「本気で向き合いたいときに、何かを手放す」こと 後編

工藤理世菜さんは東京都出身の21歳。大学を1年で中退したのち、大学時代からインターンシップをしていた職場で正社員として、なんと大学生向けのファシリテーション講座を主催しています。インタビューでも心を動かされる言葉がたくさんありました。

前回 「本気で向き合いたいときに、何かを手放す」こと 中編

偶然のようで必然

古屋
今の仕事で、大変なこと、楽しいことなどお話聞きたいです。

工藤
大変なのは、勉強法が分からないことですね。自分にあった勉強法がわからない。テキストへの向き合い方がわからないんです。

例えば、仕事上でカラーコーディネータの資格を取ろうとしたときに、勉強して記憶することができない。何から手をつけていいか分からないのですね。

少なからず、大学受験やテストに向けた勉強をしている人は自分なりの方法を身に着けているので違うのかなと。

うれしいのは、一緒に作り上げたものを大学生に講座として届けて一通り終わったときに、大学生は泣きながら「この講座受けてよかった」、「みんなで同窓会したいね」と言っていたんです。

自分の力で、コミュニティを作り上げていけることを体感するときに、そういう機会を作り出せたのが本当にうれしいです。出会いは偶然のようで必然なので。

また、高校生に授業をするときに「どんなことをやりたいの」と聞いて、「本当にやりたいことってなんだろう」と話をして、次のアクションにつながることに携われた時もとてもうれしいですね。

特に、Foraの方々は、「できないなら色々な人と一緒に作っていけばいいじゃん」「まずはやってみたらいいじゃん」となるので、とても前向きに取り組むことができています。

代表の藤村さんにはとてもお世話になっています。「学歴無いから」と不安をつぶやく自分の相談にずっとのってくれました。「理世菜はできる」と言い続けられて。できるまで付き添ってくれました。

「学歴」を手放すことで得たもの

古屋
周りの人の支えが、自信につながっていますよね。工藤さんにとって、一番大きかった決断はなんだったでしょう?

工藤
いろいろありますが、やはり、去年大学に行かないという決断をしたことです。その決断にも色々な出来事があり、大きかったのは法政大学の安田先生に「あなたは、それだけやりたいことがはっきりしているんだから、大学じゃなくて、大学院じゃない」と言われたことです。

「大学に行かない」と割り切った瞬間から、自分のやりたいことに全力コミットができるようになった。「本気で向き合えるようにしたいときに、何かを手放す」ことがとても大事だと思いました。

でも悩みました。「〇〇大学に行っています」、という学歴がある自分と無い自分とを比べて想像して。学歴が無いというだけで自分は劣っていると感じることもあり、焦りもあったんです。

でも、経験を積んでいくことで「そんなに変わらないのでは」と思えてきています。

古屋
5年後はどんな姿でいたいですか。

工藤
学校の先生とつながっていたいです。ファシリテーション講座を学校の先生にやりたいです。先生のファシリテーション能力はとても高いけれど、自覚していない先生も多いので、その先生方のノウハウをベースに若手に継承していきたいですね。

ベテランの先生と若手の先生をファシリテーションでつなぐというような。

古屋
どんな職場も、世代交代がうまくいかないことが悩みですから、教育現場にとってもとても意味のあるものになりそうですね!

では、最後に、若い世代の方々へのメッセージをいただけますでしょうか。

工藤
「こうじゃないといけない!」というのは単なる思い込みのことがあります。何かしてみたいということが見つからなくてもいいから、まずは一人話せる人を見つけて、自分の思いを語ることが大事だなと思います。

「何もやりたくない」と言っている高校生に「寝るのは好き?寝心地のいい枕があったら良くない?」と言ったらとても盛り上がったこともあります。

自分から勇気を出して話せば、「好きなこと」、「やりたいこと」は誰にも絶対にある。何でもいいので、好きなことについて一つ調べてみようと。それが伝えたいことですね。

古屋
「自分の思いを語ること」・・・劇団や討論会、そして今のお仕事で人の前でお話したり表現することを積み重ねて来られた、工藤さんらしいメッセージですね。本日は、ありがとうございました!

「本気で向き合いたいときに、何かを手放す」こと 中編

工藤理世菜さんは東京都出身の21歳。大学を1年で中退したのち、大学時代からインターンシップをしていた職場で正社員として、なんと大学生向けのファシリテーション講座を主催しています。インタビューでも心を動かされる言葉がたくさんありました。

前回 「本気で向き合いたいときに、何かを手放す」こと 前編

本人:写真右下

デフォルトで「先生になるんだ」と思っていた

古屋:
劇団もやっているのですよね?

