変わる?学校から仕事への第一歩 (第3回 高校生の就職制度)

一般社団法人スクール・トゥ・ワークの設立を記念して、当団体の活動の目的と背景を知ってもらうために、当団体の代表理事の古屋さん、監事の小松さんと事務局スタッフで非大卒人材の奥間さんと、座談会形式で、「変わる?学校から仕事への第一歩」の連載をお送りしています。

前回 変わる?学校から仕事への第一歩 (第2回 大卒人材と非大卒人材の分断 後編)

高校生の就職制度

小松
第3回のテーマは高校生の就職制度です。前回、古屋さんから高校生の就職制度について一部説明がありましたが、「一人一社制」など、むしろ自由に選び放題過ぎて悩んでいる人すらいる大卒や大学院卒には信じられない制度かと思います。

古屋さん、まず現状の高校生の就職制度について教えてもらえませんか?

古屋
高卒就職者のルールは厳しい制度によって作られています。ルールは大きく2段階に分けられて作られています。せっかくなので詳しいお話をしますね。

第一段階は国によるルールです。毎年2月頃に文部科学省と厚生労働省が、「高等学校就職問題検討会議」というものを開催しています。ここで、求人票の統一様式や、統一スケジュールを決定します。

信じられないかもしれませんが、学校を通して企業が求人する場合、大学生でいうエントリーシートは全企業、国が指定するものを使う必要があるんです。

また、第二段階として都道府県ごとにまた「検討会議」があります。ここで、一人あたり何社まで受けられるか、などのルールが決められます。

一部の県を除いてほとんどの都道府県において、「一定期間までは一人一社までしか応募できない」という非常に生徒に厳しいルールが作られるのは都道府県の検討会議になります。

問題を難しくしているのは、こうした厳しいルールは法律で決まっているわけではない、ということです。単なる”申し合わせ”にすぎません。

このため、このルール以外で学校やハローワークを通さずに採用することも全く問題ないのですが、実態としては近年でも85%の生徒はこのルールに則って就職をしています。

こうした高卒就職者の就職システムは、いろいろな状況をもたらしているのですが・・・長くなりましたし、そのあたりはまた別の回でお話ししたいと思います(笑)。

小松
ありがとうございます。一人一社制などは法律ですらなく“申し合わせ”なんですね。しかも、実際には15%程度は、学校やハローワーク経由以外で就職している。なんかいろいろ適当ですね(苦笑)。ちなみに奥間さんや奥間さんの周囲の方には、この15%に該当する方はいましたか?

奥間
僕の周りでは、就職した方はみんな学校経由での就職でしたね。逆に15%もの方たちが学校やハローワーク以外で就職していることに驚いています(笑)。

小松
そうなんですね。専門家の古屋さんにお伺いしたいのですが、この高校生の就職問題ですが、一般の感覚では、だいぶ前時代的に感じますが、行政や学校の先生、採用する側の企業、人材会社はどのように考えているのでしょうか?問題意識は持っているのでしょうか?

古屋
実態が知られていないこともあり社会的な問題意識は大きくなってはいませんが、この部分に詳しい方であれば、さすがに前時代的だと思う方は多いと思います。

例えば、15年ほど前の政府の規制改革会議で、高校生の就職ルールが取り上げられたことはあります。その際に厚生労働省の担当課長は「高校生の就職市場に民間ビジネスが参入しても全く問題はない」と明言していますね。

また、ビジネスで高校生をマッチングしようという動きも少しずつ始まっています。学校の先生方も強く問題意識をお持ちの方がいらっしゃいますが、やはり目の前の生徒たちをブランクなく就職させるというミッションがありますから、その対応ということで今までのやり方を踏襲している状況です。

小松
いろいろ動きはあるものの、なかなか変わらないといったところでしょうか。高卒で就職した奥間さんは、この高校生の就職制度はどう思われますか?

