2020年代の若者キャリアはどうなっていくのか。今回は、高校新卒求人サイト「ジョブドラフト」を運営する株式会社ジンジブをグループ会社に持つ株式会社人と未来グループの佐々木満秀さんと対談します。

前回 2020’sの若者キャリア論(その1) 佐々木満秀(人と未来グループ代表取締役)×古屋星斗(スクール・トゥ・ワーク代表理事)

 

古屋
私が高校生の就職について一番問題だと思っているのは、ルールの決め方なんです。毎回議事録も作らずに、高校生の就活ルールについて密室で議論してるんですよ。

ご丁寧にも入り口には「この会議は非公開です」と書いてあり、理由は「社会に対する影響が大き過ぎる内容なので、いろんな人が来ると困るから。」という。さすがにその理由はないんじゃないかと思いますよね。

話を戻しますが、大卒と高卒の就職の最大の違いは、大学生はいろんな会社を見ることで、自分の中で仕事とは何だろうと考える時間があるかないかです。最近はロングインターンも流行ってますが、大学生でも意識の高い一部の学生以外はほとんど遊んでいるだけで、職業観は一切ないと思います。

そのような大学生が就活を経ると、多少ですが、仕事は何のためにするのかを考えるようになります。就活では「軸」と言う言葉がよく使われますが、一応は納得して就職していきます。高校生にはこれすらありません。

先ほどおっしゃったように、失敗は自分に跳ね返ってきますが、自分のキャリアの中で、「若い頃の失敗は成功するためにある」と思うんですよね。ほとんど“成功”ですよね、若いころ失敗したということは。

まさに社長がそうだったと思うのですが、失敗したことで人間が太くなっていくと思います。就職活動もそうした機会ですが、高校生にはそれが無いように思います。職業観がないまま就職はするが、早期離職し、辞めた後にはどうするのというような状態に陥っています。

オープンな就職が広まっていくことで、自分の社会での役割はなんだろうとか、仕事は食うため以外に意味があるのか、家族ができたらどうしようなどいろいろ考えて、仕事に対しての思いが変わると思います。

佐々木
情報を開示してもらい、ルールを決めている人たちだけではなくて、当事者である高校生や企業側が考えるキッカケになったらいいなと思います。
日本の制度・ルール全体を決める人たちの大半が大卒なので。

古屋
おっしゃるとおり。それが最大の問題ですね。

佐々木
以前、政治家の方にご意見をお伺いしたのですが、「あ、そうなの?そんなふうになっているの?」と言われました。

古屋
政治家の方でもそのような認識なんですね。

佐々木
当然賢い方なので、「その仕組みで高校生が守られてるんではないか?」と言われて、「そうです。守られているんです。」と答えました。守られてるからいい側面もたくさんあるんですが、情報が止められないこの社会において、このルールはどうでしょうと。

昔みたいにネット社会になってないときには、良き側面もあったわけですが、大きなミスマッチの要因はそこです。これから大学は全入制になっていきますが、それでも高卒で働く方が20%はいるので、この方たちにもっとチャンスを与えていかないといけないなと思います。今、外国人の採用ばかりに目を向けてる場合じゃないでしょうと。

古屋
全くそのとおりです。

佐々木
これからの日本は、「バカ」をやっていかないと変わらないと思っています。
労働人口は減少してマーケットも縮小しますし、全体的に何か「バカ」なことをやっていかないと思います。「バカ」という言い方も変なんですが、今までの正解・不正解の正解ばかりを選択していくと、イノベーションは起きません。

みんなはイノベーションを起こさなければならないと言われるのですが、イノベーションはある意味「バカ」だと思うので、これをやれるのを高卒に期待しているのが、僕の正直な意見です。

大学生はどうしても守りに入ります。「俺は早稲田までいってるのに…」と早稲田の学生が言ってるんです。
例えば、とあるジンジブという会社に就職するということなどはできないんです。親にも絶対反対されますし。

イノベーションを起こそうと思ったら、新たなベンチャーをどんどん起こさなければならないし、新たなサービスや商品を見出さないといけないわけです。僕らみたいな人間が高卒就職の民間斡旋をやろうとしているのも、僕らが「バカ」だからだと思ってるんです。賢い人はぜったいやらない(笑)。

古屋
そうですね。

佐々木
やれないんですよね。収支も見えないし、マーケットも見えないので。
だから、賢い人たちはやれないんです。

経済が勝手に成長する時代は守りも必要ですが、もはや、縮小が確実に見えてますので、それなら「バカ」なやつがいっぱい「バカ」なことをしだして、そこで失敗してもいいし、挑戦していかないといけません。

うちの理念は、「挑戦と創造」なんですが、こういう会社がたくさんでてきたら、マーケットとの逆行期待が生まれると思うんです。今、国民は将来に対する期待はほぼ無いので。

古屋
若い人は特にそうですよね。6割は希望がないと言っています。

佐々木
私は違うと思うんです。「社会に希望がない」んじゃない。希望や期待がない社会で、挑戦するしかない、創造するしかない、そのためにイノベーションを起こせと有識者や賢い方は言われるのですが、「じゃあ、自分がやれよ」と思いますね。だけど、これができていないんです。

イノベーションが起こせないといえば製造業の雇用。これまでの日本では製造大国日本、というのが神話になってきていたし、製造という領域自体が日本の価値でした。今は完全に逆転されていますよね。製造からデータの領域になってしまって、これからはITの領域でどう勝つかという時代に入っているのに、目先の雇用だけを考えたときに製造領域の神話を手離せないんでしょうね。

古屋
就職先でいうと、現在でも高校生の4割は製造に就職しています。
あまりにもいびつですよね。大学生は1割なんですよ。

佐々木
大学生は企業の将来を考えられますからね。

古屋
そうなんです。この差をどう説明するかなんです。
1970年と同じ古いやり方をやってるから、同じマッチング先になっているだけなんです。

佐々木
それを幸せだと思っているからですよね。

古屋
本当は進路はもっと他にあるはずなんです。
情報通信とかサービス業など、いろいろあるはずなんですが、そこに学校が入ってガッチリやって90%近い生徒が学校経由で就職活動するんで、結果、製造業に流れているという流れです。

おっしゃるとおり、今の日本は外国人を入れるほど逼迫してるわけです。外国人を入れるという決断をしたわけです。しかし日本の中にも、もっと活躍できる人はいるんじゃないかと思います。
そういう活躍できる高校生が4割も製造業でいいのかと思いました。

自分でいろいろな求人を見たいという生徒にとっては、そこを見ることによって「自分の世界はこんなに広いんだ」ということに気づくきっかけになるんです。

佐々木
それがほんとに大事ですね。