工藤:
そうですね。母親がミュージカルダンサーだったこともあり、演劇を高校生からやっています。高校2年に先輩が劇団を立ち上げた時に一緒に参加しました。

劇団ファミリアという名前です。そんなこともあり、人前に立って思いを伝えようとするというのを大切にしていますね。

古屋:
高校時代にお世話になった先生はいますか?

工藤:
大好きな先生がいました。1年生のときの担任ですが、自分の人生を変えてくれた先生です。私は小中といじめられていたので過去を振り返るのが怖かったんです。私の高校には「人間学」という授業がありました。

「人間とは何か」からはじまる変な授業なんですが、いろんな価値観を知るということをやります。その担任の先生はその授業も担当してくれて、「アイデンティティの確立」という授業があって、自分自身を見つめなおすのが恐怖だった自分は向き合えなかったんです。

そこで、その担任の先生が夜、帰宅時間の19時30分までずっと聞いてくれたり、ホワイトボードを使って書き出してくれたとか、一人の人間として向き合ってくれたんです。

その先生がいなかったら過去と向き合えなかっただろうし、今の自分はなかったと思います。特に、「本当のお前はどうなんだ」と良く聞かれて、それはすごく記憶に残っています。

古屋:
素晴らしい先生に出会って、素晴らしい経験もして、そして大学に入学したんですね。

工藤:
そうですね。もともと大学に行こうと思ったのは、幼稚園のころから祖母から「公務員になりなさい」と言われていたことがあります。「先生になれ」とも言われていて、高校2年までデフォルトで「先生になるんだ」と思っていたんです。

でも高校3年生頃から、ブライダルプランナーになりたい、企画づくりで人の幸せを形にするのが好きだから、と思い出して。だから、先生にもブライダルプランナーにもなれる学校としてフェリス女学院に入学しました。

OGにブライダルプランナーが多くて、教職も取れたんですね(笑)。そうして、キャリアを考えたうえで大学は絶対行くものだと思っていたんです。

大学にいかないとその先のキャリアがないと思い込んでいて。高校から奨学金を借りていたんですが、大学も借りました。それでも抵抗はありませんでした。

本人:写真右中段

社会人大学院にいきたい

古屋
大学時代はどうでしたか?

工藤
大学に入ってすぐはキラキラした女子大生生活を想像していました。しかし入ったら、授業は眠い、みんな寝ている。やっぱり「自分のやる気があればまわりなんて関係ない」訳ではないですよね。

だから、落ち込みました。単位も一生懸命とっていたけど、辛い授業、なんでやっているかわからない授業は全くやる気も出ずギリギリ出席でギリギリ単位だけとっていました。

大学には何とか1年は行っていたんですが、結局学費が払えないという話になってしまい退学に。その後、2年間は入学金半分で再入学できると言われましたので、当時は大学にすぐ戻る予定でやめたんです。

ただ、去年の6月に自律神経失調症になって、頑張らなくてはならないプレッシャーで3か月くらい休んだことがありました。そのときに、大学になぜ行くのか、と思い直しました。

Foraにいて、学校の先生ができる部分とそうでない部分がはっきりとわかってきましたし、そこに関わることの楽しさを知ったので。なので、大学時代から2年くらい働いていたForaで正社員に誘っていただけたので半年前から正社員として働いています。

古屋
2年インターンシップをした職場で、いま正社員として働いている、というような感覚なのですね。アルバイトもたくさんしましたか?

工藤
たくさんやりました。高校時代から、ドラッグストア、寿司屋、塾の講師、ステーキ屋さん、イベント会社とやってきました。最初のドラッグストアが一番楽しかったですね。社会にはじめて貢献できた気がしました。

寿司屋では、店長が一回きてくれたお客さん、ボトルをキープしてくれたお客さんの名前を顔を見ただけで絶対に当てるんです。これがすごくて、何とか自分も覚えたいと思って。

ラベルと顔を交互に何十回も見て、顔のイラストも描き、そして自分もボトルキープしたお客さんの名前を呼べたとき、それで喜んでもらえたときはめちゃくちゃ嬉しかったです。

古屋
そのアルバイトと並行して、Foraでも仕事をしていたのですよね。

工藤
そうですね。Foraも、最初は就職するつもりは全くなかったんですが、去年の11月に大学を行かないと自分で決めて、はじめて正社員を意識しました。大学も、大学院に社会人入試で入学すればいいと思っていますし、何年か後には社会人大学院に行きたいと思っています。

なんとなくの大学の4年間って若い時期で一番多感な時期で、一番吸収できる時期、なのに漫然と通ったら本当にもったいないと思って。若いというだけでいろいろな出会いが貰えますし。

「本気で向き合いたいときに、何かを手放す」こと 前編

工藤理世菜さんは東京都出身の21歳。大学を1年で中退した後、大学時代からインターンシップをしていた職場で正社員として、大学生向けのファシリテーション講座を主催しています。インタビューでも心を動かされる言葉がたくさんありました。