奥間
僕の周りには、学校やハローワークといった限られた職種の中から就職した高卒の方もいます。また、大学や大学院を出て民間の人材会社などを利用し、多くの職種の中から就職した方もいます。

ただ、やはり進路に対する選択肢は多いにしたことはないと思っています。僕の出身校は、進学校ではなかったので、卒業後は就職する人が沢山いる環境でしたが、伝統的に作り上げられてきた当たり前の就活制度を前に、みんな就職に対してどこか悲観的になっていました。

やはり、僕も含め、“仕事はキツい労働”というイメージばかりが強くあったように感じます。この僕たちが当たり前だと思っていた前時代的な制度が取り払われることで、みんなが自分のキャリア形成に対して最善の進路選択ができるようになって欲しいですね。

 

「変わる?学校から仕事への第一歩」連載シリーズ

第1回 はじめに
第2回 大卒人材と非大卒人材の分断 前編
    大卒人材と非大卒人材の分断 後編
第3回 高校生の就職制度
第4回 高卒の就職率
第5回 「七・五・三」現象
第6回 離職した若者はどこへ行くのか
第7回 現在のキャリア教育
第8回 ハローワークの役割
第9回 地域格差
第10回 就職先企業の規模
第11回 初任給の格差
第12回 スクール・トゥ・ワーク

新年のご挨拶

新年あけましておめでとうございます。

今年は2019年。21世紀も、はや5分の1まで来ました。箱根駅伝の往路でいえば今年の元旦は、一区の最終盤、東京都と神奈川県の境にかかる六郷橋を過ぎたあたりでしょうか。

昨年末に立ち上げました我々スクール・トゥ・ワークも、2019年は活動を本格化させてまいります。昨年は、創立記念イベントやプレ授業、外部講師をお招きしての若者の早期離職研究会の開催など、「学校から仕事へ」をコンセプトに活動を行ってまいりました。2019年も学校での生徒さんとの対話・講演の機会や、学校と仕事についての研究会を開催してまいります。

スクール・トゥ・ワークがそうした活動を進めるのには、21世紀の日本は、人口に占める若者の比率が世界で最も少ないことを運命付けられた国であることが背景にあります。しかし「少ない」ことは「つまらない」、「楽しくない」ことを意味しません。

21世紀の日本を若者が最も輝く国にするために、本年も皆様のお力添えを頂ければ幸いです。

箱根の往路も、六郷橋までは集団走だったのが橋を超えると差がつきだします。2019年は「差のつく年」になりそうです。それでは、本年もどうぞよろしくお願い致します。

 

一般社団法人スクール・トゥ・ワーク 代表理事 古屋 星斗

 

変わる?学校から仕事への第一歩 (第2回 大卒人材と非大卒人材の分断 後編)

一般社団法人スクール・トゥ・ワークの設立を記念して、当団体の活動の目的と背景を知ってもらうために、当団体の代表理事の古屋さん、監事の小松さんと事務局スタッフで非大卒人材の奥間さんと、座談会形式で、「変わる?学校から仕事への第一歩」の連載をお送りしています。

前回 変わる?学校から仕事への第一歩(第2回 大卒人材と非大卒人材の分断 前編)

大卒就職者と高卒就職者の分断

小松
大卒人材と高卒を中心とする非大卒人材という2つのコミュニティーの分断についてはいかがでしょうか?

古屋
分断は深刻です。どうしても人は自分と同じような人とつるみますね。大学に入れば同じ大学の友人と過ごす時間が増えますし、会社に入れば同僚と飲みにいったりします。

そんな中で、都市-地方、大卒-高卒といった互いに何を思うのかよく分わからない状態でコミュニティーの分断が進んでいます。見るテレビ、好きな芸能人からはじまり、キャリアにおいてどんな選択をする傾向があるのか、まで全く異なるといってよいでしょう。

また、ほとんどの人は、教育やキャリアを語る際に自分の体験をベースに語りますが、学校の先生、文科省から教育委員会などの行政官、そして政治家や学者まで、教育のあり方を決定するキーパーソンは全て大学卒です。

この意味は大学卒であることが悪い、ということではもちろんありません。問題は、人間はキャリアを語るうえで「自分の体験が極めて大きな比重をしめる」のにも関わらず、カリキュラムなどを作る人間の属性が非常に偏っていることなのです。

当事者である高卒就職者と深い対話をするなどして、少なくとも大学からの就活というルート以外について知らなければ、全体の50%にすぎない大卒による大卒のための教育・キャリア施策から脱け出すことは難しいと思います。

奥間
古屋さんがおっしゃっているとおりですが、都市部と地方、大卒と高卒でのコミュニティーの分断は明らかです。特に地方の多くの非大卒の方たちは、情報量が少なく、規制が多い中で就職活動をし、就職します。

