その分断はEU離脱後も治りがたい古傷として英国を苦しめることでしょう。コミュニティ同士が対立することで、イノベーションも健全な競争も生まれず社会は活力を急激に失ってしまいます。 幸運なことに日本社会は世界でも珍しいほど、安定した社会を継続できています。

新時代を迎える日本社会を分断するとすれば、「学歴」や「地方と都市部」といった現状すでに露呈しつつある要素です。学校-職業移行に良い変化を与えることで、少しでも分断された世界が交じり合うようにしていきたいですね。
 
小松
そうですね。日本は世界と比べると「分断」は極めて小さいように思います。とはいえ、今回の座談会を通じてみて、こんなにも非大卒人材について知らなかったのかと驚かされるばかりか、自分の判断基準は自分の属するコミュニティに引っ張られるなと思いました。

古屋さんのおっしゃるとおりで、スクール・トゥ・ワークの活動を通じて、分断を回避できるようにしたいですね。非大卒人材でもある奥間さんはいかがでしょうか?
 
奥間
正直なところ、僕はこれまではあまり学歴や環境による「分断」を意識したことがありませんでした。しかし、今回の座談会を通じて、自分の過去を振り返ったり統計データを見たりしたことで、「分断」されていたからこそそれに気づかず、気づかないからこそ分断の溝は深まっているのかなと感じました。
 
小松
おっしゃるとおりで、気づかない、知らないということは「分断」は進んでいるのかもしれませんね。そういった意味では、この対談は貴重な情報ソースになるかもしれません。

このシリーズを通して、ほんの少しだとは思いますが、学校関係者、行政担当者、企業の人事担当者や学者の皆さんなどに、新しい切り口を提供できたのではないかと思います。
 

若者へのキャリア教育はどうあるべきか

 小松
これらの現状を踏まえて、当団体の主な活動である若者へのキャリア教育はどうあるべきだと思いますか? 

古屋
私たちの最終目標は「18歳の進路選択をもっと面白くする」ことだと思っています。今の日本の大人は高校生大して偏差値ピラミッドを登るルートしか示すことができていません。

しかし、これだけ産業構造がめまぐるしく変化する時代、このルートを登ることの価値が大きく低下していることは明らかです。

私たちは高校生の段階で、身近なものごとから自分のしごと人生を考えてもらうことで、キャリアの最初の第一歩を踏み出すタイミングを早めようと思っています。

このタイミングが早ければ、今、登っているルートについて早く修正するチャンスがあり、失敗もできる。日本人は一度きりの人生を、もっと楽しくエキサイティングにできる、そのための早期選択を促すようなキャリア教育を行っていきたいですね。
 
小松
「18歳の進路選択をもっと面白くする」!ワクワクしますね(笑)。
 
奥間
そうですね。僕自身、少し前までは高校生として進路選択を迫られる立場でしたが、卒業が近くなって慌てて自分の進路を探し始めたけど、進学や就職に関する情報を全然持っていなくて、とりあえず先生や親に進められた企業に就職した後すぐに離職をしていく知人を何人も見ました。それこそ一度きりの人生なのにすごくもったいないなと思います。

古屋さんがおっしゃる「18歳の進路選択をもっと面白くする」ためにも、スクール・トゥ・ワークのキャリア教育は、一方通行で自己満足なだけの授業を行うのではなく、僕たち非大卒人材の当事者が講師として話し、一緒に考えることで早い段階で学生達のキャリアを意識するキッカケづくりの場であるべきだと考えています。
 
小松
当事者ならではのコメント。ありがとうございます。座談会でお送りしてきた非大卒、特に高校就職の問題ですが、時代の流れによる制度疲労が主な原因だと思います。

時代の流れが本当に早くなってると思います。そのため、日本全体、いやもしかしたら世界全体でも似たような制度疲労が頻発しているように思います。そんな時代の中では「昔から続いているから」という理由だけでは不十分で、未来のほうを向いて、自分たちの頭で考えることが求められていますね。