“自力で”見つけた就職先

古屋星斗(一般社団法人スクール・トゥ・ワーク代表理事、以下省略):
本日はありがとうございます。工藤さんは現在21歳ということですが、まず、今どんなお仕事をしているのか教えてください。

工藤理世菜さん(以下、敬称略):
よろしくお願いします。現在は、一般社団法人Foraという団体で正社員として働いています。Foraでは、大学生に対するファシリテート講座の講師やマネジメントなどを行っています。また、劇団で役者や、シンガーソングライターとしての活動も行っています。

古屋
いきなり21歳にして、多彩な経歴でびっくりしておりますが、そんな工藤さんのこれまでについて伺っていきたいです。

工藤
私は東京都大田区の生まれで、4人兄弟です。兄、姉、自分、妹。家族の話だと、兄はミュージシャンをやっていたりします。両親は私が幼稚園のときに離婚し、母親がダンススクールを経営しながら、祖父母が家にいてくれて育ててくれました。

学校は、小中学校が公立。高校は私立に通いました。大学にも一年間通っていたのですが、金銭的な問題で退学せざるを得なくなり、やめています。

古屋
高校生のときはどのようなことに力を入れていましたか?

工藤
高校は、私立の中高一貫女子高だったのですが、大学の指定校推薦に流れる人たちが多く、「なんとなく決めている」感じがしていました。私は大学に進むにあたって、自分自身のキャリアの悩みとかを話し合う機会が必要なんじゃないかな、と思いました。

そこで、社会人の方を高校に招いて企業が抱えている課題点を開示して、その課題について高校生がディスカッションや討論をする活動を始めようとしました。

その討論を通じてキャリアの話もできるし、高校生たちが解決策を考えてプレゼンをすることで、企業の方にとっても想像力を貰えるというプログラムです。

そのプログラムを実行に移そうとしたときに、高校の先生に「既存の団体を見たほうがいい」と言われました。そこで、近くで開催される合同シンポジウムに招待されてたことにFacebook上で気づきまして。

その参加団体についていろいろと調べて、全部見て、探し当てたのが今所属しているForaだったのです。そこで、卒業後、大学時代からインターンみたいな形で関わっていました。その後、正社員になりました。

「母の同級生の息子さんの友達」

古屋
自力で見つけたのですね!そもそも、その行動に移すきっかけになった企業を呼んだ討論プログラムのアイデアは、どこで思いついたのですか?

工藤
私は、中学までいじめを受けていて、人と話すのがとても苦手だったんです。目が全く見えなくなったこともあります。でも、高校に入って先生にもまわりの友人にも恵まれて。

外にも出ていく機会も貰いました。それが、学生討論会です。同級生がたくさんいて、外の自分の知らなかった価値観を知ることができることがめちゃくちゃ楽しかった。

そして、校内でも討論会を企画しました。学祭以外有志活動が禁止だったのですが、先生に承認を得るまで企画書を出し続けました。生徒会の先生が最後、「やってみたら」と言ってくれたときはうれしかったですね。

その学生討論会に行った元々のきっかけは、「母の同級生の息子さんの友達」からの紹介です。妹が「母の同級生の息子さん」に勉強を教えてもらっていて、私もそこで「勉強を教えて」と言ったら、その友達を紹介されたんです。

その人が校外の人を招いての討論会をやっていてそこから始まりました。いろんな人たちと触れ合って、「自分の世界は狭いんだ」みたいな気づきがあり。それが討論会を企画するようになったきっかけですね。

大元のきっかけを考えると、他人も他人ですね(笑)。でもとても感謝しています。

古屋
赤の他人ですね(笑)。その中で、うれしかったことや思い出深いことなど教えてください。

工藤
高校二年生のとき、弁論大会に出ました。東京私学の部の弁論大会で準優勝したんです。準優勝した人と優勝した人は、全国大会に行く話があったんですが、先生が教えてくれなかったので、準優勝して初めて知りました。

「受験生なのに」とその時はびっくりです。でも、高3の夏に広島で開催された全国大会に参加して、私は離婚した父を亡くした経験や戦後70年の話をお話しさせて頂きました。一生の思い出ですよね。

その後も、大学のときの授業でディベート論があったんですが全勝してそれもちょっとうれしかったです。自信も付きましたし、プレゼン力は鍛えられたかもですね。

Foraで大学生向けのファシリテーター講座を主催していますが、講師もやっていますから、今に生きています。

2020’sの若者キャリア論 牛島悟(前人未到CEO) × 古屋星斗(スクール・トゥ・ワーク代表理事)④

2020年代の若者キャリアはどうなっていくのか。今回は、非大卒向けキャリア支援サービスの「サムライキャリア」などを運営する株式会社前人未到の牛島悟さんと対談します。

