2020’sの若者キャリア論(その4) 佐々木満秀(人と未来グループ 代表取締役)×古屋星斗(スクール・トゥ・ワーク 代表理事)

2020年代の若者キャリアはどうなっていくのか。今回は、高校新卒求人サイト「ジョブドラフト」を運営する株式会社ジンジブをグループ会社に持つ株式会社人と未来グループの佐々木満秀さんと対談します。

前回 2020’sの若者キャリア論(その3) 佐々木満秀(人と未来グループ 代表取締役)×古屋星斗(スクール・トゥ・ワーク 代表理事)

佐々木
学校に通っているうちは価値観を作るのは先生か親しかおらず、会社に入ってからは上司から会社の価値観を伝えていきます。客観的に人生観、職業観などを育てるための大学を作りたいんですが、古屋さんのような客観的な立場で、いろんな職業観を研究している方に、お話していただきたいです。固定観念や今までの社会の流れを単純に考えるだけじゃなくて、挑戦しないといけない社会になることは間違いありません。今の選択が成功か失敗か決まるのは今ではなく、最終的には自分の人生の終着点までに決まっていくものです。今は、「失敗の人生」と思わずに、大手企業、ブラック企業に入ることには否定しませんが、賢い方は賢いなりに挑戦をして、バカやからと諦めずに頑張っていって欲しいです。

勉強する機会をしっかり与えてあげて。僕もマネージャをやっていた時に、高卒である自分の知識差を痛感したことがありました。24歳で営業所長やってたんですが、今もバカなんですけど、その時はもっとバカだったんですよ。

自分で通信大学を申し込みました。経営者になりたかったので、「経営者になるために無知はあかんな」と。産能短期大学の経営学部という通信講座があって、100万くらいかかるんですが、日中は仕事、夜は勉強と続けました。マネジメント、心理学、営業、組織論、リーダーシップ、財務含めて、3年間くらい自分でやって、ようやく人並みになれたかなというのが27歳くらいでした。経営者と話ができるレベルになりました。

起業した時は、賢いとは思ってないですが人並みに経営のことはわかってるなと自信を持てたんです。あとは営業活動だけだったので。

困ったことはたくさんありましたけど、そういうことをもっとしたいなと思っています。

今、大学で目的もなく奨学金を半分くらい借りてきて、4年間で何を学んだかというのが残っておらず、大学時代の経験しか残っていなくてという方は、18歳くらいから昼間は稼ぎながら、勉強したい人は夜間で勉強してやっていくと、25歳くらいには家庭をもてる経済力がつきます。少子高齢化改善にも繋がります。自分一人でいたい人は生きていったらいいし、結婚したい人は、できるという自信が持てるようになってから、と。

そういうのができたらいいなというのが、日本の問題も含めて、全体的な僕の感覚なんです。

古屋
大学で学べることがないという問題意識が学校にもあります。専門職大学という来年からできる学校なので、2校しかないんですが、そのうちのひとつの専門職大学で、非常勤の客員講師をやることになっています。そこは大学なので昼間にやる学校ですが、非常に面白いことを言ってます。株式会社を大学の中に作って、学生に投資をする。起業したら単位をやるというしくみにすると言っています。イメージとしては、法人登記したら2単位、IPOしたら卒業という。おそらく文科省がノーと言うので無理なんですが(笑)、そういう思想なんです。

非常に面白いと思ったので客員の話を受けたんです。実務家教員を5割入れて、生徒数が学年200人で教員数300人と逆転してます。200人くらい実務家教員が入ってるので、実務を教えられる重厚な教育体制になっています。そういう大学がちらほら出てきつつあります。

しかし、そこはいわゆる4年制大学で、昼間に子どもが行く、稼いでいない人が行く大学なので、さらにもう一歩踏み込んで、18歳で挑戦的な進路を選んだ方々が、自分に足りないものを痛感したうえで通うような学校が、社会に必要だと思います。今は放送大学、産能大学さんしかないんですが。

若い高卒就職をした方で、大学には行きたくないが、大学院には行きたいという人がいます。なぜかと聞くと大学は遊ぶところだけど大学院は学ぶところだからと。

そういうコンセプトでそういう高卒の方が入れるような学校があったら、面白いんじゃないかなと。学位はいらなくて。

佐々木
僕が親やったら、それやったら行けと言います。

古屋
一言で言えば、現場で働いていていらっしゃる方の大学に対するイメージが悪すぎるんです。

佐々木
本気で勉強したいやつは、やらないといけないですが、今の大学入学のやり方で普通にいくというのは、賛成できません。

古屋
私も教育社会学を学ぶために大学院まで通っているので、自分のことを棚に上げて言っていますが(笑)。

佐々木
僕の考え方が良いか悪いかは別にして、結局は行動に起こさなければならないんです。百の理屈より一の行動です。結果を作らなければ世の中の悪になってしまいます。

これは経営者としても心掛けていることですが、会社の価値観や理想を掲げ、これで赤字を作り続けるのは悪だと思ってます。

今日意見を伺わせていただいて、良い味方というか同志のような感じがして嬉しいですが、本当に学校を作らなければならないと思っています。本当にこの社会を変えるようなしくみを、行動と習慣を作らないといけない。命懸けてもいいと思っています。

企業側は、企業弱者と言われるような中小企業はこれから採用で困るんじゃないか な。99.7%は中小企業ですので。

中小企業の中にも、もっと良い技術やサービスや商品を生み出す企業はいっぱいあるのですが、人材の問題が一番課題なんです。日本の民間企業でも人材支援をしている会社がありますが、それらの企業のターゲットは全部金持ち企業じゃないですか。

古屋
そうです、全部金持ちです。単価が高いので。

佐々木
僕は地方、中小企業などに高卒人材を本当に届けるのなら、馬鹿だけれど可能性があるやつらを、もっと地域や中小企業に送り出さないといけない。これが課題だったんです。

うちも20年培ってきた資産があるので。実はこう見えて僕の自慢は、「やるというものは絶対にやる」ことです。帝国データバンクってあるじゃないですか。あれで日本一の中小企業に絶対なるということだったんです。