さて、長々とお送りしてきた座談会ですが、最後に、スクール・トゥ・ワークの代表理事である古屋さんにまとめていただきましょうかね。お願いします。
 
古屋
お二人ともありがとうございました!こんな話があります。2000年に日本人が「日本はもう成長できない」と愚痴ると、外国人から「まだ日本はカードを一枚残しているじゃないか。”女性”というカードを」と言われました。

2010年に日本人が愚痴ると、まわりから「シニアというカードを切っていないよ」と言われました。日本の就業社会は、まだもちろん課題は多いものの、この20年で女性・シニアという二大カードを切り、就業率が大幅に上昇しています。そしてこの4月からは”第三のカード”、外国人受け入れの大幅拡大も始まりましたね。

このように、これまで女性・シニア・外国人という切り札をどんどん切ってきた日本社会ですが、最後のカードが非大卒、特に年間20万人弱の高卒の就業者ではないかと思うのです。灯台下暗しで、私は日本の若者こそが日本の就業社会の「最後の埋蔵金」になりえると思っています。

そして、今のキャリアづくりは全然当たり前ではありません。今の常識は未来の非常識、私たちはもっと面白い社会を作れるはずです。一緒に取り組んでまいりましょう!ありがとうございました!

 

「変わる?学校から仕事への第一歩」連載シリーズ

第1回 はじめに
第2回 大卒人材と非大卒人材の分断 前編
    大卒人材と非大卒人材の分断 後編
第3回 高校生の就職制度
第4回 高卒の就職率
第5回 「七・五・三」現象
第6回 離職した若者はどこへ行くのか
第7回 現在のキャリア教育
第8回 ハローワークの役割
第9回 地域格差
第10回 就職先企業の規模
第11回 初任給の格差
第12回 スクール・トゥ・ワーク

変わる?学校から仕事への第一歩 (第11回 初任給の格差)

一般社団法人スクール・トゥ・ワークの設立を記念して、当団体の活動の目的と背景を知ってもらうために、当団体の代表理事の古屋さん、監事の小松さんと事務局スタッフで非大卒人材の奥間さんと、座談会形式で、「変わる?学校から仕事への第一歩」の連載をお送りしています。

前回 変わる?学校から仕事への第一歩(第10回 就職先企業の規模)

大卒・非大卒の新卒の初任給

 

同じ仕事でも初任給に差が…

小松
第11回のテーマは「初任給の格差」です。それこそアラフォーの私には、初任給は遠い昔の話のように思いますが、お二人はいかがでしょう?初任給で親孝行をしたり、何か買ったものがあったりとかありますか(笑)?

古屋
私も遠い昔ですが、最初のボーナスで母親にプレゼントを贈ったことを覚えていますね。学生時代はお金が無かったので、最初の給料は借金の返済にまわしました。

奥間
僕は初任給では、親に少しお金を送っていたくらいで、あとは生活や学生の時の教育ローンの返済に消えましたね。特に何かを買ったとかはないです。

小松
ありがとうございます。2人の初任給にはあまり感動のストーリーはありませんでしたね(笑)。さて、大卒と高卒では初任給はいかがでしょうか。古屋先生ご説明をお願いします。

古屋
一般に初任給は大卒の方が高いです。直近のデータでは大卒は20万6,700円、高校卒は16万5,100円となっています。ただ正直なところ研修等により新人時代は、学歴を問わず同じ事業所の同じ仕事をすることも多いため、その場合はこの差には合理的な理由はなくなります。

むしろこの差は「入職する企業の規模の差や業種の違い」が学歴ごとに大きく存在すること、によって生まれている面があるでしょう。高卒就職者のほうが中小企業への入職比率が高いのです。また、同様の傾向が男女の違いでも存在し、女性の方が初任給が低いですがこれも同じような理由によるのではないかと考えられます。

小松
同一労働同一賃金の概念からは程遠いですね。急に賃金体系は変えられないということかと思います。ちなみに地域差はいかがでしょうか?