前回 2020’sの若者キャリア論 牛島悟(前人未到CEO) × 古屋星斗(スクール・トゥ・ワーク代表理事)③

古屋
私が多くの若者を見ている中で、ハッシャダイから出ている子たちが大卒の人たちと比べて、圧倒的に差があると感じていることがあるのですが、それが読み書きなんですよ。読み書きのスピード、中でも、読み、インプット能力が非常に差があると感じます。

しゃべりの部分、英語でいうとListeningとspeakingは差がなく、ハッシャダイとかの子たちとかはむしろうまいと思います。弱点がある、それが明確に分かれば、その弱点を補うためのコンテンツを提供するだけなので、そういう差を挽回できる場が与えていけるようになっていくと思うのですが、非大卒支援をやられていて実際どう思われますか?

牛島
そうですね。何かそういうコンテンツの提供ともう一つ企業の見方を変える必要があると感じていて、普通に考えると、18歳人材って、学校ではなくて、育てる力がしっかりと備わっている企業であれば、20歳のころには化け物みたいになっていると思うんですよ。

これって、めちゃくちゃバリューも高いですし、ロイヤリティも非常に高いという人材が生まれる。ハイレイヤーのスタートアップの高卒の人たちって、良くも悪くもすごく染まっているんですが、もし彼らはそこから抜け出そうとするとき、選択肢は山ほどあるんですよ。

なので、企業側の高卒人材への見方を変えるのは非常に大事だと思いますよね。採用の仕方が分からないし、した後のメリットが分からないみたいなそういうのが多いんですよ、確かに今を比較したら、劣っているとは思うんです。

しかし、彼らが社会人として4年後新卒の子たちと並んだ時は比べ物にならないのは一目瞭然ですよね。一応、HR領域のすごい先見性を持っている企業とかはこの考えがはまるんですよね。この人たちをいかに巻きこめるかが大事かなと思いますね。

古屋
そうですね。企業側のメリットはどういったものがあるでしょうか。

牛島
簡単なのは、1人の成功事例を作って、企業側が広報にも使えばよい。すると採用力に直結しますね。

古屋
ZOZOさんとか学歴問わず採用していたのですが、あまり外に発信していないですよね。採用の時に。先ほどおっしゃっていた、育てる企業というのはどういうイメージですか。

牛島
業種とかによるのですが、例えば営業はロジカルなものなので、PDCAをしっかり振り替える体制が整えられているか、結局考えてやってみてダメだった、やる気なくなる、終わりみたいな子をどれだけなくすか。

この仕組みを組織でサポートする力があると、企業の力自体が非常に強いんですよね。これでうまくワークしたら良い非大卒人材が増えてくると思います。あとは、企業側の仕事はマインドセットみたいなもの、自己評価と他己評価を合わせてあげることも仕事だと考えています。

「自分はできる」と思いすぎている子がいたら、まず、自分を認識させるみたいな、そういうのが大事だと思います。

古屋
確かにそういった意味ではインターンとかは一度企業を体験しておくという意味では大事ですね。最近では東大生いわゆる最優秀層の進路が大きく変わってきていて、マッキンゼーとか行かなくなってきているんですよね。

最近の優秀な東大の院生は大手企業からくる案件のPM(プロジェクトマネージャー)とかを任されるんですよ。なので、初職、いわゆるファーストキャリアで昔ながらの「順当な歩み方」をしなくても、大学生でPMなどを経験している分、他とは違うキャリアステップを踏む人が増えているんですよね。

大手の会社の30歳くらいの仕事を学生のうちからやってしまうという。

牛島
そうですね、最近の大学は本当に二極化していますよね、めちゃくちゃ安定志向でその場で思考停止しているか、めちゃくちゃ意識高くて、アンテナはっているかのどっちかですよね(笑)。

古屋
確かに安定志向は多いですよね、しかもそれは学校のレベルに関係ないんですよね。本当に最近のとがった若者のキャリアプランは面白くなっています。まさに商社つまらんからベンチャー、のような。

牛島
よく聞きますね。でもそれアメリカだとそれが逆らしいんですよね、若い優秀な子はスタートアップに行ってそこでさらに優秀な奴が、大企業の役員になるみたいなのを聞きますよね。

古屋
その理由としては、アメリカは基本的に日本のような一括採用ルートがないので、多くがインターンシップ採用なんですよね。だから、いきなり大企業に採用されるというルート自体が狭いんですよね。

そういった意味では日本の就職活動というのは非常に合理的な仕組みでできていてですね、これは世界的に見てもすごいことなんですよね。良し悪しは当然ありますけど、若者の失業率を下げるという点では、非常に効果的であるということは間違いないので。

僕はある種、最初の2020年のキャリア問題について話を戻すとすれば、それはインターン直結採用なんですよね。それで今はインターン直結採用は経団連ルールでダメってなっているのですが。

牛島
え、大学ってダメなんですか(笑)。みんなやっていませんか?