一応日本一にはなったんです。7年前にスコアが75になり、純資産がたくさんあったんです。自己資本比率が85%までいき、無借金でずっとやってました。超優良企業だったんです。絶対に潰れないと言われました。

古屋
潰れようがないでしょうね。

佐々木
3年間売り上げ0円でも潰れないような感覚です。

そうなったのをどうしようかな、と考えたのが7年くらい前です。社会のためにもっとやりたいということをだいぶ本気で考え出して、社員のためも本当に考え出して、僕が100%オーナーの会社なので。

古屋
勝ち逃げですね。

佐々木
そう、勝ち逃げ。僕は中小企業で、二極化のどちらかというと負け組と言っていいのか分かりませんが、こちら側の人や企業や地域の支援ができるような人材ビジネスをやらなくてはいけないと思っていたところに高卒人材があったのです。

彼らが挑戦できたり、希望が持てたり、企業が人にもっとモテるビジネスになるためにはということで、この事業を始めました。これを成功させて学校をつくったり、そのための課題は収益性なので、それが今の悩みなんです。ビジョンの達成のためにはお金はやはりいるので。お金の重要性はやはり感じるじゃないですか。

古屋
そうですね、やはり持続可能にするためには。

佐々木
そうです。それがやはり民間企業の最も大きな課題なので。

古屋
マーケットを作らなくてはいけないという、フロントランナーの悩みですよね。本当に最初は儲からないという話は、この業界だけではなくて人材業界全体でよく聞きます。マーケットを作らないといけないですよね。

100億円のマーケットに飛び込んでシェアを20%取るという世界ではないじゃないですか。

佐々木
そうなんです。それがパイオニアの使命です。

古屋
私もマーケット拡大に少し貢献できるかと。

佐々木
本当によろしくお願いします。学校を作れた暁には、講師でぜひよろしくお願いします。

古屋
ぜひ貢献させていただきたいです。

佐々木
こういう方がいるのが、僕の救いなんです。

古屋
私もいろいろな方から言われますが、こういう領域に興味を持ったのはなぜかと来歴的に聞かれることがあります。自分自身でも、なぜなのか良くわからなくなっていますが(笑)、やはり翻ってみると、自分は岐阜県の片田舎の出身で、小学校の同級生たちと自分との生活環境の違い、今後に対しての話の合わなさとか、全然違ってしまっているんです。子どもの年齢が10歳違うとか。

子どもの頃はやはりそんなことは考えもしていませんでした。どこでこんなに違ってしまったのかと思ってます。

佐々木
僕もまさにそうです。家が貧乏で、大学どころか高校すら行くか行かないか議論されていたので、中卒で働くかどうかみたいな。

古屋
先ほどおっしゃったように、この問題を議論する人間は全員大卒なんですよね。1つの世界でしか過ごしてきていないような方々です。大学生のときに就活すらしていないかもしれません。こういう方と話をしていかないといけないなと。

2020’sの若者キャリア論(その3) 佐々木満秀(人と未来グループ代表取締役)×古屋星斗(スクール・トゥ・ワーク代表理事)

2020年代の若者キャリアはどうなっていくのか。今回は、高校新卒求人サイト「ジョブドラフト」を運営する株式会社ジンジブをグループ会社に持つ株式会社人と未来グループの佐々木満秀さんと対談します。

前回 2020’sの若者キャリア論(その2) 佐々木満秀(人と未来グループ代表取締役)×古屋星斗(スクール・トゥ・ワーク代表理事)

 

古屋
高校生の方で、一度正社員の職に就いて辞めた後に非正規社員になっているんです。全てが悪いとは言いませんが、先ほど、修羅場を積むべきだ、若いうちはブラック企業で頑張るべきとお話がありましたが、中には安易な気持ちで、楽な方に楽な方にと、仕事を選んでしまっています。

私は専門が20代の若い人のキャリアの研究で、大卒・非大卒を問わずいろんな方にインタビューしたうえで研究していますが、メディアの取材を受けた時に、高卒の話になるとキャリアが不安定だというところに行きがちです。

例えば、ご存知だと思うんですが、愛知県は数年前に歴史上まれにみる若者不足となったことがありまして、大型商業施設を作った時に300人くらいアルバイトが必要だったんですが、全然採れなくて、時給が急激に高騰していたそうです。理由は当時製造業の景気が良すぎるので、傘下の部品企業含めみんな高校生を採用してるんです。その中で期間工が多いんです。期間工は稼げるんです。単発の半年契約で200万円以上稼げます。

佐々木
僕もやってましたから。僕は別のメーカーでしたが(笑)。

古屋
釈迦に説法になりますが、そういう仕事があるのでみんな期間工になってしまうんですが、それはずっと続けられるわけではないんです。

若者の力をどこに活かすか、という点では大学全入の時代で、大学に若者をどんどん吸い上げないといけないという大学側の意見があるじゃないですか。大学側も経営なので。

就職とゼロサムの状態になっているんですよね。120万人いる高校生を大学か企業のどちらに送り込むかという。

佐々木
そういうことです。

奨学金を借りて、大学にわざわざ行って、遊ぶだけで終わる4年間に気づかせようと思ってるんです、僕は。

僕の子どもも大学へは行っていないんです。大学はお金があれば行けますし、国公立なら行ってもいいかと思っていました。本気で勉強してその道に行きたいんだったら行け、中途半端には行くなと言っていたんです。別に奨学金を借りなくても、金は出してやるから。でも、本気でいく意味を持たないんだったら行くな、働けと。

少子化問題も含めて日本全体の大きな課題には、人口減少が全ての根底にありますので、どちらかというと大学全入制時代の施策も反対派なんです。学校を作ろうと思ってるんです。これから本当の意味で必要とされるスキル、AIとか、そういう軸をドーンと展開して、昼間は働きながら、職業観を育てながら、大学行くのは夜でもいい。30代40代になった時に家庭も持って、職業としての未来もあって、という社会を作らないと日本は人口減少が改善されません。今のまま行ってしまうと、少子高齢化は改善されないですよ。この社会の中では。