それまでと同じ人間関係のまま、自然と県外や都市部など“外の世界”からの情報を遮断してしまっていることで、大卒で就職した方と比べ、キャリア設計において、様々な選択肢が見えにくい状態になっている方が多いなと感じます。

一方で、大卒の方のコミュニティーといえば、有名なところで慶應大学の三田会や一橋大学の如水会などの同窓会での規模の大きなコミュニティーがありますが自由な就職活動で社会へ出たOB、OGと関わる機会を多く得られており、非大卒においてもこのようなコミュニティーを創ることが必要だと感じています。

小松
情報量が少ないという点ですが、これだけネット社会になっても情報は制約されているという理解なのでしょうか?

古屋
大手就活サイトのようなサービスもなく、ネットではハローワークが運営している県別の求人サイトがあるだけですね。そのサイトすら一般には見られず、紙の求人票が基本という現状があります。

奥間さんのまわりの人たちはどのように情報を入手していましたか?

奥間
自分の周りでは、やはり学校の進路室にある求人票や情報サイトのみが情報源という感じでしたね。自分も含め、それが当たり前だと思っていました。

小松
ネット社会の盲点かもしれませんね。何でも検索できるのは検索エンジンとしての機能ですが、そもそも知っている概念、言葉でなければ検索できないわけですしね。情報格差が広がり、2つのコミュニティーの分断がより深刻化しているのかもしれません。

もっといえば、深刻化していることすら気づかないぐらい分断されているのかもしれませんね。

分断が解消されると、どうなる?

小松
逆に、この分断が解消されると、どのようなことが起こりうると思いますか?

奥間
得ている情報に大きな差があることに気づいていない高卒就職者の中には、能力は高くても知らないがために挑戦やより良い進路選択が出来ない、または、していない方がたくさんいると思っています。

このコミュニティーの分断が解消されることにより、学歴の関係ないコミュニティーが増え、自分とは違う価値観に触れる機会を創り出し、自分のキャリアを自分の意思で形成していける若者が増えると思います。

古屋
分断の解消は、18歳での進路選択を大きく変える可能性があります。特に高卒で就職して大卒や大学院卒と同じ仕事をしている人が出てきています。すると、大学へ行く意味ってなに?という話になります。

2つのコミュニティーが交わり、18歳で就職という選択した人がロールモデルになれば、間違いなく日本の若者のキャリアは多彩になると思います。

小松
凄い話になりますね。この問題が一つ解決するだけで、非大卒人材の活躍、「就職のための大学進学ではない勉学のための大学」へと大学の再定義ができそうです。大学進学には奨学金問題もありますからね。

奥間
そうですね。たしかに勉学のための大学進学をしている人はかなり少ないように感じます。 勉学のため大学進学した人、進学せずにいち早く社会へ出た人の両者ともに多様なキャリア選択の可能性があるべきだと思います。

小松
と、話が広がってまいりましたので、この話はここまでにしましょうか(笑)。 次回は、分断により、高卒で就職した人にしか分からない、「高卒の就職プロセスについて」です!お楽しみに。

 

「変わる?学校から仕事への第一歩」連載シリーズ

第1回 はじめに
第2回 大卒人材と非大卒人材の分断 前編
    大卒人材と非大卒人材の分断 後編
第3回 高校生の就職制度
第4回 高卒の就職率
第5回 「七・五・三」現象
第6回 離職した若者はどこへ行くのか
第7回 現在のキャリア教育
第8回 ハローワークの役割
第9回 地域格差
第10回 就職先企業の規模
第11回 初任給の格差
第12回 スクール・トゥ・ワーク

変わる?学校から仕事への第一歩 (第2回 大卒人材と非大卒人材の分断 前編)

一般社団法人スクール・トゥ・ワークの設立を記念して、当団体の活動の目的と背景を知ってもらうために、当団体の代表理事の古屋さん、監事の小松さんと事務局スタッフで非大卒人材の奥間さんと、座談会形式で、「変わる?学校から仕事への第一歩」の連載をお送りしています。

前回 変わる?学校から仕事への第一歩(第1回 はじめに) 