古屋
そうなんですよ(笑)。でも明確にダメといわれているんですよ。一応ルールなので基本的に日本のほとんどの大企業はそういう建前でやっています。

ただ、インターン直結採用を全面解禁することによって、若者はもっと良いキャリア選択ができ、ミスマッチなども減るのではないのかなと考えています。

最後に、牛島さんは2020年以降のキャリアについてどう考えられていますか?

牛島
私は全体として、キャリアの非対称性は薄まっていくのではないかと考えています。今おっしゃって下さったインターン採用とかいろいろな企業がやっているじゃないですか、まさにリファーラル採用やダイレクトリクルーティングとかもどんどん増えていくので、特にリファーラルは素晴らしいですよね。

リファーラルは求人を理解している人が、人材を引っ張ってくるので、ミスマッチが基本あり得ないんですよ。今色々な求人媒体が出てきて、非対称性は薄まり、リファーラルなどの増加でかなりのレベルまで薄まると思います。

ですが埋まっていない部分が2つあると思っていて、それが未経験層とハイクラスだと思っています。未経験層は先ほども話しましたが、実は表に出てこない「ハイクラス」のレイヤーも埋まっていないと思います。

なぜかというと会社のポジションの建前とかいろいろあるので、上に上がりたいとかあるので、なかなか表立って出てこないんですよね、そこはサービスとしての介在価値が高いと僕が勝手に思っています(笑)。

古屋
最優秀層の観点はあまりないので非常に面白いですね、一般的に学びなおしをしている人が増えているのですけれども、隠れキリシタンのように隠れてしまっているんですよね、それでとある大学の先生が聞いたときには半分ぐらいの人たちが黙って学びに来ていると言っていたんですよね。

邪魔されるのが嫌だとか出世に響くとかいろいろな理由があると思いますが、そういうハイエンド層が見えてこないというのはあると思いますね。

色々な見方が出てきてまだまだ、話が止まらないですが、今回はここまででとして、今後とも様々な形で協力できればと思います。本当にお話しできて楽しかったです、ありがとうございました!

牛島
こちらこそありがとうございました!

 

 

株式会社前人未到
代表取締役社長 牛島悟
福岡出身、新卒で大手メーカーに入社。その後スタートアップ、メガベンチャーにてTOPセールス。AI系ベンチャー企業上場を牽引後、起業。

 

一般社団法人スクール・トゥ・ワーク
代表理事 古屋星斗
1986年岐阜県多治見市生まれ。大学・大学院では教育社会学を専攻、専門学校の学びを研究する。卒業後、経済産業省に入省し、社会人基礎力などの産業人材政策、アニメ・ゲームの海外展開、福島の復興、成長戦略の立案に従事。アニメ製作の現場から、仮設住宅まで駆け回る。現在は退官し、民間研究機関で次世代の若者のキャリアづくりを研究する。

 

2020’sの若者キャリア論シリーズ

2020’sの若者キャリア論 牛島悟(前人未到CEO) × 古屋星斗(スクール・トゥ・ワーク代表理事)①
2020’sの若者キャリア論 牛島悟(前人未到CEO) × 古屋星斗(スクール・トゥ・ワーク代表理事)②
2020’sの若者キャリア論 牛島悟(前人未到CEO) × 古屋星斗(スクール・トゥ・ワーク代表理事)③
2020’sの若者キャリア論 牛島悟(前人未到CEO) × 古屋星斗(スクール・トゥ・ワーク代表理事)④

2020’sの若者キャリア論 牛島悟(前人未到CEO) × 古屋星斗(スクール・トゥ・ワーク代表理事)③

2020年代の若者キャリアはどうなっていくのか。今回は、非大卒向けキャリア支援サービスの「サムライキャリア」などを運営する株式会社前人未到の牛島悟さんと対談します。

前回 2020’sの若者キャリア論 牛島悟(前人未到CEO) × 古屋星斗(スクール・トゥ・ワーク代表理事)②

古屋
若者の行動の変化についてお話を伺いましたが、次に高校生の一人一社制についてはどう考えていらっしゃいますか?実は今、文科省と厚労省で一人一社制の見直しが始まっていまして、今、見直されている理由として、毎年出ている国家全体の戦略というのがあるのですけれども、こちらに一人一社制は見直せと書かれているんですよ。この問題についてどうあるべきだと思いますか?