だから、高卒を推したいんです。

人の生き方は多様化しているので、結婚するかどうかは何が良い悪いではないんですが、晩婚化と少子高齢化が進む根底の要因は、未来に対する希望や期待だと思います。賢くなればなるほどそこを考え、考えれば考えるほど結婚しにくくなります。

古屋
私は、本業で若い人の研究をしてますが、就活前後の女性の話をすると、育休を採りやすい会社に就職したいというのが多いです。これが大きな間違いじゃないかと思っています。

女性はリアルに考えているのはそうだと思います。慶応や上智のような優秀な大学の女子学生さんが、一般職で就職していくのは、そういうリアル思考なんです。育休取った後働きやすいですし。

僕は逆だと思っていて、女性ほどスキルを一定の時期までに身に着けることが、その後の活躍、生き生きと働けるかどうかに結びついているんじゃないかと。

大企業だと、育休を取った後に仕事の質が変わってしまいます。「マミートラック」という問題です。今の大企業はこうなってしまう仕事しか提供できないので。だったら、スキル、ネットワーク、ノウハウ、を自分の中に身に着けていけば、育休を取らなくても、辞めても、いつでもリターンできるわけです。

今、女性のマーケットが広がってますね。大企業に入ってジョブローテーションで回されると、何の専門性も身につかないですね。女性こそ大企業でもいいんですが、ベンチャーとか、そういう経験をさせられるような、仕事にコミットできるような仕事が必要だと思っています。

それは、もはや現代では男性にも言えると思います。ライフイベントのたびに人生が変わってらっしゃるとのお話でしたが。男性もそういうライフイベントが増えていくと思います。そういう時にその後生きていくために、自分に何が身につくかを考えて就職する必要があると思います。今の学生さんが重視しているのがワークライフバランスとか、労働時間とかです。みんな労働時間をみてます。今はリクナビにも大きな会社は残業時間が書いてあるので。僕の感覚では月30時間を超えると、学生さんは多いと感じてます。月30時間を下回るとまあ良い、と。ちゃんちゃらおかしいわけですよ。

こういうと古臭いと言われるかもしれませんが、僕も前職が国家的なブラック企業だったので、当時残業時間は150時間とかあったんです。最後の一番緩かった時で平均120時間くらいでした。確かにきつかったのですが、今となってはそれは自分のためになったと思っています。あまりこういうことを言うと炎上しそうですけど(笑)。社会人として一皮むけるための最低努力時間という議論がありますが、一定の時期に一定程度必要だと思います。

ですが今はそれを嫌がる方が多いのは、人生100年時代を生きるうえで、大きなリスクだと思います。生き延びて行けないのではないかと。

若い方は二極化していて、安定志向の方もいれば、学生起業して失敗してという挑戦をしていきたいという人もたくさんいます。特に今は、世間的に最優秀とされる大学の学生さんも含め、ベンチャー企業に就職することも当たり前になってきていて、非常に面白い社会になってきていると思います。

このまま10年20年経つと、この差は幾何級数的に増えていく。

ネットワークはネットワーク生むので、ノウハウはノウハウを生みますし、今の20代が40歳、45歳になった時に、違う就業社会になってしまっているのではないかと私は懸念しています。

一つのポイントは18歳の職業選択だと思っています。今の教育システムで努力して、最も勝ち残った人間は、例としてはつまんないですが、全国テストで1位になりましたという人がいたとします。こういう人が18歳で選ぶ選択肢は一つしかないんです。東京大学進学なんです。東京大学以外の例えば獣医学部が強いような大学に行きたいと言っても、親と教師、友人、社会から羽交い絞めにして止められます。ましてやダンプの運転手になりたいなどと言おうものなら親に殴られます。

今の社会は、優秀な人ほど選択肢が狭まるんです。中堅どころの大学というか、誰でも入れるような大学に行くような人の方が、選択肢は広いんです。

努力した人ほど選択肢が広がっていくのが普通の在り方なのではないかと思います。

例えば、18歳で面白い人間がでてきて、御社のようなサービスを見ながら就職し、4年後にその会社で責任を持つ立場になったうえで、例えば夜、大学や専門学校に通う。なんとなく通うのではなくて、自分の責任ある立場なったからこそマネジメントを学びたいから行くんだ、と。AI学びたいから行くとか。そういったモチベーションがあったときに初めて、学びというものが起こると思います。

2020’sの若者キャリア論(その2) 佐々木満秀(人と未来グループ代表取締役)×古屋星斗(スクール・トゥ・ワーク代表理事)

2020年代の若者キャリアはどうなっていくのか。今回は、高校新卒求人サイト「ジョブドラフト」を運営する株式会社ジンジブをグループ会社に持つ株式会社人と未来グループの佐々木満秀さんと対談します。

前回 2020’sの若者キャリア論(その1) 佐々木満秀(人と未来グループ代表取締役)×古屋星斗(スクール・トゥ・ワーク代表理事)

 

古屋
私が高校生の就職について一番問題だと思っているのは、ルールの決め方なんです。毎回議事録も作らずに、高校生の就活ルールについて密室で議論してるんですよ。

ご丁寧にも入り口には「この会議は非公開です」と書いてあり、理由は「社会に対する影響が大き過ぎる内容なので、いろんな人が来ると困るから。」という。さすがにその理由はないんじゃないかと思いますよね。

話を戻しますが、大卒と高卒の就職の最大の違いは、大学生はいろんな会社を見ることで、自分の中で仕事とは何だろうと考える時間があるかないかです。最近はロングインターンも流行ってますが、大学生でも意識の高い一部の学生以外はほとんど遊んでいるだけで、職業観は一切ないと思います。

そのような大学生が就活を経ると、多少ですが、仕事は何のためにするのかを考えるようになります。就活では「軸」と言う言葉がよく使われますが、一応は納得して就職していきます。高校生にはこれすらありません。

先ほどおっしゃったように、失敗は自分に跳ね返ってきますが、自分のキャリアの中で、「若い頃の失敗は成功するためにある」と思うんですよね。ほとんど“成功”ですよね、若いころ失敗したということは。

