富山県の製造大企業の工場勤務から社会人生活をスタートした竹田将宏さん。働く中で積もる「違和感」を振り払うために、一歩を踏み出し、現在は東京のITベンチャーで活躍しています。一歩を踏み出す前、そして踏み出した結果。お話からどんなことが見えてくるのでしょうか。今回は、そんな竹田さんのキャリアストーリーを聞いていきたいと思います。
前回 「日々のつまらなさ」・・・変えたい思いで一歩踏み出した①
違和感しかない「就職活動」
古屋:
「イメージを変えてしまう」とても興味深いです。天井を自ら壊すというか、到達点をしっかり見て、それをモチベーションにしていたのですね。竹田さんはその後、高校を卒業して大手メーカーの工場に就職していますが、就職活動はどんな感じでしたか?
竹田:
実は、就職活動は特にしなかったんですよね。部活のみの生活で今後どうしようかは特に考えていませんでした。道としては、大学に行くか、就職するかの二択の中で、就職を選択したのですが、理由は単純でお金を払ってまで4年間も使い勉強したいことがなかったからです。
それなら就職して無難に稼いで生きていければいいかなと。なので少しでもお金が稼げて安定している会社に就職出来ればいいと思い、先生の提示してくれた大手メーカーに就職しました。
なので大学生のような「就職活動」は特にしなかったです。学校にある求職リストから選びました。
古屋:
求職リストは紙でした?何枚くらいありましたか?
竹田:
紙でしたね。リストは辞書みたいに何百枚もありました。業務内容もざっくりしか記載されていないですし、説明もないのでイメージはつきませんでした。
とりあえず休みと給与とネームバリューで選びました。働いた後から振り返ってみると違和感しかないですよね。
古屋:
そうですね(笑)。3年生の7月とかに会社見学はいきましたか?
竹田:
会社見学っていうんですかね?数日の職場体験はありました。ただその時は就職した会社ではなく別の会社に体験に行きました。
古屋:
どんなことをしました?
竹田:
工場のライン作業を基本は見ているだけで、体験ではライン作業の製品の設置などを体験しました。あとは社員の方と話したり、会社説明してもらったりとかですね。その会社の方はかなり良い方々でしたね。
古屋:
いい機会ですね。そんな良い方々のいる会社に行かなかったのはなぜでしょうか?
竹田:
正直迷いしました。ただ、やはり体験の期間が短すぎて会社への理解の度合いが低かったのです。企業のイメージが無かったので、その時は大企業の方がキラキラして見えたのかもしれません。
あとは、よく知られた会社のほうがいいかもと思いました。大学生みたいにいろいろな会社のインターンがあり、社会を知れて、いろいろな会社が見られれば、また、この時の選択も変わっていたかも知れませんね。経験と情報が圧倒的に足りなかったです。
YKKに就職。今だから気づけた“ある人”の凄さ
古屋:
そうなんですね!そんな中、選んだ会社はYKKという誰もが知っている超大企業ですが、なぜその会社だったのでしょう?
竹田:
まず前提として他県に行く気がありませんでした。そもそも他県で就職を選択するという選択肢が自分にありませんでした。
そのため富山県で就職するという選択肢の中で、一番大きな企業がYKKだっただけです。理由は単純ですが、本当にそれだけですね。
古屋:
そんなYKKでの仕事はいかがでしたか?
竹田:
YKKでの仕事は単純でした。さすが大企業だけあって、機械のオペレーションをするだけでした。私はその中で染色課というところに所属していました。
そこでは染料の計測や染める素材の種類や量を、発行される伝表通りに用意し、機械を動かすという仕事です。単純作業なだけあって、どれだけ効率よくできるか、楽に仕事ができるかだけを考えていました。
今思うと時間の意識やタスクの組み立て方はその時に染み付いた気がします。それとその当時疑問だったことがあるんですよね。
古屋:
おお、それはなんでしょうか。
竹田:
与えられた仕事をこなすだけの人が多い職場の中で、ただ1人だけ主体性と責任感のある人がいました。彼は評価されるわけでも、誰かが見ているわけでもないのになぜ文句も言わずに誰よりも頑張れるのか。
それがその当時は疑問でした。今考えると価値観の違いであったり、リーダーシップが大きな要因な気がしています。私はその当時「自分」というものを軸に捉えていました。
楽しめるか、楽できるか、 評価される全てに「自分」が付いていました。彼は物事を考える時に「自分」を優先していなかったのではないかと思っています。
彼は「組織」というもので捉え、 組織全体の結果や生産性を意識していたのではないかと。だから自分の業務以外でも 積極的に取り組むし、評価されなくても、組織の結果が出ていれば満足していたのかなと。
物事を考える時にどの目線から捉えるか、これってかなり重要だなと思っています。ただの従業員という思考でみる会社の景色と、自分が課長だったら、部長だったら、社長だったらで思考する会社の景色ってまた違うと思うんですよね。
古屋:
今、竹田さんがいろいろなお仕事を経験してきたからこその気づきですね。
竹田:
そうかもしれませんね。YKKでの仕事は単純な作業と変化のない日々が多かったですが、それって自分の捉え方や考え方次第では、また違ったものになっていたような気もします。
ただあの当時の僕が感じたことは マイナス面が多かったので、かなり未熟だったんだと思います。
古屋:
同じことをしていても捉え方によって意味が変わってくる。「ジョブクラフティング」という考え方があります。同じ「掃除の仕事」であっても、単なる清掃作業と捉えるか、もしくはお客様をもてなすためのエンターテインメントと考えるか、それによってスキルや気持ちが全く違ってきます。
今振り返ってそういった気持ちになっていることは素敵だと思います。
竹田:
「ジョブクラフティング」ですか。そのような言葉があるのですね。知りませんでした(笑)。
竹田将宏さんインタビュー記事一覧
「日々のつまらなさ」・・・変えたい思いで一歩踏み出した①
「日々のつまらなさ」・・・変えたい思いで一歩踏み出した②
「日々のつまらなさ」・・・変えたい思いで一歩踏み出した③