牛島:
私は一人一社制はないほうがいいと思います。理想だけを言うなら教師のリテラシーを上げないといけないと思います。生徒がどう思うかというと、やはり、一番身近な大人なので、「まともなことを言っている」と子どもは思うんですよ。

だから疑うことなく就職をするのですが、それがミスマッチに繋がっている原因になっている。学校教育のプログラムで東京に行ってインターンを行うなどの都市体験学習とか、そういうのを必修で行ったりすると子供たちも自らの進路を考えるようになって変化が出てくると思うんですけどね。

古屋
そうですね、実はそこがすごく問題点でして、地域に人を残さないといけないという議論がされている。地方の若者をどれだけ東京に行かせないかという議論です。

全国の割合でいうと首都圏の高校生は全体の30%弱を占めていて、それが大学になると40%、就職1年目、つまり新卒者になると首都圏では50%になると言われています。今の議論でいうと、いかにこの何十%の若者を地方に帰らせるかというのがあります。

あと、もう一つあるのが、いかに首都圏の大学に行かせないようにするかも議論されています。結構この声が政治的にも非常に大きいんですよね。

牛島:
地方創生の考えですよね。

古屋
そうですね。「移動」とは、全く逆の発想になっているので、僕は折衷案としてエリア内移動などを促すようなプログラムがあるといいと思っているのです。

いきなり東京ではなくて、地方の主要都市への移動。仙台や福岡なんかは比較的ITベンチャーなども多いのでいいかと思います。

牛島:
いきなり東京ではなくても、人材の流動化を図る形ですよね。あと私が非常に思うのが、高校の就職活動に民間が入れないのが良くないと思うんですよね。

当社は直接はしていませんが、やりとりがハローワークと学校の先生しかできないので、もし、そこの方々が悪い人だったら生徒に「お前ここに行け」と、強制感を持って発言することもできるわけじゃないですか。

それで、結果的に早期離職率などの数字を見ると失敗しているじゃないですか。サービスの民営化は歴史的に見ても質を大きく発展させているので、どういう形でもいいので入れるべきだと思うんですよね。硬い公的資格を新たに設けたりするなど、いくらでもやり方はあるので。

古屋
実はこの議論が確か2003年ごろ小泉政権下で行われているのですよね。規制改革の議論がされているときに、八代先生という有名な経済学の先生が言っていて、高校の卒業者の就職マーケットが50年くらい変わっていないと発言をされたんですよ。

そしたら、それを機にもっと民間の力を借りて発展させるべきではないかという声が民間団体から提言されまして、それに八代先生と小泉政権がそれに乗っかって、厚労省をかなり詰めたんですよ。

その時の厚労省の課長の回答が、「規制はしていません。法律上はOKです。」と言っているんですね。ですから、民間参入は実は大丈夫なんですよ。

ですが、結局ハローワークと学校の構造があるので、民間が入るのは難しいんですよね。厚労省も、構造を変えるとは言っていない。ですが結局、議論が「OKですよ、どうぞやってください」で終わってしまったんです。

最初の問題提起は、「このマーケットを変えなさい」という行政への問題提起だったのに、「どうぞやってください」が回答になっていて、問題がすり替えられているんですよね。

結果15年たった今も、80%以上の高校生が、ハローワークを経由して就職をしていますので、構造は全く変わっていません。ハードルが非常に高いので民間は誰も参入できずに終わってるんです。

ですが最近になって、御社やハッシャダイさん、ジンジブ(高校生向け求人サービス会社)さんなどの多くの会社が参入するようになってようやく変わるのかなと思っています。

牛島:
そうなんですね、実は当社は新卒を扱っていないんです。応募は結構あって、ニーズも高いんですが行っていない理由が3つあって、一つが親御さんの理解とかが難しく最後の後押しが構造上しづらいということ。

もう一つは企業側のネックがあって、企業側が法律違反だと思っていることが非常に多いんですよね。そして、もう一つは未成年というのが一番大きいです。

実は18歳、19歳ってほとんど求人がなくて20歳から一気に増えるんですよね。あとは、この子たちをどう扱っていくか、というのを企業側が分かっていないんですよね。

古屋
そうなんですね、未成年のところはもしかしたら民法改正がきっかけで変化があるかも知れませんね。ですが、ハッシャダイさんとかも新卒をやっていないですもんね。

牛島:
そうですね、でもやっぱりビジネスとして成り立たせると考えると難しい部分が多いですよね。やっぱり参入しない理由としては、ビジネスとして儲からないというのと、工数がめちゃくちゃかかるというのが最大の理由だと思います。

この工数がかかる部分は誰でもできるというわけではないのがポイントだと考えています。なぜなら、彼らは、まだ成熟していないので、言語化能力が発展途上な部分があるのでそこを支援してあげないといけない。

自分の考えていることとかを伝える能力がまだ発達途中で、自分の強みを引き出す能力がまだないので、この引き出すのを大人が手伝わないといけないんですよ。

そこは、ハイクラスの子たちとかは逆に何もしなくていいんですよ、求人を紹介するだけで勝手に進んでいくので。それをピンポイントでバシッと決めてあげればいいんですけど、僕らが相手にしているところは、過去の経験から自分が一番大事にしているもの今の時点で何なんだろうかっていう現在地点と将来の理想というのをすり合わせるところから入ります。