まさに社長がそうだったと思うのですが、失敗したことで人間が太くなっていくと思います。就職活動もそうした機会ですが、高校生にはそれが無いように思います。職業観がないまま就職はするが、早期離職し、辞めた後にはどうするのというような状態に陥っています。

オープンな就職が広まっていくことで、自分の社会での役割はなんだろうとか、仕事は食うため以外に意味があるのか、家族ができたらどうしようなどいろいろ考えて、仕事に対しての思いが変わると思います。

佐々木
情報を開示してもらい、ルールを決めている人たちだけではなくて、当事者である高校生や企業側が考えるキッカケになったらいいなと思います。
日本の制度・ルール全体を決める人たちの大半が大卒なので。

古屋
おっしゃるとおり。それが最大の問題ですね。

佐々木
以前、政治家の方にご意見をお伺いしたのですが、「あ、そうなの?そんなふうになっているの?」と言われました。

古屋
政治家の方でもそのような認識なんですね。

佐々木
当然賢い方なので、「その仕組みで高校生が守られてるんではないか?」と言われて、「そうです。守られているんです。」と答えました。守られてるからいい側面もたくさんあるんですが、情報が止められないこの社会において、このルールはどうでしょうと。

昔みたいにネット社会になってないときには、良き側面もあったわけですが、大きなミスマッチの要因はそこです。これから大学は全入制になっていきますが、それでも高卒で働く方が20%はいるので、この方たちにもっとチャンスを与えていかないといけないなと思います。今、外国人の採用ばかりに目を向けてる場合じゃないでしょうと。

古屋
全くそのとおりです。

佐々木
これからの日本は、「バカ」をやっていかないと変わらないと思っています。
労働人口は減少してマーケットも縮小しますし、全体的に何か「バカ」なことをやっていかないと思います。「バカ」という言い方も変なんですが、今までの正解・不正解の正解ばかりを選択していくと、イノベーションは起きません。

みんなはイノベーションを起こさなければならないと言われるのですが、イノベーションはある意味「バカ」だと思うので、これをやれるのを高卒に期待しているのが、僕の正直な意見です。

大学生はどうしても守りに入ります。「俺は早稲田までいってるのに…」と早稲田の学生が言ってるんです。
例えば、とあるジンジブという会社に就職するということなどはできないんです。親にも絶対反対されますし。

イノベーションを起こそうと思ったら、新たなベンチャーをどんどん起こさなければならないし、新たなサービスや商品を見出さないといけないわけです。僕らみたいな人間が高卒就職の民間斡旋をやろうとしているのも、僕らが「バカ」だからだと思ってるんです。賢い人はぜったいやらない(笑)。

古屋
そうですね。

佐々木
やれないんですよね。収支も見えないし、マーケットも見えないので。
だから、賢い人たちはやれないんです。

経済が勝手に成長する時代は守りも必要ですが、もはや、縮小が確実に見えてますので、それなら「バカ」なやつがいっぱい「バカ」なことをしだして、そこで失敗してもいいし、挑戦していかないといけません。

うちの理念は、「挑戦と創造」なんですが、こういう会社がたくさんでてきたら、マーケットとの逆行期待が生まれると思うんです。今、国民は将来に対する期待はほぼ無いので。

古屋
若い人は特にそうですよね。6割は希望がないと言っています。

佐々木
私は違うと思うんです。「社会に希望がない」んじゃない。希望や期待がない社会で、挑戦するしかない、創造するしかない、そのためにイノベーションを起こせと有識者や賢い方は言われるのですが、「じゃあ、自分がやれよ」と思いますね。だけど、これができていないんです。

イノベーションが起こせないといえば製造業の雇用。これまでの日本では製造大国日本、というのが神話になってきていたし、製造という領域自体が日本の価値でした。今は完全に逆転されていますよね。製造からデータの領域になってしまって、これからはITの領域でどう勝つかという時代に入っているのに、目先の雇用だけを考えたときに製造領域の神話を手離せないんでしょうね。

古屋
就職先でいうと、現在でも高校生の4割は製造に就職しています。
あまりにもいびつですよね。大学生は1割なんですよ。

佐々木
大学生は企業の将来を考えられますからね。

古屋
そうなんです。この差をどう説明するかなんです。
1970年と同じ古いやり方をやってるから、同じマッチング先になっているだけなんです。

佐々木
それを幸せだと思っているからですよね。

古屋
本当は進路はもっと他にあるはずなんです。
情報通信とかサービス業など、いろいろあるはずなんですが、そこに学校が入ってガッチリやって90%近い生徒が学校経由で就職活動するんで、結果、製造業に流れているという流れです。

おっしゃるとおり、今の日本は外国人を入れるほど逼迫してるわけです。外国人を入れるという決断をしたわけです。しかし日本の中にも、もっと活躍できる人はいるんじゃないかと思います。
そういう活躍できる高校生が4割も製造業でいいのかと思いました。

自分でいろいろな求人を見たいという生徒にとっては、そこを見ることによって「自分の世界はこんなに広いんだ」ということに気づくきっかけになるんです。

佐々木
それがほんとに大事ですね。

 

2020’sの若者キャリア論(その1) 佐々木満秀(人と未来グループ代表取締役)×古屋星斗(スクール・トゥ・ワーク代表理事)

2020年代の若者キャリアはどうなっていくのか。今回は、高校新卒求人サイト「ジョブドラフト」を運営する株式会社ジンジブをグループ会社に持つ株式会社人と未来グループの佐々木満秀さんと対談します。

 

古屋:(一般社団法人スクール・トゥ・ワーク代表理事、以下略)
今日の対談は「2020’sのキャリア論」ということで、佐々木さんから色々とお伺いしたいと思います。

まず、はじめに、佐々木さんはご自身も高卒で就職なさったご経歴を持ち、その後もかなり面白いキャリアを歩まれていると聞いたのですが、お話を聞かせていただけますか?