古屋
確かに例えば最低賃金も県でかなり差がありますよね。沖縄と東京では、同じコンビニの仕事でも、沖縄が時給800円のところ東京は1,100円、という感じです。8時間のバイトで2,400円も差がつくわけですから大きい。

そして初任給ももちろん地域差は大きいです。沖縄の大卒は17万5,200円、東京の大卒は21万4,900円となっています。こんなに差があるんですね。

小松
凄いですね!私は東京でキャリアがはじまっているので、この地域差には驚いてしまいます。なかなか日本人だと給与の話はあけすけに話さないかもしれませんが、奥間さんは、地元の友人と話をするときに、給与の話になったりしますか?

奥間
地元の友人などとはよく給与の話になりますね。古屋さんのご説明どおりで、地方と東京では最低賃金も大きく差があり、特に沖縄はその中でも最低賃金が低いので、東京で働いている僕に対してすごく興味深々で給与の話を聞いてきます(笑)。

小松
やはり他人の給与は気になりますからね。
初任給のあるべき姿はどういうものなのでしょうか?やはり同一労働同一賃金ですか?

古屋
日本では企業内で学歴に応じた一律の初任給が一般的でしたがようやく変わりつつあります。分かりやすい例では、ITエンジニアなどのスキルを持った学生に対して初任給としては高額の、例えば1,000万円などの年収を提示する例が広く出てきています。

また、エリア総合職などの学歴の中で職種を細分化し、それに応じて初任給を細分化する会社も一般的になってきていますね。私は最終的には学生を一括りで採用するのではなく、ロング・インターンシップなどを経由して一人一人の学生を職種指定で採用し、その職種に応じた給与設定をするという職種別初任給が今後の一つの到達点なのではないかと思っています。

小松
そうですね。職種別初任給は凄い世界ですね!ますます若者たちはキャリアについて考えなければならないですね。私たちもキャリア教育を通じて若者を応援し、初任給の格差是正に貢献したいですね。

 

「変わる?学校から仕事への第一歩」連載シリーズ

第1回 はじめに
第2回 大卒人材と非大卒人材の分断 前編
    大卒人材と非大卒人材の分断 後編
第3回 高校生の就職制度
第4回 高卒の就職率
第5回 「七・五・三」現象
第6回 離職した若者はどこへ行くのか
第7回 現在のキャリア教育
第8回 ハローワークの役割
第9回 地域格差
第10回 就職先企業の規模
第11回 初任給の格差
第12回 スクール・トゥ・ワーク

非大卒人材のトリセツ(第3回 非大卒人材の育成方法 前編)

「非大卒人材のトリセツ」の第3回は、「非大卒人材の育成方法」について記載したいと思います。少し長くなってしまったので、総論・各論に分けて、前編・後編でお送りします。

前回 非大卒人材のトリセツ(第2回 非大卒人材の可能性)

前回の「非大卒人材の可能性」では、1.若さ ~ 若者の4年間を有効活用できる ~、2.柔軟な対応力を長所として挙げさせてもらいました。また、「長所は短所の裏返し」とも言われるように、これらの長所の裏返しとして、非大卒人材の短所でもある知識不足についても指摘させてもらいました。

これらについては、会社の経営者や人事部の方からすれば、非大卒人材に関わらず、学歴は関係なく若手社員全般の特徴と似ていると感じた方も多いのではないかと思います。私も同様に感じていて、非大卒人材の場合は、大卒人材と比較して、その程度が大きい・激しいだけだと考えています。そのため、ますます就職した会社の育成方法が重要になってくると思います。

私が経営する経営コンサルティング会社のスーツ社では、高卒人材2名を採用しています。今回はスーツ社において、どのように彼らを育成しているのかをご紹介したいと思います。なお、初回に記載したとおり、 “たった2年”、“たったの2名”の採用・育成の経験でしかありませんので、その点についてご留意・ご理解いただければと存じます。

1.正しい現状認識

スーツ社の非大卒人材の育成で1番気を付けている点は、正しい現状認識をさせることです。

私は、非大卒人材に限らず、若手社員は、皆やる気にあふれて会社に就職してくると考えています。しかし、時間の経過とともに、どうしても自分の仕事や職場環境を客観視することができなくなってしまい、入社時には充実していたやる気の低下とともに、若手社員の多くが、会社の文化に必要以上に染まりすぎてしまう、「自分は悪くない。悪いのは上司や会社!」など被害者意識を持ってしまう、自らの可能性に自分で限界を設定してしまうなど、個人の主体性が乏しくなってしまうと考えています。