これは、教える側のレベルが高くないと無理なんですよね。僕らのところはそれがたまたまハイクラスではまったっていう感じですね。

 

 

株式会社前人未到
代表取締役社長 牛島悟
福岡出身、新卒で大手メーカーに入社。その後スタートアップ、メガベンチャーにてTOPセールス。AI系ベンチャー企業上場を牽引後、起業。

 

一般社団法人スクール・トゥ・ワーク
代表理事 古屋星斗
1986年岐阜県多治見市生まれ。大学・大学院では教育社会学を専攻、専門学校の学びを研究する。卒業後、経済産業省に入省し、社会人基礎力などの産業人材政策、アニメ・ゲームの海外展開、福島の復興、成長戦略の立案に従事。アニメ製作の現場から、仮設住宅まで駆け回る。現在は退官し、民間研究機関で次世代の若者のキャリアづくりを研究する。

 

2020’sの若者キャリア論シリーズ

2020’sの若者キャリア論 牛島悟(前人未到CEO) × 古屋星斗(スクール・トゥ・ワーク代表理事)①
2020’sの若者キャリア論 牛島悟(前人未到CEO) × 古屋星斗(スクール・トゥ・ワーク代表理事)②
2020’sの若者キャリア論 牛島悟(前人未到CEO) × 古屋星斗(スクール・トゥ・ワーク代表理事)③
2020’sの若者キャリア論 牛島悟(前人未到CEO) × 古屋星斗(スクール・トゥ・ワーク代表理事)④

2020’sの若者キャリア論 牛島悟(前人未到CEO) × 古屋星斗(スクール・トゥ・ワーク代表理事)②

2020年代の若者キャリアはどうなっていくのか。今回は、非大卒向けキャリア支援サービスの「サムライキャリア」などを運営する株式会社前人未到の牛島悟さんと対談します。

前回 2020’sの若者キャリア論 牛島悟(前人未到CEO) × 古屋星斗(スクール・トゥ・ワーク代表理事)①

古屋
興味深いです。若者のキャリアを研究していて、最近若者のキャリア観がかなり変わってきていると思っています。ですが、大企業の人事とかがそれに追い付いていけていないと思っています。ある大手商社なんですけど、20代が退職しすぎていて、そしてその多くがベンチャー企業に行くというのを聞きます。

でも、企業の人事の偉い人はなぜ辞めていくか分からないそうなんです。大手商社さんなんかは30歳時点の平均年収が1,000万円前後ですし、ベンチャーに行くと2割から3割以上下がるのになぜ辞めていくか理解ができない。

ただ、辞めていく彼らに話を聞いていくと明らかに合理的な理由で辞めていくんですよ。理由は、ずばり「安定志向」。自分のスキルを様々な場所で身に付けることによって、それが安定につながると彼らは答えるんですよ。
 
牛島
私もそのお話はあると思います。私は「時間軸」で見られていないっていうのが問題だと思っています。
 
古屋
そうですね。また、もし商社に100%フルコミットではなくて、他に20%その他にも20%みたいな選択肢があれば若手の選択は異なると思います。つまり、今の大企業がやろうとしていることは、若者に「国債を100%買え」と言っているようなものなんですね。

大企業だけでキャリアを作るという国債のような長期安定的だけどあんまり期待ができない仕事を。投資家で国債だけ買う人は馬鹿ですよね(笑)。

普通は、「国債も2割買うけど、JASDAQの株も2割買って」みたいな、その発想に近い感覚が出てきているのではないかと。大企業はそういう子たちに対して阻むことはするのですが、応援するということはしないんですよね。

そして、優秀な人材をため込んでいて非常にもったいない。私はその中でももったいないなと思うのが高卒の子たちで、毎年17万人くらい就職しているのですけれども、その内の4割が3年以内に離職してしまうんですよ。

それが凄くもったいないなと思っていて、よく女性の方やシニアの方たちの活用は世間で言われるんですけど、「人材の第3の埋蔵金」だと私は思っています。
 
牛島:
当たり前ですが、仕事において大事なものは学歴ではなく経験じゃないですか。高卒の子たちってファーストキャリアにおいて、サービスの高度化が起きていないっていうのが最大の要因だと思うんですよね。

少し適当な例えですけど、高卒の子が草取りの仕事をしていて、大卒の人は営業に行きます。これだと、営業の人は草取りもできるじゃないですか。でも、草取りの仕事の人は営業はできないんですよね。それでこの二人を比較すると、本当はできないわけじゃないけど「やらせてないしできない」と判断するわけなんです。