佐々木:(株式会社人と未来グループ代表取締役、以下略)
当然、職種もいろんなものを経験しました。特に若いころは超短気で、すぐに上司と喧嘩して会社を辞めるタイプでした。

それで23歳まで自分でトラックを買って運転し、運送業をやっていました。
トラックは働けば働くほどお金がもらえるんです。大阪では東京までを1回往復したら10万円もらえるんです。

その時はプライベートでも悩むこともあり、このままいったら将来どうしようかなと考えた時期です。矢沢永吉世代だったんで、将来「成り上がりたい」というのが自分の座右の銘でした。ほぼ寝てなかったんですが、「これ、今やからできるなー」と感じていました。

成り上がりたいのに、このままだと成り下がるよなと思って、成り上がるためにどうしたらいいか考えて、転職活動を始めたんです。

古屋
23歳から24歳くらいの頃ですか。

佐々木
23歳です。
今の大卒1年目の時期です。その時に転職活動し始めたんですが、面接で、20数社連続で落とされました。生意気やったり、風貌もあるんですが、当時犯罪者みたいな顔つきをしてましたから。それで、ほぼ落とされました。営業が一番成り上がれると思ったので営業ばかりを受けたんですが。

古屋
実力主義ですからね。

佐々木
そうです。月収が完全インセンティブのようなところを、たくさん受けました。たぶん古屋さんの時代ではなくなっていたと思うのですが、教材販売とか、怪しい会社がいっぱいあったんです。

古屋
小学生の頃はありましたが、今はないと思います。

佐々木
今はなくなったんですか。昔は小学生が使う図鑑全集みたいなものを売ってて、あれ実は、1セット売ったら100万円くらいするんです。そこも落とされる。
結局そのとき受かったのが不動産の営業でした。それも2か月で喧嘩して辞めるんですが(笑)。

求人広告の営業に就いたときもあり、やっぱ営業って面白いなと思いました。学歴も関係ないし、僕みたいに素行も悪いわ、見た目も悪いような奴が、結果で評価されるというのが面白くて。

その会社では26歳で常務までやらせていただいたんです。その会社の倒産や、父親の病気も重なったことがきっかけになり、21年前に最初の会社である株式会社ピーアンドエフを創業し、ある程度ですがお金持ちになりました。

その後、7年前に色々と考える時期があり、これからの時代において社会に対して何かしたいと思うようになりました。歳いくとそう考えるようになってくるじゃないですか。

ビジネス的に社会性の強いものをやらないといけないと思い、自社でも本当に社員のため、社会のためになっているかということを考えました。当然ビジネスですから収益になることをやらなければならないですし、色々と考えた結果、高卒採用の支援をやりたかったんです。

始めたら始めたで、高卒就職の業界の闇の深さも分かってきて、課題も見えてきました。
僕は、ジンジブという会社の代表でもあるんですが、今は、「高卒採用に命かけたろ!」と考えています。

古屋
先日も、某新聞のコラムに佐々木さんと私のコラムが一緒に掲載されましたね。
とても素晴らしいなと思いました。

ただ、私のコメントが書かれている欄の上には、学校関係者の就活のあり方の見直しへの反対意見も載っていましたね(笑)。

佐々木
新しいことをはじめると良く思わない人も必ずできます。

古屋
高卒就職については法的なルールはほとんど存在しない、しかし高卒就職の世界だけで適用される特殊なルールが存在する、という厄介な状態ですよね。つまり「行政や学校の中だけのルール」が「ルール」になっているんです。「これはルールだ」とビジネスサイドに言ってくるのは完全にお門違い。

元行政官としても正直、多くのケースで公権力側の越権行為が起きていると感じているんですが、それを言い出せないほど、今のやり方を変えたくない人や既得権を持ってしまってる人が多い状況ですので、私も微力ながら一歩一歩この活動を進めて行けないかと思っております。

学校の昔からいた先生方。彼らが見ている幸せな世界があるわけですよね。卒業するときに「先生ありがとう」と言われたり、良い会社に就職できましたと親御さんも言ってくれて、それで卒業していくと言う話をたくさん聞いている方々ですので。そういう世界は確かにあります。

佐々木
ありますね。

古屋
当団体に所属している青年は、もともと長野の商業高校の野球部でした。
素行が良かったということもあり、一人一社制の中で、大企業を紹介されて就職しているんです。業界ではだれでも知っているようなBtoB企業ですよ。

その時は、親御さんも含めて良かったと思っていたのかもしれませんが、その後、職場の現状に失望して、なんと半年で辞めたんです。

高校の先生方が見ている世界は、幸せなエンドロールが流れてるところまでなんです。エンドロールが流れ切った後に起こっていることはご存じないと、もっと当事者の話を聞かれた方がいいんじゃないかということを、日々伝えています。

さて、まさに、佐々木社長は、30年前の当事者のお一人だと思いますが、そういう方の話を聞かずに、違う世界の方に行かれた方なんだろうなと思って、今の話を伺っていました。

佐々木
決定的な違いはゴールですよね。
僕の視点では、ゴールは人生なので、人生全般を考えたファーストキャリアでなければならないと思っています。しかし、内定して就職させることがゴールになってしまっている人が多い。先ほどおっしゃったように、卒業後に何が起こってるかなど、現在表面化されていない課題があるわけです。

古屋
全くその通りです。

佐々木
確かに、内定というゴールは数値で表した場合には、98%とかの内定が取れてるので、いい数字が出ているんです。そこはいいと思うんです。
僕もそうですし、今の高校生たちもそうですが、意思決定の問題が大きく関わっていると思ったんです。

高校生は職業観が全くなく、その中で意思決定をしているように見えるけど、今の規制の中での意思決定は、情報がない中でなされており、先生や保護者の後押しがあっての意思決定です。「俺が選んだ」と思っていればいいんですが。

どんな業種で、どんな仕事で、どんなキャリアステージがあって、自分の人生でどういうことをやりたくて、ということに繋がらないんです。

そのゴールには、大手に就職できるという一部の高校生の利点もあります。でも結局、ほとんどが辞めるんです。
ファーストステップで大手に入ることが良いか悪いかもあります。