小松
第2回ですが、大卒人材と非大卒人材の分断がテーマです。

第1回で古屋さんからあったように、スクール・トゥ・ワークは、若者と若者の対話型授業を通じた非大卒人材を中心とした若い方々のキャリア観の醸成を目指しています。

なぜ私たちが非大卒人材にスポットを当てるのかという理由がこの分断にあるように思います。今回は、まずは古屋さんから、統計データと専門家の見地からご説明いただいて、次に実感や実態など感覚的な話を三人でしましょう。

非大卒人材の問題の一つ、高校生は就職活動において「子ども」か

古屋
最近は大学進学率がどんどん上昇しており、少子化といわれますが、実は大学卒業者数は増加し続けています。現在、毎年55万人程度が大学卒業者数ですが、これは2024年頃まで増え続けると考えられています。

しかし一方で、若手のおおよそ半分は大学卒や大学院卒ではない”非大卒人材”です。20代後半で言えば51%は非大卒であり、高卒が25%を占めています。最近は高等教育無償化が議論になっており、改憲の項目にも含まれるほどの社会的関心を集めています。

それと比べて、この「25%」への関心はその数字の大きさと比べて小さすぎるのではないかと思っていますね。

小松
小説や映画などで就職活動をテーマにした作品は多数あるように思いますが、非大卒人材の就職活動をテーマにした作品はないように思います。なぜこの「25%」が専門家の間ですらあまり注目されていないのでしょうか?歴史的な背景などあるのでしょうか?

古屋
そうですね。「何者」という小説がありますが、その小説では就職活動に直面して悩み、友人たち大人たちと関わりながら自分が”何者”なのか模索する大学生の姿が描かれています。

日本において就職活動は、それまで全く仕事について考えることのなかった若者が自分の職業的アイデンティティを考えるための大きな機会になっているのは間違いありません。

しかし、例えば高卒就職者においては、その機会が著しく限定されている状態にあります。高度経済成長期以前から続いている、現行の高校生就職のシステム(一人一社制、指定校制など)では、その選択の限定性から大学生の就活の重要な機能であるアイデンティティ確立は難しく、職業観やキャリア観が十分に養われない可能性がありますね。

小松
今の時代に高校生就職のシステムの一人一社制は信じられないですね。大卒ならば民間の人材会社のシステムなどを通じて50社、100社と就職試験の面接をする人がいますよ。なぜこのような制度が過去から維持されているのでしょうか?

古屋
やはり、高校生は「子ども」ということなのだと思います。18歳は未成年ですからね。成人である大学生と異なり、情報をしっかりと取捨選択できない「子ども」であるということですね。

大原則としては、企業の採用活動は自由のはずです。しかし「子ども」が対象のために、厚生労働省や文部科学省が作った求人票以外のフォーマットはNGであるなど、厳しい規制が敷かれています。

しかし、成人年齢も民法改正で18歳に引き下げられます。また、昨今の高校生と話をするとプレゼンがとてもうまかったり、大人顔負けの子もいますよね。今まさに、これまでのやり方を考え直す時なのではないでしょうか。

小松
大卒人材と非大卒人材の分断は、成年・未成年問題も大きそうですね。未成年の保護という大義名分のもとに、職業選択の自由が制限を受けていて、それが時代と乖離してきたというところでしょうか。

大卒と非大卒の特徴と分断

小松
続いて、大卒及び大学院卒人材と非大卒人材の分断の実感や実態について、お伺いしたいと思います。 奥間さんいかがでしょうか?

奥間
特に分断が感じられるのが学歴ごとに形成されているコミュニティーですね。 僕自身、東京へ出てくるまでは、自分の周りには大卒や大学院卒の人はいませんでした。

当時はそのことを何とも思ってはいませんでしたが、東京に出てきて、今の職に就いてからは、逆に非大卒の人はほとんどいないため疑問に思ったことがありました。

小松
そういった意味では、奥間さんは大卒人材と非大卒人材のコミュニティーを双方見たことがある人材なのだと思いますが、それぞれのコミュニティーの特徴はありますか?