個々に明確に線が引かれている。ファーストキャリアでまず、職務領域を選べないというのが問題になっていますよね。そこを解消するだけで、インパクトは起こるのかなって思いますね。結局その営業職のような経験をすることが選べるだけで、高卒者の進路選択に大きな影響がありますよね。
 
古屋
確かにおっしゃるとおりですね。大卒で製造業に就職する人は10%程度なのですが、高卒で就職する人は40%もいるんですよね。これは普通に、産業構造などからの論理的な説明ができないじゃないですか。

何かしらの「引力」が働いているからこうなっているわけで、社会全体を見ると、製造業の就業者ってもはや15%程度なのに、なぜか高卒者は半分近くの人が行っているのだと疑問に思いますよね。
 
牛島
そうですね。理由としては地方から見たときに地方の雇用を守るというのと、もう一つは、先輩も行っているし、先生も推し進めるので疑う余地がないということだと思うんですよね。

この前お笑い芸人の高卒の人が就職する際に、先生から強烈な「クロージング」を受けたというのをインタビュー記事で読みました。そこでの内容が、15社くらいリストがあって、半分製造業のもう半分が飲食みたいな感じで、「早く選ばないと先輩にも後輩にも迷惑がかかるよ」みたいなことを教師から言われたらしいです。
 
古屋
私も聞いたことがあります(笑)。なんかそれって大学の理系の研究室に似ていますよね。3年以内に辞めたら後輩が来られなくなるみたいな。推薦が取れないっていう話ですよね。

あと、私は教師の方々の大多数が、民間を経験したことないのに進路指導を行うのは限界があるのではないかとも思っています。
 
牛島
それは私も思います(笑)。教師の95%が民間未経験ですから。
 
古屋
そうですよね。先ほどの高校生の問題ですが、今後偏差値の高い通信高校なんかが増えてくると思います。クラーク高校やN高なんかは学校全体ではまだそれほど高くはないのですが、偏差値が突出して高い子たちがいるんですよね。例えば、桜蔭中学出身の女の子がN高に入っているんですよね。

普通に学ぶより、自分のやりたいことやった方がいいと考えるような子たちが入ってきているんですよね。それで、N高生に聞くと最近流行っているのがクラウドファンディングなんだそうです。

クラウドファンディングで学費を集めるのが流行っているそうです。ある子は沖縄県出身で親から仕送りなど一銭ももらっていません、それをYouTubeにアップしてクラウドファンディングで募集をかけているそうです。日頃はオープンスペースのカフェなどで勉強をしている。そんな子たちが出てきている。

そこで一つ思ったことが、ハッシャダイに行くような子たちやサムライキャリアに行くような子たちもそうですが、何らかの「きっかけ」になるようなものがあると思うんですよね。

それが「人」だったり、「情報」だったりする。今までの高校生は「人」経由で就職していたと思うのですが、今の子たちって人以外にも面白いブログを読んだとか、Twitterがきっかけとなったというか、「きっかけ」の強度が弱くても、今までとは違った動きやキャリアを築く子たちが多いなと思いますね。
 
牛島
そうですね、私も個人側、ユーザー側の意識が先に変わってくると思います。そっちの方が早く変わると思っていて、今って情報開示されているので、リテラシーが高い子供が非常に多くなってきているんですよね。

それと今の子たちはSNSが日常にありますが、SNSって日常にありながらも、見たことのない世界の情報があふれているという点では、非日常なんですよね。その非日常と日常のギャップが昔よりも、行動するきっかけに大きく関わっていると思います。

 

 
株式会社前人未到 代表取締役社長 牛島悟
福岡出身、新卒で大手メーカーに入社。その後スタートアップ、メガベンチャーにてTOPセールス。AI系ベンチャー企業上場を牽引後、起業。
 

 

一般社団法人スクール・トゥ・ワーク
代表理事 古屋星斗
1986年岐阜県多治見市生まれ。大学・大学院では教育社会学を専攻、専門学校の学びを研究する。卒業後、経済産業省に入省し、社会人基礎力などの産業人材政策、アニメ・ゲームの海外展開、福島の復興、成長戦略の立案に従事。アニメ製作の現場から、仮設住宅まで駆け回る。現在は退官し、民間研究機関で次世代の若者のキャリアづくりを研究する。

 

2020’sの若者キャリア論シリーズ

2020’sの若者キャリア論 牛島悟(前人未到CEO) × 古屋星斗(スクール・トゥ・ワーク代表理事)①
2020’sの若者キャリア論 牛島悟(前人未到CEO) × 古屋星斗(スクール・トゥ・ワーク代表理事)②
2020’sの若者キャリア論 牛島悟(前人未到CEO) × 古屋星斗(スクール・トゥ・ワーク代表理事)③
2020’sの若者キャリア論 牛島悟(前人未到CEO) × 古屋星斗(スクール・トゥ・ワーク代表理事)④