一般社団法人スクール・トゥ・ワークの設立を記念して、当団体の活動の目的と背景を知ってもらうために、当団体の代表理事の古屋さん、監事の小松さんと事務局スタッフで非大卒人材の奥間さんと、座談会形式で、「変わる?学校から仕事への第一歩」の連載をお送りしています。
前回 変わる?学校から仕事への第一歩(第10回 就職先企業の規模)
同じ仕事でも初任給に差が…
小松:
第11回のテーマは「初任給の格差」です。それこそアラフォーの私には、初任給は遠い昔の話のように思いますが、お二人はいかがでしょう?初任給で親孝行をしたり、何か買ったものがあったりとかありますか(笑)?
古屋:
私も遠い昔ですが、最初のボーナスで母親にプレゼントを贈ったことを覚えていますね。学生時代はお金が無かったので、最初の給料は借金の返済にまわしました。
奥間:
僕は初任給では、親に少しお金を送っていたくらいで、あとは生活や学生の時の教育ローンの返済に消えましたね。特に何かを買ったとかはないです。
小松:
ありがとうございます。2人の初任給にはあまり感動のストーリーはありませんでしたね(笑)。さて、大卒と高卒では初任給はいかがでしょうか。古屋先生ご説明をお願いします。
古屋:
一般に初任給は大卒の方が高いです。直近のデータでは大卒は20万6,700円、高校卒は16万5,100円となっています。ただ正直なところ研修等により新人時代は、学歴を問わず同じ事業所の同じ仕事をすることも多いため、その場合はこの差には合理的な理由はなくなります。
むしろこの差は「入職する企業の規模の差や業種の違い」が学歴ごとに大きく存在すること、によって生まれている面があるでしょう。高卒就職者のほうが中小企業への入職比率が高いのです。また、同様の傾向が男女の違いでも存在し、女性の方が初任給が低いですがこれも同じような理由によるのではないかと考えられます。
小松:
同一労働同一賃金の概念からは程遠いですね。急に賃金体系は変えられないということかと思います。ちなみに地域差はいかがでしょうか?
古屋:
確かに例えば最低賃金も県でかなり差がありますよね。沖縄と東京では、同じコンビニの仕事でも、沖縄が時給800円のところ東京は1,100円、という感じです。8時間のバイトで2,400円も差がつくわけですから大きい。
そして初任給ももちろん地域差は大きいです。沖縄の大卒は17万5,200円、東京の大卒は21万4,900円となっています。こんなに差があるんですね。
小松:
凄いですね!私は東京でキャリアがはじまっているので、この地域差には驚いてしまいます。なかなか日本人だと給与の話はあけすけに話さないかもしれませんが、奥間さんは、地元の友人と話をするときに、給与の話になったりしますか?
奥間:
地元の友人などとはよく給与の話になりますね。古屋さんのご説明どおりで、地方と東京では最低賃金も大きく差があり、特に沖縄はその中でも最低賃金が低いので、東京で働いている僕に対してすごく興味深々で給与の話を聞いてきます(笑)。
小松:
やはり他人の給与は気になりますからね。
初任給のあるべき姿はどういうものなのでしょうか?やはり同一労働同一賃金ですか?
古屋:
日本では企業内で学歴に応じた一律の初任給が一般的でしたがようやく変わりつつあります。分かりやすい例では、ITエンジニアなどのスキルを持った学生に対して初任給としては高額の、例えば1,000万円などの年収を提示する例が広く出てきています。
また、エリア総合職などの学歴の中で職種を細分化し、それに応じて初任給を細分化する会社も一般的になってきていますね。私は最終的には学生を一括りで採用するのではなく、ロング・インターンシップなどを経由して一人一人の学生を職種指定で採用し、その職種に応じた給与設定をするという職種別初任給が今後の一つの到達点なのではないかと思っています。
小松:
そうですね。職種別初任給は凄い世界ですね!ますます若者たちはキャリアについて考えなければならないですね。私たちもキャリア教育を通じて若者を応援し、初任給の格差是正に貢献したいですね。
「変わる?学校から仕事への第一歩」連載シリーズ
第1回 はじめに
第2回 大卒人材と非大卒人材の分断 前編
大卒人材と非大卒人材の分断 後編
第3回 高校生の就職制度
第4回 高卒の就職率
第5回 「七・五・三」現象
第6回 離職した若者はどこへ行くのか
第7回 現在のキャリア教育
第8回 ハローワークの役割
第9回 地域格差
第10回 就職先企業の規模
第11回 初任給の格差
第12回 スクール・トゥ・ワーク