しかし、正しい現状認識があって、やる気さえあれば、主体性を失うこともありませんし、可能性は無限大に拡がります。

特に非大卒人材は、大卒人材以上に多様なバックグラウンドを持ち、教育年数も短いため一般に知識量が不足しており、スポンジのように吸収するかわりに、染まりやすい特徴があります。また、知識不足から視野も狭くなりがちであり、大人社会と接する機会の少なさから視点も低いため、とにかく客観性を持たせなければなりません。

スーツ社の場合は経営コンサルティング会社のため、非大卒人材の彼ら二人も、日常の業務においては、クライアント企業の社長にアドバイスをする立場にあり、公認会計士や弁護士などの専門家、金融機関・投資家や大企業の幹部と打ち合わせをすることも多々あります。

こういった日常業務を客観的に捉えさせることで、自分の置かれている状況を把握できるように促すのです。ビジネススキルが足りているか、仕事に対するプロフェッショナリズムはあるか、自己成長の定義ができているか、社会性の獲得はできているかなど様々な点を多角的に考えさせるのです。

スーツ社では、この客観性を担保するために、異業種交流会やベンチャー交流会などへの参加を積極的に奨励しています。彼らが人的ネットワークを築くという目的もありますが、何よりも自分の仕事や職場環境を客観視してもらいたいと考えています。

また、自分の比較の対象を、同年代のトップ層に置くように助言をしています。例えば、彼らの年齢ではまだ公認会計士や弁護士の有資格者はいませんので、難関資格の取得を目指している受験生たちの努力などと比較するようにさせています。

2.ポジティブな職業観の確立

スーツ社の非大卒人材の育成で2番目に気を付けている点は、以下のようなポジティブな職業観の確立です。

これは当団体の問題意識でもありますが、非大卒人材の多くの職業観は、学生時代のアルバイトの延長線上にあることが多いと考えています。つまりは、労働の対価という報酬を得るために、決して面白いとは思えない労働をして、自分の時間を切り売りするというような職業観です。

この非大卒人材の多くが持っている職業観を、大きく2つ変えなければならないと考えています。仕事そのものの捉え方を、ネガティブからポジティブに変化させなければなりません。

まず、仕事は生活のためにやむなくする「労働」ではなく、仕事は、他者や社会に貢献することができ、自己実現することができる、なおかつ、報酬までもらうことができる「仕事」であるという考えを知ってもらう必要があると考えています。

次に、近視眼的な考えを変えさせなければなりません。彼らには投資の概念を教える必要があると考えています。投資の概念とは、時間とお金を投資して、お金や幸せなどのリターンを極大化するという考え方です。人生100年時代において、20歳の若者は、少なくとも50年は働く可能性が高いと言われています。それならば、とにかく早いうちに、自己のスキルアップを図って、労働生産性を高めたほうが、仕事も楽しくできるし、報酬も高くもらえる可能性が高いのではないかという事実を教えます。では、どのように自己のスキルアップをするか。それは時間をかけて、本を買って勉強したり、お金をかけて、学校に通ったりすることで、スキルアップすることができることを教えます。

非大卒人材の職業観を、「労働」から「仕事」へ変化させ、そして、1時間あたりの「労働」からそれこそ50年あたりの「仕事」へ変化させて、ネガティブからポジティブに変えることが必要だと思います。

 
小松 裕介
プロ経営者 株式会社スーツ 代表取締役
2013年3月に、新卒で入社したソーシャル・エコロジー・プロジェクト株式会社(現社名:伊豆シャボテンリゾート株式会社、JASDAQ上場企業)の代表取締役社長に就任。同社を7年ぶりの黒字化に導く。2014年12月に株式会社スーツ設立と同時に代表取締役に就任。2016年4月より、総務省地域力創造アドバイザー及び内閣官房地域活性化伝道師登録。
2018年9月に一般社団法人スクール・トゥ・ワーク設立と同時に監事に就任。