奥間
そうですね。仕事に対する考え方は特徴的だと思います。非大卒の友人・知人と話をしていると、「仕事=労働」と、割り切って生きるためにやっている、という考えをしているように感じます。

一方で、大卒の人たちと話をしていると、仕事は自分のやりたいことや目標に対しての手段と考えている人が多いですね。もちろん、全員がそうではありませんが。やはり大卒の方のほうがキャリア教育などをしっかり受けてきたからかな、と思ったりします。

古屋
様々な違いがありますが、一番大きいのは、就職にあたっての情報量。これには格段の差がありますね。大卒がビジネスとして全国ひとつのマーケットになっていて、検索すれば誰でもどんな企業にでも簡単にアクセスできエントリーすることが可能です。

他方、高卒就職者はファイル一冊に入った紙の求人票を見て会社を選びます。このように、就職という局面でも情報量の格差は大きいですが、そもそもキャリアづくりに関する情報全体に差があるとも言えますね。

 

「変わる?学校から仕事への第一歩」連載シリーズ

第1回 はじめに
第2回 大卒人材と非大卒人材の分断 前編
    大卒人材と非大卒人材の分断 後編
第3回 高校生の就職制度
第4回 高卒の就職率
第5回 「七・五・三」現象
第6回 離職した若者はどこへ行くのか
第7回 現在のキャリア教育
第8回 ハローワークの役割
第9回 地域格差
第10回 就職先企業の規模
第11回 初任給の格差
第12回 スクール・トゥ・ワーク

変わる?学校から仕事への第一歩(第1回 はじめに)

一般社団法人スクール・トゥ・ワークの設立を記念して、当団体の活動の目的と背景を知ってもらうために、当団体の代表理事の古屋さんと、事務局スタッフで今、一部のネットで話題の非大卒人材の奥間さんと、座談会形式で、今後「変わる?学校から仕事への第一歩」の連載をお送りしたいと思います。

小松
皆さん、よろしくお願いします。ファシリテーターは、スクール・トゥ・ワーク監事の小松裕介が務めさせていただきます。私は、元々、伊豆シャボテン公園グループの企業再生や上場会社の代表取締役社長をしていましたが、現在は、株式会社スーツで経営コンサルティングをしています。

年齢は36歳のアラフォーで、出身は横浜です。地方での勤務経験は静岡県伊東市に企業再生のため5年ほど住んでおりました。それでは、古屋さん、奥間さんも自己紹介をお願いします。

古屋
古屋星斗です。当団体の代表理事を務めております。経済産業省に入省し産業人材の育成や成長戦略づくりに取り組みました。現在は職を転じて、若者の多様でおもしろいキャリアづくりを実現するために研究や実践を行っています。

世界で一番若者の少ない21世紀の日本を、世界で一番若者のおもしろい国にするのが夢です。ちなみに、出身地は、夏は非常に暑いことで有名な、岐阜県多治見市です。冬も寒く、帰省すると毎年悶絶して帰ってきます。 奥間さんどうぞ!

奥間
当団体の事務局スタッフを務めている奥間蓮です。沖縄生まれの22歳で、非大卒人材の一人です!高校を卒業してから2年前まで大阪で鳶職をしていましたが、現在は株式会社スーツで2年目のアソシエイトとして仕事と勉強に明け暮れています(笑)。

よろしくお願いします。

異彩のキャリア!

小松
少しだけ奥間さんの上司として補足説明をさせてください。 スーツ社ですが、経営コンサルティング企業と表現しましたが、具体的には、時価総額100億円以下の中堅・中小企業やベンチャー企業などの経営支援をしています。

当社は、「経営を科学すること」が仕事ですので、鳶職でも、高学歴でも、科学の結果は変わらないという考えのもと奥間さんを採用しました。

奥間さんが就職して1年少しが経ちましたが、鳶職から経営コンサルタントにジョブチェンジをしまして、今は経営コンサルタントとしてクライアント企業の上場準備などの業務をしています。今の日本には、なかなかないキャリアかもしれません(笑)。

古屋
仕事柄いろいろな若者と話しますが、鳶職から上場準備という話はさすがに聞いたことがないですね。日本をはじめとして、最終学歴が就く仕事を縛ってしまっているのですが、実は若い方のたくさんの可能性を殺しているのではないか、というのが私の大きな問題意識です。奥間さん、実際に経営コンサルタントの仕事をしてみてどうですか?

奥間
主に身体を使う仕事から頭を使う仕事へと大きくジョブチェンジをしてみて、最初の頃は何ひとつ言葉の意味が分からずで、外国へ来た気分でした(笑)。

しかし、分からないままで終わらす訳にもいかないので、ひとつひとつ必死に勉強していくことで1年前まで外国語のような専門用語が少しずつ理解できるようになり、自分のスキルへ変わっているなと実感しています。

小松
・・・と、話が少し広がってしまいましたが、このような三人でブログの連載を進めてまいりますので、楽しんで読んでいってもらえればと思います!