僕は自分の子どもの教育を考えたら、ベンチャーやブラックに行ってもいいと思っているんです。僕もブラック企業を経験してますし、大手は大手の良さもあるんですが、30代や40代になった時に、どういう仕事経験があって、職業観が生まれるかは大事ですからね。自分で意思決定して安定志向の人もいますし、親の方針で「超ブラック企業にいけ」という僕のような人もいるし、それは自分で選べばいいと思うんです。

離職した時に、失敗を自分の経験に活かせるかどうかというのがあります。高校生は、学校から推薦されて、この仕事は合わなかった、人間関係よくなかった、で辞めるんですが、失敗だとは思わないんです。それを失敗と認識し自己責任で「次は絶対失敗せんとこ」と思わなければならない。

僕は、仕事もいっぱい失敗してるんですが、親に決められたことは一切ないんです。学校の先生にも決められなかったので。素行が悪かったから紹介受けなかっただけなんですが(笑)。だからこそ、自分が考えて、失敗を失敗の経験値として、そこから社会に出て、自分で選んでいくんです。

今の高校就活のあり方で、大学生との決定的な違いは、失敗が活きない。大学生は自分で会社をいっぱい見て、最終的には「俺はベンチャー行く」と言う人もいれば、「大手に行きたい」という人もいる。入ってみて、合わないとか離職するのは同じですが、その後が違うと感じてます。

今のルールの中で、高校生には職業観が無いので、先生からの助言は大事だと思います。今のルールの良さもあるのですが、ただ、あまりにも子ども扱いをされると、高校生が18歳成人になるにあたり、情報過多な時代なのに規制ばかりするような、求人票一枚で3社見るのが精一杯の、高校生の就活では、これはいかんやろと思っています。

古屋
実際に見に行くとビックリします。それには2つの意味があって、一つには「この時代に紙?」や「この時代にこの情報しかないの?」。もう一つは、「この時代に」ということ自体を知らないことです。高校で就職した約17万人は、そもそも自分たちがまわりから見て結構ありえない状況にある、ということを知らないです。これが大きな問題だと思います。知らないので問題にできないんです。

ここをどうにかできないかなと思っています。

佐々木
まずは、実態を知ってほしいですね。

2020’sの若者キャリア論 牛島悟(前人未到CEO) × 古屋星斗(スクール・トゥ・ワーク代表理事)④

2020年代の若者キャリアはどうなっていくのか。今回は、非大卒向けキャリア支援サービスの「サムライキャリア」などを運営する株式会社前人未到の牛島悟さんと対談します。

前回 2020’sの若者キャリア論 牛島悟(前人未到CEO) × 古屋星斗(スクール・トゥ・ワーク代表理事)③

古屋
私が多くの若者を見ている中で、ハッシャダイから出ている子たちが大卒の人たちと比べて、圧倒的に差があると感じていることがあるのですが、それが読み書きなんですよ。読み書きのスピード、中でも、読み、インプット能力が非常に差があると感じます。

しゃべりの部分、英語でいうとListeningとspeakingは差がなく、ハッシャダイとかの子たちとかはむしろうまいと思います。弱点がある、それが明確に分かれば、その弱点を補うためのコンテンツを提供するだけなので、そういう差を挽回できる場が与えていけるようになっていくと思うのですが、非大卒支援をやられていて実際どう思われますか?

牛島
そうですね。何かそういうコンテンツの提供ともう一つ企業の見方を変える必要があると感じていて、普通に考えると、18歳人材って、学校ではなくて、育てる力がしっかりと備わっている企業であれば、20歳のころには化け物みたいになっていると思うんですよ。

これって、めちゃくちゃバリューも高いですし、ロイヤリティも非常に高いという人材が生まれる。ハイレイヤーのスタートアップの高卒の人たちって、良くも悪くもすごく染まっているんですが、もし彼らはそこから抜け出そうとするとき、選択肢は山ほどあるんですよ。

なので、企業側の高卒人材への見方を変えるのは非常に大事だと思いますよね。採用の仕方が分からないし、した後のメリットが分からないみたいなそういうのが多いんですよ、確かに今を比較したら、劣っているとは思うんです。

しかし、彼らが社会人として4年後新卒の子たちと並んだ時は比べ物にならないのは一目瞭然ですよね。一応、HR領域のすごい先見性を持っている企業とかはこの考えがはまるんですよね。この人たちをいかに巻きこめるかが大事かなと思いますね。

古屋
そうですね。企業側のメリットはどういったものがあるでしょうか。

牛島
簡単なのは、1人の成功事例を作って、企業側が広報にも使えばよい。すると採用力に直結しますね。

古屋
ZOZOさんとか学歴問わず採用していたのですが、あまり外に発信していないですよね。採用の時に。先ほどおっしゃっていた、育てる企業というのはどういうイメージですか。

牛島
業種とかによるのですが、例えば営業はロジカルなものなので、PDCAをしっかり振り替える体制が整えられているか、結局考えてやってみてダメだった、やる気なくなる、終わりみたいな子をどれだけなくすか。

この仕組みを組織でサポートする力があると、企業の力自体が非常に強いんですよね。これでうまくワークしたら良い非大卒人材が増えてくると思います。あとは、企業側の仕事はマインドセットみたいなもの、自己評価と他己評価を合わせてあげることも仕事だと考えています。

「自分はできる」と思いすぎている子がいたら、まず、自分を認識させるみたいな、そういうのが大事だと思います。

古屋
確かにそういった意味ではインターンとかは一度企業を体験しておくという意味では大事ですね。最近では東大生いわゆる最優秀層の進路が大きく変わってきていて、マッキンゼーとか行かなくなってきているんですよね。

最近の優秀な東大の院生は大手企業からくる案件のPM(プロジェクトマネージャー)とかを任されるんですよ。なので、初職、いわゆるファーストキャリアで昔ながらの「順当な歩み方」をしなくても、大学生でPMなどを経験している分、他とは違うキャリアステップを踏む人が増えているんですよね。

大手の会社の30歳くらいの仕事を学生のうちからやってしまうという。

牛島
そうですね、最近の大学は本当に二極化していますよね、めちゃくちゃ安定志向でその場で思考停止しているか、めちゃくちゃ意識高くて、アンテナはっているかのどっちかですよね(笑)。