 

「非大卒人材のトリセツ」連載シリーズ

第1回 はじめに
第2回 非大卒人材の可能性
第3回 非大卒人材の育成方法 前編

変わる?学校から仕事への第一歩(第10回 就職先企業の規模)

一般社団法人スクール・トゥ・ワークの設立を記念して、当団体の活動の目的と背景を知ってもらうために、当団体の代表理事の古屋さん、監事の小松さんと事務局スタッフで非大卒人材の奥間さんと、座談会形式で、「変わる?学校から仕事への第一歩」の連載をお送りしています。

前回 変わる?学校から仕事への第一歩 (第9回 地域格差)

高卒・大卒の大手企業就職者の離職率

就職先企業の規模

小松
あっという間に第10回になってしまいました。それにしても、いろいろな論点がありますね。第10回のテーマは「就職先企業の規模」です。規模といっても、売上規模と社員数などいろいろありますが、まず、いわゆる大企業、中小企業などの定義を教えてもらいましょうか?
 
古屋
小松さんのお話のとおり、実は統一された定義はありませんが、一般的には従業員規模で考えられることが多いようです。100人以上、もしくは300人以上を大企業とする場合が多いですね。個人的には5,000人以上企業の採用や育成行動が顕著に異なる場合が多いので「超大手企業」と言ったりしています。
 
小松
そうなんですね。スーツ社は10人以下ですし、私が社長をしていた上場会社ですら正社員は120名程度でしたから、大企業はやはり大きいですね!大卒や高卒の就職活動においては、就職先の規模について差はあるのでしょうか?
 
古屋
実は極めて大きな差があります。大卒者で1,000人以上の事業所に入社する人は32.5%、一方で高卒では17.8%とほぼ半減します。この差をどう考えるかです。なぜ高卒の方が小規模な会社に就職する傾向が強いのか。

また、大企業では早期離職者は少ない傾向にありますから、私は「高卒者が離職率が高い」という現象は、実は「高卒者は小さな会社への入職者が多い」ことでしかないのではないか、と思っています。
 
小松
それは逆かもしれませんよ。高卒者の多くは、「小さな会社への就職の選択肢しかない」ということかもしれませんね。本シリーズでも話をしてきましたが、地域を移動して就職する人は18.8%しかいないわけですから、大企業の多くが東京に集中しているからという理由もあるかもしれません。

ちなみに、奥間さんは、なぜ中小企業のスーツ社に就職されたのでしょうか?就職活動の際に、会社の規模はどのように考えていましたか?
 
奥間
僕が就職先を探していた時は会社の規模についてはあまり考えたことがありませんでしたが、小規模の会社のほうが厳しい環境に身をおけるように感じていて魅力的には感じていました。

ただ、大企業という選択肢がそもそもなかったのは事実かもしれません。誰もが知っているような大企業は大学卒業が最低ラインでしか入れないものだと思っていました。
 
小松
厳しい環境に身を置きたいとは、なかなか意識高い系な回答ですね(笑)。
 
奥間
元がのんびりとした性格なので環境を変える必要があると思ってです(笑)。
 
小松
奥間さんの学生時代の友人は大企業に行った方はいらっしゃいますか?
 
奥間
学生時代の友人では、多くはないですが大企業で働いている人も何名かいます。知っている限りでは地元沖縄の大企業などがほとんどです。
 
小松
その方たちは17.8%の中の人たちですね。基本的には、高卒就職においても、大企業を希望する人が多かったですか?
 
奥間
多かったですね。やはり誰もが名前を聞いたことあるような会社の方が家族も周りの人も安心してくれるし、小さい会社に比べて給与や労働環境も高水準で安定しているというイメージが強かったので、就職できるのであれば大企業へ行きたいという人が多かった印象です。
 
小松
そこはやはり大卒と同じですね。大企業や中小企業の特徴などは就職する際に教えてもらえるものなのでしょうか?
 