スクール・トゥ・ワークについて

小松
さて、最初に、古屋さんに、一般社団法人スクール・トゥ・ワークについて、組織の概要と活動内容についてお聞きしましょうか。

古屋
そうですね。私たちスクール・トゥ・ワークは、若者と若者の対話型授業を通じた非大卒人材を中心とした若い方々のキャリア観の醸成によって、新しい時代の中で、「学校から仕事へ」のステップがどうなっていくのか、考えていきたいと思っています。

もちろん、この疑問に正解はありません。しかし、学校での授業や企業との対話を通じて、この疑問に対して最も具体的な選択肢を指し示せる集団でありたいと考えています。

小松
AIの普及であったり、日本は未曾有の人口減少であったり、本当に不確実性の高い時代だと思います。スクール・トゥ・ワークのキャリア教育事業において「若者が若者を教える」とした理由と非大卒人材について追加で教えてもらえませんか?

古屋
教育という場のあり方は、一斉教授方式という中世ヨーロッパのやり方からほとんど変わっていません。そんな中で、今後の世の中はモノローグからダイアログの時代だと言われています。

イメージとしては偉い先生の独白(モノローグ)から、一緒に話して考えを深める対話(ダイアログ)へ、ですね。若者が若者を教える、としたのもその方がキャリアについて親近感もわき、対話が進むからです。

そして、自分の進路について対話をしながら考える機会が圧倒的に少ないのが、高卒就職者です。日本社会は、彼らを最大限活躍させられていないと思います。人手不足の中で、今こそ彼らは「金の卵」なんです。

小松
学校の先生一人に対して、生徒が複数というのは中世からのやり方なんですね。知りませんでした。確かに、自分の経験ですが、数学のような明確な回答がある問題はさておき、答えのない質問については、年齢が近いほうが納得度が高いように思います。

年齢の離れた先生が言うとやけに説教臭く聞こえたりして。(笑)非大卒人材は高卒就職者以外にはどのような人がいるのでしょうか?

古屋
大卒・大学院卒が目立ちますが、世代あたりの最終学歴でいえば半分くらいは大卒・院卒ではありません。高校卒以外ですと、なかでも一番多いのが、専門学校卒の方々。そして最近は減少していますが短大卒、年およそ1万人しかいないエリート集団である高専卒、少数ですが中学卒と、非常に多様な世界が広がっていますね。

小松
大卒・大学院卒が半分ということは、非大卒人材も半分ですね。スクール・トゥ・ワークでは、この非大卒人材を中心とした若者のキャリア教育をやるわけですね。

次回から、具体的に、統計データのグラフなどを基にディスカッションをして、スクール・トゥ・ワークの活動の目的と背景を明らかにしたいと思います。

 

「変わる?学校から仕事への第一歩」連載シリーズ

第1回 はじめに
第2回 大卒人材と非大卒人材の分断 前編
    大卒人材と非大卒人材の分断 後編
第3回 高校生の就職制度
第4回 高卒の就職率
第5回 「七・五・三」現象
第6回 離職した若者はどこへ行くのか
第7回 現在のキャリア教育
第8回 ハローワークの役割
第9回 地域格差
第10回 就職先企業の規模
第11回 初任給の格差
第12回 スクール・トゥ・ワーク

可能性は無限大。現役パラレルキャリアが語る現代キャリアの歩み方

 

高度経済成長期を支えた雇用制度「終身雇用」は今まさに終わりを迎えようとしている。

海外に目を向けると、1人の人財が複数のプロジェクトを掛け持つパラレルキャリアが一般的になりつつあり、その流れがまさに日本でも巻き起ころうとしているのだ。こうした背景の中、国内でいち早くパラレルキャリアを歩んだ若者が弊団体パートナー ヘッドクォーターの築嶋だ。

大学時代より個人事業主、団体設立を進め、卒業と共にAcroforce株式会社を設立。現在では、並行して株式会社Liberal Worksと株式会社Clamの設立、並びに事業運営を行う。なぜこうしたキャリアの歩み方が可能になったのか、今回は築嶋氏に現代のキャリアの歩み方を聞いていく。

築島宏宜_

キャリア=人生

———築嶋さんにとってキャリアとはなんですか?

