一般社団法人スクール・トゥ・ワークの設立を記念して、当団体の活動の目的と背景を知ってもらうために、当団体の代表理事の古屋さん、監事の小松さんと事務局スタッフで非大卒人材の奥間さんと、座談会形式で、「変わる?学校から仕事への第一歩」の連載をお送りしています。
就職先企業の規模
小松:
あっという間に第10回になってしまいました。それにしても、いろいろな論点がありますね。第10回のテーマは「就職先企業の規模」です。規模といっても、売上規模と社員数などいろいろありますが、まず、いわゆる大企業、中小企業などの定義を教えてもらいましょうか?
古屋:
小松さんのお話のとおり、実は統一された定義はありませんが、一般的には従業員規模で考えられることが多いようです。100人以上、もしくは300人以上を大企業とする場合が多いですね。個人的には5,000人以上企業の採用や育成行動が顕著に異なる場合が多いので「超大手企業」と言ったりしています。
小松:
そうなんですね。スーツ社は10人以下ですし、私が社長をしていた上場会社ですら正社員は120名程度でしたから、大企業はやはり大きいですね!大卒や高卒の就職活動においては、就職先の規模について差はあるのでしょうか?
古屋:
実は極めて大きな差があります。大卒者で1,000人以上の事業所に入社する人は32.5%、一方で高卒では17.8%とほぼ半減します。この差をどう考えるかです。なぜ高卒の方が小規模な会社に就職する傾向が強いのか。
また、大企業では早期離職者は少ない傾向にありますから、私は「高卒者が離職率が高い」という現象は、実は「高卒者は小さな会社への入職者が多い」ことでしかないのではないか、と思っています。
小松:
それは逆かもしれませんよ。高卒者の多くは、「小さな会社への就職の選択肢しかない」ということかもしれませんね。本シリーズでも話をしてきましたが、地域を移動して就職する人は18.8%しかいないわけですから、大企業の多くが東京に集中しているからという理由もあるかもしれません。
ちなみに、奥間さんは、なぜ中小企業のスーツ社に就職されたのでしょうか?就職活動の際に、会社の規模はどのように考えていましたか?
奥間:
僕が就職先を探していた時は会社の規模についてはあまり考えたことがありませんでしたが、小規模の会社のほうが厳しい環境に身をおけるように感じていて魅力的には感じていました。
ただ、大企業という選択肢がそもそもなかったのは事実かもしれません。誰もが知っているような大企業は大学卒業が最低ラインでしか入れないものだと思っていました。
小松:
厳しい環境に身を置きたいとは、なかなか意識高い系な回答ですね(笑)。
奥間:
元がのんびりとした性格なので環境を変える必要があると思ってです(笑)。
小松:
奥間さんの学生時代の友人は大企業に行った方はいらっしゃいますか?
奥間:
学生時代の友人では、多くはないですが大企業で働いている人も何名かいます。知っている限りでは地元沖縄の大企業などがほとんどです。
小松:
その方たちは17.8%の中の人たちですね。基本的には、高卒就職においても、大企業を希望する人が多かったですか?
奥間:
多かったですね。やはり誰もが名前を聞いたことあるような会社の方が家族も周りの人も安心してくれるし、小さい会社に比べて給与や労働環境も高水準で安定しているというイメージが強かったので、就職できるのであれば大企業へ行きたいという人が多かった印象です。
小松:
そこはやはり大卒と同じですね。大企業や中小企業の特徴などは就職する際に教えてもらえるものなのでしょうか?
古屋:
現在の学生さんの大企業志向は各種データから明らかですし、大学や高校のキャリアセンター・進路指導でも、実績作りにもなる大企業や有名企業を勧める傾向が一般的にあると聞いています。
この会社に行けと先生に「はめ込まれた」と、とある高校卒の方は言っていました。ただ、大企業と中小企業の違いというよりは、もっと基礎的な働くことに対する準備ができていない、というのが実態ではないでしょうか。
小松:
本人の希望を超えて、先生に「はめ込まれた」となるとなかなか問題ですね(苦笑)。大企業や中小企業の長所・短所は、それこそ社会人でそこそこの年齢になっても判断がつきませんし、それこそ人それぞれ、会社も様々といったように思います。
そのように考えると、おっしゃるとおり、もっと基礎的な働くことに対する準備や、私たちが繰り返し言っているキャリア教育をしっかりしなければならないというような話になりそうですね!
「変わる?学校から仕事への第一歩」連載シリーズ
第1回 はじめに
第2回 大卒人材と非大卒人材の分断 前編
大卒人材と非大卒人材の分断 後編
第3回 高校生の就職制度
第4回 高卒の就職率
第5回 「七・五・三」現象
第6回 離職した若者はどこへ行くのか
第7回 現在のキャリア教育
第8回 ハローワークの役割
第9回 地域格差
第10回 就職先企業の規模
第11回 初任給の格差
第12回 スクール・トゥ・ワーク