古屋
現在の学生さんの大企業志向は各種データから明らかですし、大学や高校のキャリアセンター・進路指導でも、実績作りにもなる大企業や有名企業を勧める傾向が一般的にあると聞いています。

この会社に行けと先生に「はめ込まれた」と、とある高校卒の方は言っていました。ただ、大企業と中小企業の違いというよりは、もっと基礎的な働くことに対する準備ができていない、というのが実態ではないでしょうか。
 
小松
本人の希望を超えて、先生に「はめ込まれた」となるとなかなか問題ですね(苦笑)。大企業や中小企業の長所・短所は、それこそ社会人でそこそこの年齢になっても判断がつきませんし、それこそ人それぞれ、会社も様々といったように思います。

そのように考えると、おっしゃるとおり、もっと基礎的な働くことに対する準備や、私たちが繰り返し言っているキャリア教育をしっかりしなければならないというような話になりそうですね!

 

「変わる?学校から仕事への第一歩」連載シリーズ

第1回 はじめに
第2回 大卒人材と非大卒人材の分断 前編
    大卒人材と非大卒人材の分断 後編
第3回 高校生の就職制度
第4回 高卒の就職率
第5回 「七・五・三」現象
第6回 離職した若者はどこへ行くのか
第7回 現在のキャリア教育
第8回 ハローワークの役割
第9回 地域格差
第10回 就職先企業の規模
第11回 初任給の格差
第12回 スクール・トゥ・ワーク

変わる?学校から仕事への第一歩 (第9回 地域格差)

一般社団法人スクール・トゥ・ワークの設立を記念して、当団体の活動の目的と背景を知ってもらうために、当団体の代表理事の古屋さん、監事の小松さんと事務局スタッフで非大卒人材の奥間さんと、座談会形式で、「変わる?学校から仕事への第一歩」の連載をお送りしています。

前回 変わる学校から仕事への第一歩(第8回 ハローワークの役割)

就職活動における「地域格差

小松
第9回のテーマは「地域格差」です。古屋さんは岐阜県出身、奥間さんは沖縄県出身ですが、地域格差についてはどのようにお考えですか?

奥間
そうですね。地域格差の中でも僕が一番実感しているのは情報格差ですね。特に地方と都市部の間での差はかなり深刻だと思っていて、上京する前と今では、普通に生活しているだけでも情報量の差を感じています。そのため非大卒の就職活動においても大きな情報格差があると思っています。

小松
面白いですね。これだけメディアが発達して、インターネットの時代になっても、地域によって未だに情報格差があるのは意外です。

古屋
人はみな何かのコミュニティに所属していますよね。その中で情報を交換して自身の知識や経験を蓄積していくわけです。コミュニティが違えば、得られる知識や知識を得るきっかけも異なります。

特に「きっかけとなるような出会いのちょっとした差」が、インターネットの時代になったことによってその後とてつもなく大きな差になることもあります。実はネットの発達によって、情報格差、知識格差は広がり易くなったといえるのではないでしょうか。

人口が密集し経済活動も活発な都市部のコミュニティには、博物館や科学館、仕事体験を提供するようなイベント、面白い働き方をする大人、見た目も考え方も違う外国人などなどと触れあう可能性のある「子ども」も「大人」もいます。

きっかけを生み出す情報の化学反応の比は地方とは比べものになりません。私も岐阜県出身ですが、振り返えると今のキャリアがあるのは、小学5年生で入った補習塾に、たまたまいた東京帰りの先生の一言がきっかけでした。

この一言がなかったら間違いなくいまここにおりませんから、ちょっとしたきっかけが生み出すキャリア、そして、そのきっかけを生み出すコミュニティの重要性を痛感します。

小松
ちなみに、東京帰りの先生が古屋さんに言った一言って何ですか?

古屋
「君は才能があるから、もっとすごい塾にいったら、もっとモテるかもよ」みたいな感じで言われました(笑)。

小松
なんか軽いですね(笑)。話を戻すと、「たまたまいた」これは重要なワードですね。キャリアは「たまたま」で変わる。あと、おっしゃるとおりかもしれませんね。インターネットの登場によって、格差は広がっているかもしれません。

さて、いつもと同じように、非大卒人材のキャリアという観点に絞って、地域格差について教えてもらいましょう。古屋先生、お願いします(笑)!