「生きること」とそれに伴う「連続した選択」だと思っています。現在キャリアと言うと、ジョブと勘違いする方が多くいらっしゃると思いますが、ジョブとキャリアは明確に違います。ジョブが単なる働き口を意味するのに対し、キャリアは、働くことを通じた個人の連続した経験を意味しているんです。もともと、キャリアの語源はラテン語にあり、「荷車」という意味です。中世ヨーロッパにおいては、少し意味が変容し、車輪の跡である「わだち」と言う意味に。現在ではより広義に「行路、足跡」ひいては、個人の経歴を意味するようになったと言われています。選択があれば、行動があり、行動があれば、当然、経験に繋がります。行動とそれに伴った経験を通して人生が作られるので、私はキャリアを「生きること=人生」と考えているのです。

キャリア≒仕事のわけとは?

とはいっても、どうしても「仕事」には触れざるを得ません。

理由は2点です。1つめは占有率の問題。1日8時間勤務を基本とすると1年で1784時間になり、35年を労働期間とすると62440時間も働くことに使います。通勤を含めると人生の2/5は仕事です。時間だけではなく、空間も、気持ちも、人間関係も仕事によって左右します。つまり仕事は人生の占有者と考えていいのです。だから仕事=occupation (占有)とも言うのでしょうね。2つ目はファーストキャリアの人生への影響度の大きさです。ファーストキャリアとは初めて選ぶ職業を意味します。そしてこのファーストキャリアこそ、その後の人生に深く影響を及ぼす要因になります。だから、キャリア≒仕事だと思っています。

キャリアを考え抜ける人はあまりに少ない

ーーー築島さんがキャリアを深く考え始めたきっかけを教えて下さい。

きっかけは自身が行った就職活動でした。私は2017年卒だったのですが、周りの友達はあまりに自分の人生に向き合おうとしなかったですね。

「まだいいじゃん。」

「3月から頑張ればいけるって。」

こんなフレーズにあふれていました。「就職はゴールじゃない」のに、とりあえず仕事に就ければいいという人があまりに多かったです。先輩の中にも、そんな決め方ですぐ辞める人が結構いました。3年以内の離職率30%、現在の仕事に満足してる人7%、こうしたデータが妙に身近に感じました。こうした事を踏まえて設立したAcroforce株式会社では、新卒採用の支援を中心に業務を行っております。触れてきた学生の総数は10000人を下らないのですが、やはり真剣に考えられる人は大卒でも10~20%がいいところだと思います。意味も分からず、「大手」「安定」「福利厚生」などのワードを並べる学生を見ると、敷かれたレールに乗ってるだけなんだなぁ。と嫌でも感じます。有効求人倍率が上がれば、その分売り手市場になり、この傾向は顕著になります。一方、地方に目を向けると、未だに情報の非対称性が残り、十分な機会を得ることができない方も大勢です。

民間ベースのサービスには限界がある

ーーー築島さんがスクールトゥワークに参画したきっかけを教えて下さい。

教育という分野において、民間サービスだけで突き進むことに限界を感じたからです。一般社団法人という器を使えば、利益体質ではない学校、さらには国とも関わりやすくなります。こうする事で産学官の連携が可能になり、より多くの学生にキャリアを考えるきっかけを届けられるようになると思ったからです。

可能性は無限大。歩みたい方を歩め。

ーーー最後に学生に向けたメッセージをどうぞ

好きに歩んだらいいと思います。親が言ったから。先生が言ったから。みんながこっちを選ぶから。そんなのどうでもいいんです。大切なのは、あなたが何をしたいか。世界的に見ても、大手が安定なんて時代はほぼ、終わってますし、そもそも安定が何を意味するのか、個人の主観で変わります。ネットとクラウドが誕生したおかげで、誰でもどこでも好きに働ける土壌が育ちました。なんでもできる世の中だから、自分のしたい事を選択すればいいんです。

ーーー

何を読もうと、聞かされようと、自分自身の理性が同意した事以外何も信じるな。

ガウタマ・シッダールタ

ーーー

全部自分で選択してください。その決定には不安がつきまといます。自由である事に不安である事は表裏一体だからです。それでも流される事なく、悩んで悩んで悩んで、悩み抜いて自分のキャリアを選択していってほしいです。