古屋
確かに安定志向は多いですよね、しかもそれは学校のレベルに関係ないんですよね。本当に最近のとがった若者のキャリアプランは面白くなっています。まさに商社つまらんからベンチャー、のような。

牛島
よく聞きますね。でもそれアメリカだとそれが逆らしいんですよね、若い優秀な子はスタートアップに行ってそこでさらに優秀な奴が、大企業の役員になるみたいなのを聞きますよね。

古屋
その理由としては、アメリカは基本的に日本のような一括採用ルートがないので、多くがインターンシップ採用なんですよね。だから、いきなり大企業に採用されるというルート自体が狭いんですよね。

そういった意味では日本の就職活動というのは非常に合理的な仕組みでできていてですね、これは世界的に見てもすごいことなんですよね。良し悪しは当然ありますけど、若者の失業率を下げるという点では、非常に効果的であるということは間違いないので。

僕はある種、最初の2020年のキャリア問題について話を戻すとすれば、それはインターン直結採用なんですよね。それで今はインターン直結採用は経団連ルールでダメってなっているのですが。

牛島
え、大学ってダメなんですか(笑)。みんなやっていませんか?

古屋
そうなんですよ(笑)。でも明確にダメといわれているんですよ。一応ルールなので基本的に日本のほとんどの大企業はそういう建前でやっています。

ただ、インターン直結採用を全面解禁することによって、若者はもっと良いキャリア選択ができ、ミスマッチなども減るのではないのかなと考えています。

最後に、牛島さんは2020年以降のキャリアについてどう考えられていますか?

牛島
私は全体として、キャリアの非対称性は薄まっていくのではないかと考えています。今おっしゃって下さったインターン採用とかいろいろな企業がやっているじゃないですか、まさにリファーラル採用やダイレクトリクルーティングとかもどんどん増えていくので、特にリファーラルは素晴らしいですよね。

リファーラルは求人を理解している人が、人材を引っ張ってくるので、ミスマッチが基本あり得ないんですよ。今色々な求人媒体が出てきて、非対称性は薄まり、リファーラルなどの増加でかなりのレベルまで薄まると思います。

ですが埋まっていない部分が2つあると思っていて、それが未経験層とハイクラスだと思っています。未経験層は先ほども話しましたが、実は表に出てこない「ハイクラス」のレイヤーも埋まっていないと思います。

なぜかというと会社のポジションの建前とかいろいろあるので、上に上がりたいとかあるので、なかなか表立って出てこないんですよね、そこはサービスとしての介在価値が高いと僕が勝手に思っています(笑)。

古屋
最優秀層の観点はあまりないので非常に面白いですね、一般的に学びなおしをしている人が増えているのですけれども、隠れキリシタンのように隠れてしまっているんですよね、それでとある大学の先生が聞いたときには半分ぐらいの人たちが黙って学びに来ていると言っていたんですよね。

邪魔されるのが嫌だとか出世に響くとかいろいろな理由があると思いますが、そういうハイエンド層が見えてこないというのはあると思いますね。

色々な見方が出てきてまだまだ、話が止まらないですが、今回はここまででとして、今後とも様々な形で協力できればと思います。本当にお話しできて楽しかったです、ありがとうございました!

牛島
こちらこそありがとうございました!

 
株式会社前人未到
代表取締役社長 牛島悟
福岡出身、新卒で大手メーカーに入社。その後スタートアップ、メガベンチャーにてTOPセールス。AI系ベンチャー企業上場を牽引後、起業。

 
一般社団法人スクール・トゥ・ワーク
代表理事 古屋星斗
1986年岐阜県多治見市生まれ。大学・大学院では教育社会学を専攻、専門学校の学びを研究する。卒業後、経済産業省に入省し、社会人基礎力などの産業人材政策、アニメ・ゲームの海外展開、福島の復興、成長戦略の立案に従事。アニメ製作の現場から、仮設住宅まで駆け回る。現在は退官し、民間研究機関で次世代の若者のキャリアづくりを研究する。

 

2020’sの若者キャリア論シリーズ

2020’sの若者キャリア論 牛島悟(前人未到CEO) × 古屋星斗(スクール・トゥ・ワーク代表理事)①
2020’sの若者キャリア論 牛島悟(前人未到CEO) × 古屋星斗(スクール・トゥ・ワーク代表理事)②
2020’sの若者キャリア論 牛島悟(前人未到CEO) × 古屋星斗(スクール・トゥ・ワーク代表理事)③
2020’sの若者キャリア論 牛島悟(前人未到CEO) × 古屋星斗(スクール・トゥ・ワーク代表理事)④

2020’sの若者キャリア論 牛島悟(前人未到CEO) × 古屋星斗(スクール・トゥ・ワーク代表理事)③

2020年代の若者キャリアはどうなっていくのか。今回は、非大卒向けキャリア支援サービスの「サムライキャリア」などを運営する株式会社前人未到の牛島悟さんと対談します。

前回 2020’sの若者キャリア論 牛島悟(前人未到CEO) × 古屋星斗(スクール・トゥ・ワーク代表理事)②

古屋
若者の行動の変化についてお話を伺いましたが、次に高校生の一人一社制についてはどう考えていらっしゃいますか?実は今、文科省と厚労省で一人一社制の見直しが始まっていまして、今、見直されている理由として、毎年出ている国家全体の戦略というのがあるのですけれども、こちらに一人一社制は見直せと書かれているんですよ。この問題についてどうあるべきだと思いますか?