古屋
85%の高校生が県内に就職している。これが意味するのは、ほとんどの高校生が「生まれた県の産業構造によって職業人生が左右されている」という事実です。

さて、私の地元の岐阜県は、お隣愛知県に世界的な自動車企業があることもあって、製造業が強い地域です。しかし日本にはこうした根強い産業基盤を持たない地域もあります。企業の選択肢もぐっと狭まります。

その選択肢の狭さが、生まれた場所によって決まってしまうのです。人生100年時代やSociety5.0の時代に、地域の格差をそのまま21世紀を生きる生徒に背負わせるような仕組み。本当にこのままで良いのでしょうか。

小松
85%が県内で就職は驚きですね。私は普段は経営コンサルタントをしていますが、やはりヒト・モノ・カネと同列で語られますが、ヒトは圧倒的に動かない(笑)。人は土地に縛られる。これが動かしがたい事実だと思います。

資料を見ると、九州の各県の県外の就職が高いようですが、これは福岡に行ってるんですかね?同じく、東北は仙台ですかね?

古屋
そうですね、エリア内移動ですね。キャリア教育研究家の橋本さんもおっしゃっていますが、九州・東北は福岡・仙台まで移動することは比較的多いようです。

小松
なぜ地域にみんな留まるのでしょうか?理由に関する調査などはあるのでしょうか?

古屋
高卒者に対するまとまった就職意向調査は行われていませんが、選択肢がそもそもないですので出ようがないということだと思います。ファイルに閉じられた10数枚の求人票から選ぶ、という世界ですので。

小松
たしかにそうですね。東京にいると日本の中心があたかも東京にあるように考えてしまいますが、本来あるべき姿は、地元かもしれません。もし若者たちの目の前に選択肢がたくさんあることが顕在化したら、地元から出ていくようになるのでしょうかね?

古屋
たしかに顕在化されれば地元から出る若者は増えると思います。目の前の選択肢が増えるということは、例えば、何もやりたいことがなくとりあえず就職していく人も、就職活動の中で聞いたこともなかった仕事を知ったり、興味を持つ機会が増えたりします。

やはり都心にはたくさんの仕事が集まっているので自然と県外就職も増えるのではないかと思います。

小松
逆にもしかすると、案外、地元の良さも考え直すかもしれませんね。選択肢がちゃんとあって、それぞれがキャリアについて真剣に考えることは、地方と都市部について考えることにも繋がるかもしれません。

教育であったり行政であったりは、就職活動において地域間の移動が少ない点について、何か問題意識は持っているのでしょうか?

古屋
実は、なかなか悩ましい問題です。地方創生という政策キャンペーンがあります。これは東京一極集中状態から人材面でも脱却をはかろうということで、UターンやIターンを推進しています。その意味では地方からの人材移動の逆のような政策とも言えます。

ただ、私は一度若者が情報も人も企業も多い都会に出ること、そしてその若者がノウハウやネットワークを地元に持ち帰ることこそが真の地方創生に繋がると思っています。欧州のサッカーチームに行った日本人選手が日本のチームに戻ってきてそのチームを盛り上げるように、です。

小松
確かに人材の流動性が高まることで、情報の偏在もなくなりますし、新しいコラボレーションも生まれます。最終的に都市部に出て就職するかどうかはどうあれ、少なくとも就職活動の選択肢に、地域を越えた選択肢も考えてもらいたいですね!

 

「変わる?学校から仕事への第一歩」連載シリーズ

第1回 はじめに
第2回 大卒人材と非大卒人材の分断 前編
    大卒人材と非大卒人材の分断 後編
第3回 高校生の就職制度
第4回 高卒の就職率
第5回 「七・五・三」現象
第6回 離職した若者はどこへ行くのか
第7回 現在のキャリア教育
第8回 ハローワークの役割
第9回 地域格差
第10回 就職先企業の規模
第11回 初任給の格差
第12回 スクール・トゥ・ワーク