牛島:
私は一人一社制はないほうがいいと思います。理想だけを言うなら教師のリテラシーを上げないといけないと思います。生徒がどう思うかというと、やはり、一番身近な大人なので、「まともなことを言っている」と子どもは思うんですよ。

だから疑うことなく就職をするのですが、それがミスマッチに繋がっている原因になっている。学校教育のプログラムで東京に行ってインターンを行うなどの都市体験学習とか、そういうのを必修で行ったりすると子供たちも自らの進路を考えるようになって変化が出てくると思うんですけどね。

古屋
そうですね、実はそこがすごく問題点でして、地域に人を残さないといけないという議論がされている。地方の若者をどれだけ東京に行かせないかという議論です。

全国の割合でいうと首都圏の高校生は全体の30%弱を占めていて、それが大学になると40%、就職1年目、つまり新卒者になると首都圏では50%になると言われています。今の議論でいうと、いかにこの何十%の若者を地方に帰らせるかというのがあります。

あと、もう一つあるのが、いかに首都圏の大学に行かせないようにするかも議論されています。結構この声が政治的にも非常に大きいんですよね。

牛島:
地方創生の考えですよね。

古屋
そうですね。「移動」とは、全く逆の発想になっているので、僕は折衷案としてエリア内移動などを促すようなプログラムがあるといいと思っているのです。

いきなり東京ではなくて、地方の主要都市への移動。仙台や福岡なんかは比較的ITベンチャーなども多いのでいいかと思います。

牛島:
いきなり東京ではなくても、人材の流動化を図る形ですよね。あと私が非常に思うのが、高校の就職活動に民間が入れないのが良くないと思うんですよね。

当社は直接はしていませんが、やりとりがハローワークと学校の先生しかできないので、もし、そこの方々が悪い人だったら生徒に「お前ここに行け」と、強制感を持って発言することもできるわけじゃないですか。

それで、結果的に早期離職率などの数字を見ると失敗しているじゃないですか。サービスの民営化は歴史的に見ても質を大きく発展させているので、どういう形でもいいので入れるべきだと思うんですよね。硬い公的資格を新たに設けたりするなど、いくらでもやり方はあるので。

古屋
実はこの議論が確か2003年ごろ小泉政権下で行われているのですよね。規制改革の議論がされているときに、八代先生という有名な経済学の先生が言っていて、高校の卒業者の就職マーケットが50年くらい変わっていないと発言をされたんですよ。

そしたら、それを機にもっと民間の力を借りて発展させるべきではないかという声が民間団体から提言されまして、それに八代先生と小泉政権がそれに乗っかって、厚労省をかなり詰めたんですよ。

その時の厚労省の課長の回答が、「規制はしていません。法律上はOKです。」と言っているんですね。ですから、民間参入は実は大丈夫なんですよ。

ですが、結局ハローワークと学校の構造があるので、民間が入るのは難しいんですよね。厚労省も、構造を変えるとは言っていない。ですが結局、議論が「OKですよ、どうぞやってください」で終わってしまったんです。

最初の問題提起は、「このマーケットを変えなさい」という行政への問題提起だったのに、「どうぞやってください」が回答になっていて、問題がすり替えられているんですよね。

結果15年たった今も、80%以上の高校生が、ハローワークを経由して就職をしていますので、構造は全く変わっていません。ハードルが非常に高いので民間は誰も参入できずに終わってるんです。

ですが最近になって、御社やハッシャダイさん、ジンジブ(高校生向け求人サービス会社)さんなどの多くの会社が参入するようになってようやく変わるのかなと思っています。

牛島:
そうなんですね、実は当社は新卒を扱っていないんです。応募は結構あって、ニーズも高いんですが行っていない理由が3つあって、一つが親御さんの理解とかが難しく最後の後押しが構造上しづらいということ。

もう一つは企業側のネックがあって、企業側が法律違反だと思っていることが非常に多いんですよね。そして、もう一つは未成年というのが一番大きいです。

実は18歳、19歳ってほとんど求人がなくて20歳から一気に増えるんですよね。あとは、この子たちをどう扱っていくか、というのを企業側が分かっていないんですよね。

古屋
そうなんですね、未成年のところはもしかしたら民法改正がきっかけで変化があるかも知れませんね。ですが、ハッシャダイさんとかも新卒をやっていないですもんね。

牛島:
そうですね、でもやっぱりビジネスとして成り立たせると考えると難しい部分が多いですよね。やっぱり参入しない理由としては、ビジネスとして儲からないというのと、工数がめちゃくちゃかかるというのが最大の理由だと思います。

この工数がかかる部分は誰でもできるというわけではないのがポイントだと考えています。なぜなら、彼らは、まだ成熟していないので、言語化能力が発展途上な部分があるのでそこを支援してあげないといけない。

自分の考えていることとかを伝える能力がまだ発達途中で、自分の強みを引き出す能力がまだないので、この引き出すのを大人が手伝わないといけないんですよ。

そこは、ハイクラスの子たちとかは逆に何もしなくていいんですよ、求人を紹介するだけで勝手に進んでいくので。それをピンポイントでバシッと決めてあげればいいんですけど、僕らが相手にしているところは、過去の経験から自分が一番大事にしているもの今の時点で何なんだろうかっていう現在地点と将来の理想というのをすり合わせるところから入ります。

これは、教える側のレベルが高くないと無理なんですよね。僕らのところはそれがたまたまハイクラスではまったっていう感じですね。

株式会社前人未到
代表取締役社長 牛島悟
福岡出身、新卒で大手メーカーに入社。その後スタートアップ、メガベンチャーにてTOPセールス。AI系ベンチャー企業上場を牽引後、起業。

一般社団法人スクール・トゥ・ワーク
代表理事 古屋星斗
1986年岐阜県多治見市生まれ。大学・大学院では教育社会学を専攻、専門学校の学びを研究する。卒業後、経済産業省に入省し、社会人基礎力などの産業人材政策、アニメ・ゲームの海外展開、福島の復興、成長戦略の立案に従事。アニメ製作の現場から、仮設住宅まで駆け回る。現在は退官し、民間研究機関で次世代の若者のキャリアづくりを研究する。

 

2020’sの若者キャリア論シリーズ

2020’sの若者キャリア論 牛島悟(前人未到CEO) × 古屋星斗(スクール・トゥ・ワーク代表理事)①
2020’sの若者キャリア論 牛島悟(前人未到CEO) × 古屋星斗(スクール・トゥ・ワーク代表理事)②
2020’sの若者キャリア論 牛島悟(前人未到CEO) × 古屋星斗(スクール・トゥ・ワーク代表理事)③
2020’sの若者キャリア論 牛島悟(前人未到CEO) × 古屋星斗(スクール・トゥ・ワーク代表理事)④